公園でデート中の白鳥と早紀。 白鳥は新作の絵本の構想を聞いて欲しいという。 早紀は、内心では白鳥が作り出す優しさにあふれた物語が聞きたくて仕方が無かった。 けれども、白鳥からすれば自分は「絵本が好き」なんてキャラじゃないだろうから、ついつい 「そ、そこまで頼むんなら仕方ねーから、ちょっと付き合ってやる」なんて、 心とは裏腹な言葉が口を飛び出す。少し自己嫌悪する早紀。 だけれども、白鳥はその優しい口調を絶やすことなく、「本当?ありがとう早紀ちゃん!」なんて 嬉しそうに返答してくれる。「ま、まあな」なんて素っ気無い返事で、少し赤らんだ頬を隠す。 話をするのにちょうど良さそうな場所を見つけると、早紀は小さめの階段に腰を下ろした。 わくわくを隠し通せない早紀に対して、白鳥が新作の構想を語り始める。 時々入る「ここはやめた方が良いかな?」や「ここは直した方が良いかな?」なんて白鳥の問いに 「べ、別にいいんじゃねーの?」なんて素っ気無い返事しか返せない早紀。 この状況が嬉しくてたまらない、目の前の語り部と、その物語が愛しくてたまらない。 文句なんて、思いつくことすら出来なかった。 説明が始まって約30分。どうやら、今回の物語は白鳥にとってもかなりの自信作であるらしく、 その一言一言に強い熱気がこもっていた。そして、それを見つめる早紀の瞳も。 いつまでも、この瞬間が続けば良いのに。 そう、心から思った、その時だった。 下腹部に、違和感がある。 (あ、あれ…え、ちょ、ちょっと…あ、あたし、最後にトイレ行ったのって…いつ、だっけ・・・!) それは、感知されると同時に、そのゾワゾワとした感覚を背筋へと広げていった。 (ぴ、ぴぇ…な、なんでこんな、こんな時、にぃ…っ) 白鳥の声が恐ろしいほど遠く感じられる。何を言っているのかが、もう認識できない。 気にしないようにすればするほど、ゾワゾワが早紀の中で幅を利かせていく。 (あ、あたしの身体なんだからっ、言うことぐらい聞けーっ!) そんな無茶苦茶、尿意と言う名の魔物に通用するはずも無かった。 さらに30分が経過した。 早紀は、普段は別に、特別トイレが近いというわけではなかった。 実際、もしもこのような状況でなければ、この程度の尿意など意識せずに過ごせただろう。 だが、目の前には今だ熱意を灯したままの白鳥の姿がある。 白鳥の邪魔になっちゃいけない、我慢しなくちゃ我慢しなくちゃ、そんな思いが 早紀により強く尿意を意識させてしまう。 (ぴぃ…え…ぴぇ、ぴ、ぴぇえ…っ) もう駄目だ。我慢できない。 素直に「ちょっとトイレ行ってくる」と言えばいい、それはわかっている。 (だけど…っ!) そんなことをしたら彼はどう思うだろうか。 せっかく、自分のために一生懸命になってくれてるのに、あたしがそんな態度を取ったら… 白鳥はきっと、あたしのことなんか…! 尿意は、人の冷静さを殺す。 早紀とて冷静であれば、その程度のことを白鳥が気にするなどとは思わないだろう。 彼女は気付いていないだろうが、白鳥の話もクライマックスを迎えていた。 その、感動の連続な展開と、顔を真っ赤にしてその瞳にうっすらと涙を浮かべている 美少女の姿は、傍から見れば実にフィットしたものであった。 もっとも、当の本人はにっちもさっちもいかない状況なのだが。 やがて、限界が訪れる。 「ご、ごめんっ!白鳥っっ!」 「さ、早紀ちゃんっ?」 もう駄目だ。こうなったらもう、先程の様な奇妙な論理すら働かない。 くわっと目を見開き、立ち上がり、脱兎のごとく部屋を… 抜け出して、走り抜けて…いるのは、早紀の意識だけだった。 身体が行ってくれたのは、立ち上がろうとする所迄、だった。 熱い。 それしかわからなかった。 白鳥と早紀が座り込んでいた階段が液体で染まっていく。 もう、なにがなんだかわからない。 早紀は力なく階段の上に座り込むと、まるで子供のようにしゃくりあげ、泣き出した。 「し、しやと…しやとり…ぃっく…」 「さ、早紀・・・ちゃっ!?」 白鳥は、早紀の様子が人目につかないように、向き合い、その両肩を抱いてやる。 白鳥の胸の中で、早紀は普段からは考えられないような弱々しい表情で泣きじゃくりながら、 「ごめん、ごめん」という言葉を繰り返していた。 白鳥にしてもどうすればいいのかがわからなかったが、とりあえず人目についてはいけないので、 早紀をあまり人の寄り付かない、公園の休憩できるベンチの方へと運んであげ・・・ 以上。二次板の話題に乗ろうと思って妄想したら、変に長くなったのでこっちに引き取ってください。 この後も妄想したけど、絵と何の関係もなくなったので削除。