----------  Simple ---------- 「はぁぁぁ〜〜〜〜……」 梅雨を開け、晴れ渡った空の元。 鳴滝荘の縁側に腰掛け彼女───赤坂早紀は悩んでいた。 悩みの原因は彼女とその恋人、白鳥隆士の事である。 白鳥とつきあい始めて半年以上が過ぎ、二人の仲も随分進展した…と思っていた。 しかし、実際のところはようやくキス1回を済ませたきり。 お世辞にも進展が早いとは言えない状況だった。 (あらあら、早紀さん、まだお悩みですか?) 「ん…? なんだ、千百合か」 心の中からもうひとりの自分───緑川千百合がささやきかけてきた。 (まったく、あなたは奥手でいけませんねぇ) 「んなこたぁ、わかってるって…」 (そんなに考え込んで、あなたらしくもないですよ?) 「わかってるっつってんだろ…」 早紀は千百合の言葉を遮るようにぼやいた。 あれから自分の中に別の自分がいると理解し、最近では各々コミュニケーションが取れるようになっていた。 まだ、相性がいい相手以外とはなかなか話し合うことは出来ないが、 その相性のいい相手がよりによって千百合だったことが早紀の悩みを大きくしていた。 (愛があるならそれは当然のことですよ?) 「わかってるっての…」 早紀の悩み…それは白鳥との関係をなかなか進展させられないことだった。 この体の主…蒼葉梢を筆頭に、積極的な千百合、引っ込み思案な棗でさえ白鳥と一線を越えていた。 しかし、自分は未だにその一線を越えられないでいる。 初めは「そういうこと」は他の連中に任せればいい、と思っていたがやはり早紀とてひとりの女の子。 次第にその想いは強まりはじめていたのだった。 「はぁ〜…」 (怖いのは最初だけですよ? あとは目眩くラヴライフが待っているんですから) 「べ、別に怖がってなんていねーよ!」 (そうですか? まぁ…覚悟の問題なのでしょうけど) 実際のところは怖いと思っているのかもしれない。 しかし、白鳥とだったら一線を越えてもいいと思っている自分もいる。 躊躇しているのは一線を越えることでふたりは変わってしまうんじゃないか…そんな思いがあったからだ。 要するに千百合の言うように『覚悟の問題』なわけだが。 「どーすっかなぁ…」 (私も最初は悩みましたけど…済んでしまえば意外とあっけないものですよ?) 「うーん…」 (自分の気持ちに素直になるのも悪くはないことです) 「おめーみてーに割り切れれば楽なんだろうけどな…」 正直なところ、千百合の自分に正直なところは羨ましかった。 ちょっと行き過ぎなきらいはあるが、それでもその積極性と行動力は早紀に足りないものだ。 (愛する人のために変わる努力をする、それはとても大事なことです) 「ああ…」 (なんだったら私がリードして…) 「いい! いいっての! アタシはアタシのやり方でやるから!」 (そうですか? 残念ですねえ…) そうはいってみてもやはり踏ん切りがつくわけでもない。 早紀はまた一つ大きなため息をつくのだった。 「愛があるなら、かぁ…」 そう呟き唇に指で触れた。 一度きりのことだったが、白鳥との口づけは今でもはっきりと覚えている。 「白鳥……」 その温もりを、その愛を、もっともっと欲しい。 いつしかその想いは抑えきれるものではなくなっていた。 「はぁぁぁ〜〜〜〜…………」 「…早紀ちゃん?」 いつからそこにいたのだろう。 呼ばれて振り返るとそこには白鳥が立っていた。 「ふぇ!? し、白鳥、いつからそこに!?」 「えっ? い、いや、いま通りかかったところだけど…」 「そ、そうか…。 ビックリしたぁ……」 突然現れた思い人に早紀はすっかりうろたえていた。 「それより、早紀ちゃんどうしたの? なんか悩んでるみたいだったけど」 「なっ!? ななななんでもねえよっ!!」 「でもなんかため息ついてたし…」 「いいいい、いいんだ! 気にすんなっ気にしないでくれっ!!!」 「でも…」 「いいからっ!!」 必死で取り繕う早紀。 まるでウブな少女のように慌てふためき、自分を見失う。 (あああ、なにやってんだ、アタシは! こんな調子じゃダメだろうがっ!) 「はぁ…」 ふと気付く、そんな自分の不甲斐なさ。 なんだか急に自分情けなくなってガックリと肩の力が抜ける。 「あの…早紀ちゃん?」 「ん…あぁ」 「ホント…大丈夫? 悩みがあるなら相談に乗るけど…?」 「あぁ…」 すっかり悄気て投げやりな返事を返す早紀。 そんな早紀を白鳥は本当に心配するかのような眼差しで語りかけてくる。 (なにやってんだ、アタシは…) 「…悩み、か……」 「…早紀ちゃん?」 「なぁ、白鳥…」 「な、なに…?」 「今日…………暇、か…………?」 「う〜ん、いい風だぜ」 「そうだね。 でも折角ならもうちょっと早く出ればよかったね」 「ま〜な〜。 思い立ったのが遅かったからしょうがねーか」 電車に揺られること1時間あまり。 早紀と白鳥は少し遠くへ足を伸ばし、海の見える公園に来ていた。 「こんなところまで来たの、久しぶりだよ」 「あぁ、そーだな」 ふたりは海辺の手すりに腰掛け、港に出入りする船を眺めていた。 初夏の潮風が頬を撫で、髪を揺らす。 「たまには家を離れて外を見るのも悪くないもんだなー」 「うん、そうだね。 それよりこれからどうするの?」 「ん〜、特に考えてねーんだ」 「そ、そうなの?」 「単に外に出たかっただけってのもあるからな」 そう言って水面を行くカモメたちを目で追いかける。 別の意味も含んでいたが白鳥は当然気付かなかった。 「外の空気が吸えりゃどこだってよかったんだ、ホントは」 「そっか…。 じゃ、せっかくだしこの辺りでも歩こうか」 「ああ、特に行くところもねーしな」 その後───。 アウトレットモールでウィンドウショッピングしたり。 異国の様々な輸入雑貨を見て驚いたり。 展望台に上って景色を楽しんだり───。 久しぶりに恋人としての時間を満喫した。 でも───。 (…やっぱダメか……) 白鳥と一緒に過ごす時間は確かに楽しかった。 笑ったり驚いたり喜んだり。 いろんなことを体験出来たし、ふたりだけの思い出も増えた。 しかし、どうしても心が満たされない───そんな思いは消えなかった。 いや、むしろどんどんその気持ちが強くなっている感じさえした。 言い様のない気持ちが彼女の心をかき乱す。 そんな自分を隠すように早紀ははしゃぐフリをしていた。 「なぁ、白鳥。 次はあれ乗ろうぜ」 ───。 ふたりを乗せたゴンドラがゆっくりと上がっていく。 海辺の観覧車から見る沈み行く夕日。 夜のとばりがおり始めた街をぼんやりとふたりで眺めていた。 「……早紀ちゃん?」 「…ん?」 ゴンドラの高さが中腹までさしかかった頃、それまで何も言わずに黙っていた白鳥は口を開いた。 「どうしたの? やっぱり今日の早紀ちゃん、なんか変だよ?」 「…そうか?」 「うん…さっきから心ここにあらずって感じで…」 「ん…そう、か…。 そう、かもな…」 「一体どうしちゃったの? なんか悩みがあるなら相談に乗るよ?」 気付いていても何も言わずにつき合ってくれていた。 そんな白鳥の優しさが、何故か胸にチクリと刺さる。 「どうか…しちゃったのかもな…」 「早紀ちゃん…?」 「なぁ、白鳥……」 「え…?」 「…なんでもない」 「………」 そうしてまた訪れる沈黙。 遠くに見る沈み行く太陽を自分の心境に重ねてみたり。 センチになる自分にまたため息が漏れるのだった。 観覧車を降りたふたりはどこへ行くわけでもなく海辺の遊歩道を歩いていた。 すっかり日は沈み、辺りは夜の空気が満ちはじめていた。 会話はなく、ただ時が過ぎる。 「…………」 「…ねぇ、早紀ちゃん。 そろそろ帰ろうか?」 先に口を開いたのは白鳥だった。 「……」 「早紀ちゃん…?」 「…もうちょっとだけ」 「でもそろそろ帰らないと、みんな心配しちゃうよ…?」 「………」 早紀は無言で歩み寄り、白鳥の手を取った。 「…頼む」 「………」 結局、そのままふたりで夕食を摂ることにした。 外出してふたりで夕食を食べるなんて事は初めてだ。 しかし、それに特別な感情がわくこともない。 ふたりの間にはこれといった会話もない。 料理の味なんかわからなかった。 食事を済ませたふたりはまた夜の街を彷徨っていた。 微妙な空気、微妙な距離。 それが今のふたりを表していた。 「早紀ちゃん、そろそろ帰らないと…」 「………」 時刻は夜10時を過ぎ、そろそろ帰りの電車が厳しくなる時刻だった。 それでも早紀からは家路に着こうという意志は感じられない。 「早紀ちゃんってば」 「…珠実には、今日は帰らないって、言ってある」 「……え?」 長い沈黙を破って早紀はぽつっと呟く。 突然のことに白鳥は言葉の意味がわからないでいた。 「ど、どうしたの? 早紀ちゃん…」 「今日は、帰らない」 2度目の宣言。 俯きっぱなしで表情は見えないが早紀の口からは確かにそう聞こえた。 いくら鈍感な白鳥でも早紀の態度からその言葉の意味を理解することは出来た。 「早紀…ちゃん…」 「頼む…」 そう呟くと早紀は俯いたまま戸惑う白鳥の手を取り、ネオンの灯る建物へと足を向けた。 ザー───。 「…………」 ホテルにチェックインした後、早紀はバスルームに籠もっていた。 考えることが多すぎて何も考えられないまま時間だけが過ぎる。 (その様子だと…まだ決心が付かないようですね) 「……」 心ここにあらずのまま立ちつくしていると千百合が語りかけてきた。 (まだ、怖いんですね) 「……」 (あなたの迷いもわかります。 ただこれだけは言わせてください) 「……」 何も言わぬ早紀に千百合は優しく語り続けた。 (隆ちゃんを、信じてください) 「…信じる…?」 (そう、あの人はあなたの愛する人、白鳥隆士さんなのですよ?) 「アタシの…」 (だから大丈夫。 隆ちゃんに委ねちゃいましょう) 「………」 顔は見えないがもうひとりの自分、緑川千百合は自分に微笑みかけてくれているような気がした。 (じゃ、私は引っ込みます。 頑張ってね♪) 「白鳥を…信じる…」 早紀は千百合の言葉を反芻して、その意味をかみしめた。 「白鳥………そっか、そうだよな」 (何迷ってたんだ、アタシは…) 意を決したようにシャワーを止め、バスルームを後にした。 その瞳にはもう迷いの色はなかった。 (早紀ちゃん、頑張って!) (ファイトっ…かも) (じーーーーーーーっ) 「早紀ちゃん…」 先にシャワーを浴びて待っていた白鳥が早紀の姿を確認して立ち上がった。 「待たせたな、白鳥」 「あの、早紀ちゃん…無理しないでもいいんだよ?」 白鳥はあくまで早紀を気遣っていた。 今ならわかる。 そんな白鳥だからこそ、早紀は迷っていたのだ。 その優しさが怖かったから。 自分自身の生き方を否定してしまいそうだから。 「いや、もういいんだ」 「もういいって…」 言葉の意味がわからないのか、白鳥は戸惑っていた。 「アタシの気持ちの問題だからさ」 「早紀ちゃん…?」 「バカだよな、アタシ。 ずっと意地張っちゃってさ」 そう言って白鳥に身を預けた。 「あっ…」 「こうやって、し……隆士に甘えるのが怖かったんだ…」 「早紀ちゃん…」 早紀は隆士の温もりを確かめるようにギュッと抱きしめる。 「いつもつっぱって男勝りなフリして…気がついたら誰かに支えてもらうのが怖くなってたんだ」 「……」 「でも…もういいよな? 隆士…」 「早紀、ちゃん……」 「アタシは隆士のこと…好き…だから……」 そう言って早紀は隆士の胸に顔を埋める。 隆士も返事の代わりに強く抱きしめ返した。 「ん……」 お互いの意志を確かめ合うような長い口づけ。 ふたりはお互いの温もりを感じあうかのように強く抱き合った。 「ん………ふぅ……」 「………!?」 唇を離し、目を開いたとき早紀の瞳には涙が溢れていた。 「さ、早紀ちゃん!?」 「ん、あぁ…」 予想外のことに隆士は慌てふためいた。 「ど、どうしたの!? やっぱり嫌だった!?」 「いや、そうじゃないんだ…」 「えっ……」 「なんかさ…張りつめてたものが切れたって言うか…」 「……」 「悩んでたのがバカらしくなったっつーか…」 隆士の腕に抱かれたまま、早紀はぽつぽつと呟く。 「…なんだろーな。 よくわかんねーや……」 「早紀ちゃん…」 「でも、これだけは言える。 …アタシは今シアワセだ」 零れる涙とは裏腹に早紀の表情は晴れ晴れとしていた。 「……」 「だけど…もっと……欲しいな……」 そう言って隆士の顔をまっすぐに見据え目を閉じる。 「うん……」 隆士は彼女の意志に答えるかのように頷くと、再び唇を重ねた。 「ん……んんっ……」 口づけを繰り返すうちに早紀の吐息が徐々に熱を帯びてくる。 隆士は抱きしめる腕を緩めると早紀の髪を、体をゆっくりと愛撫し始めた。 「早紀ちゃん…」 「ぅん…隆士……」 隆士自身は梢を含めた他人格の彼女たちとは何度か経験していた。 しかし、早紀にとっては初めての経験。 隆士はゆっくり、優しく早紀の緊張をほぐしていった。 「ちぇ…おめー、なんか手慣れた感じで悔しいぞ」 「そ、そう?」 「そりゃ、アタシは初めてだけどさ…ぁん」 ガウンの上から隆士の手が早紀の胸を優しく撫でる。 「ちょ、ちょっとまてっ」 「あ、嫌だった?」 「そ、そうじゃなくてまだ心の準備がっ…」 「あ、うん。 そっか…」 隆士はいったん手を離し、戸惑う早紀の体を強く抱きしめた。 「あっ……」 「大丈夫だから…」 「ちぇっ、ずるいヤツ…」 自分を包み込む隆士の暖かい温もり。 早紀の緊張はゆっくりと和らいでいった。 しばらく抱き合ったままだったがやがて早紀はゆっくりと離れた。 「もう平気だ」 「早紀ちゃん…」 「うん……」 早紀はまとっていたガウンをゆっくり脱いでいく。 初めて自らの意志で晒す自分の肌。 形のよいバスト、引き締まったウェスト、すらりと伸びた四肢。 その全てに隆士の瞳は釘付けになる。 早紀の体は緊張のためか紅潮していた。 「りゅ、隆士は他のヤツとしてるから、もう見慣れてるかもしれないけど…」 「………」 「アタシの体、どうだ…?」 「あ、うん…綺麗…だよ」 「そ、そうか…よかった…」 早紀は安心したのかどこか照れた笑みを見せる。 ふたりはどちらともなくまた抱き合う。 「なんか、悔しいな」 「えっ…?」 「他のヤツらはこんないい思いしてたんだなぁって…」 「早紀ちゃん…」 早紀は隆士の腕の中で安らぎを覚えながら目を閉じた。 「千百合のヤツなんか、いっつも自慢しててさ…正直、羨ましかった」 「……! 早紀ちゃん、もしかして…」 「あっ! 違うぞ、アタシはアタシの意志で決めたんだからな!」 「そっか…」 「アタシはただ…隆士にアタシのこともっと知って欲しかったんだ。 だから…」 そう言葉を句切るとふたりはまた唇を重ねた。 「なんか…恥ずかしいな」 「うん…でも、大丈夫」 早紀はベッドに仰向けに寝転がり、その上に隆士が覆い被さるよう格好でふたりは見つめ合った。 隆士は軽くキスした後、早紀の胸をゆっくりと揉み、もう片方の胸にも唇を這わせる。 「んっ…ちょっとくすぐったいな…んくっ」 最初はむずがっていた早紀もだんだんと熱い吐息を紡いでいく。 「な、んだこれ……こんな…気持ち、初めて………」 「早紀ちゃん……」 隆士にイジられる胸がどんどん熱を帯びていくのがわかる。 先っぽがジンジンと痛いくらい硬くなり、そこに隆士の唇が触れる。 「くふぅ……りゅ、りゅぅし…あ、んんっ……」 「早紀ちゃん、気持ちいい…?」 「わ、わかんね………っ…で、も…もっと」 「うん…」 隆士は早紀の胸を丹念に愛撫しながらも片手を胸から腹部へ、腹部から下腹部へと向かわせていた。 「っ…! あっ、ちょ、ちょっと…!」 「大丈夫…」 戸惑う早紀の制止を振り切って、隆士の指が下腹部の茂みを越えそこに到達した。 (人に与えられる快楽を知ったら、自分の考えがいかに小さなものか思い知らされましたよ) 脳裏にそんな千百合の言葉が思い浮かぶ。 隆士の指が湿り気を帯びたそこに触れたとき電撃が走ったように体が反応した。 「あ、ぅぅ!」 「早紀ちゃん…」 隆士が割れ目からゆっくり指を離すと透明な粘液が絡みついていた。 「んッ…ハァ…見るな、バカァ…」 「早紀ちゃん…初めてなのに感じちゃった?」 「…バカ」 早紀は恥ずかしさのためかそっぽを向く。 実際のところ、早紀の心はどうあれ肉体自体は性的快感に慣れていた。 なので隆士の愛撫で感じるのは当たり前なのである。 隆士は早紀がそっぽを向いている間に体の位置を変え、早紀の股間に潜り込んでいた。 「っ! ちょっ、まっ……!」 早紀は股間に感じる吐息で状況に気付いたが止める間もなく隆士の愛撫は再開された。 「あっぁああっ!!」 クレパスに沿って隆士の舌が這う。 それはゆっくりとしたものだったが不慣れな早紀にとっては刺激が強すぎた。 「あっ、あっ! ああっやっ!」 割れ目が舌によって開かれるたびにぴちゃぴちゃと水音を立て、全身がビクビクと反応する。 早紀は完全に未知の快感に翻弄されていた。 「や、ぁ…ハァ…ハァ、ハァ…あっあああああっ!!」 愛撫する隆士の指が谷間を突き抜け早紀の最深部に到達したとき、最初の絶頂が押し寄せた。 「ハァ…ハァハァ…」 「早紀ちゃん、大丈夫?」 「ッ…ハァ…大、丈夫?…じゃねーよ…ハァハァ…」 早紀の全身はぐったりと脱力し、肩で息をしていた。 「少し休憩しようか?」 「……いや…へいき……」 そう言ってのそりと起きあがる。 「さ、早紀ちゃん?」 「今度はアタシの番…」 はいずるように隆士に近寄りガウンを脱がしにかかる。 「えっ、あっちょっと!」 「おめーばっかり好きにはさせねーからな」 慌てふためく隆士を無視して、着ていたガウンをはぎ取った。 途端に彼の股間にそそり立つモノが現れる。 「……で、でけぇな」 「あ、あんまりまじまじ見ないでよ」 「なにいってんだ、さっきアタシの散々いじったろ」 「ええぇ!?」 隆士を問いつめる間に素早くそれを手に取った。 それは想像よりもずっと熱く、硬かった。 初めて間近で見、手にする男のモノに早紀は息を飲み込んだ。 「す、すげぇ……」 「さ、早紀ちゃんあんまり強く握らないで」 「ん? 強く握るとダメなのか?」 (そう言えばエロ千百が言ってたな) 早紀はたしかこう…と呟きながら隆士のモノをしごき始めた。 途端にビクンと隆士の体が反応する。 「か、感じてんのか? 隆士」 「早紀ちゃん、ちょっと、ダメだってば!」 よく見れば先端から液体が滴り、早紀の手を濡らしていた。 (ア、アタシの手で隆士が感じてるのか…?) ごくりと生唾を飲み込む。 まじまじとそれを見ていた早紀は意を決したように口を近づけた。 700 名前: Simple [sage] 投稿日: 2005/06/13(月) 00:31:43 ID:StCipK2e 「ッ! ちょ、ちょっと早紀ちゃん!?」 「お・か・え・し・だ」 早紀はぺろりと先端を舐め、ゆっくりと口に含んだ。 「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!!」 (すごく…熱い…) 隆士の体がひときわ大きく反応する。 早紀は千百合から聞いた知識を動員し、手と唇、舌を使って隆士に総攻撃を開始した。 「んっ、んむっ、むっ、んっ」 「早紀ちゃん…早紀ちゃん…!」 (隆士がこんなに感じてる…) 自分の愛撫にこんなに感じてくれている。 それだけで早紀はなんだか嬉しくなった。 嬉しくなったついでに更に激しく隆士を責め立てた。 「さっ、早紀ちゃん、ダメだよっ!」 「んっ?」 「も、もぅっ……!!」 (えっ……?) あまりの激しい責めに隆士の限界が来ていた。 早紀が気付く間もなく隆士のモノから何かが迸る。 「んっ!? な、なんだっ!?」 早紀は違和感を感じ慌てて口から引き抜くがもう遅い。 ビクビクと脈打つそれは白濁をまき散らし容赦なく早紀の顔を汚した。 「なっ、なんだこれ!?」 呆然とする早紀の顔を、胸を隆士から迸った白濁が滴った。 「なんだこりゃ…うわ、ネバネバする…ちょっと飲んじまったよ…。 オイ、隆士こりゃは一体…」 「ハァ…ハァ…」 早紀は我に返り、慌てて隆士に詰め寄ろうとするがその隆士はぐったりして肩で息をしていた。 「な、なんだ…? ひょっとして隆士、イっちまったのか…?」 「さ、早紀ちゃん……」 「てことは…これは……」 早紀は己の性知識をフル動員して考えた。 考えた末、出た答え。性交時に男性器から出るもの。答え:セーエキ 「うわわわわわわわっっっ!?!? 隆士、なにしやがんだっ!」 「さ、早紀ちゃん、酷いよ……」 「ったく、ビックリさせやがって…」 「ははは…」 早紀はティッシュで顔についた精液を拭き取りながら悪態をついた。 「まっ、これでおあいこだな」 「そ、そうだね」 気がつくと早紀のぎこちなさは消え、いつものふたりに戻っていた。 「で、隆士、やるんだろ? 続き」 「えっ?」 「どうなんだよ、やるんだろ? やりたいって言えよ」 「えっ、いや、それは…早紀ちゃんがしたいなら」 すっかりいつもの早紀に戻っていたせいか、いつの間にか立場が逆転していた。 「っかー! それでも男か! 素直にやりたいって言えよ!」 「えええええっ!?」 「ほれほれ、据え膳喰わねば武士の箸って言うだろ?」 「それを言うなら恥だよ! ってなんで僕に迫るわけ!?」 そんな煮え切らない隆士の態度を見て、早紀は涙目になり俯いてしまった。 「…隆士、やっぱりアタシとじゃ…嫌か…?」 「えっ…?」 「ホントは嫌なんだろ…? やっぱり、梢とか棗みたいな大人しい子のほうがいいんだよな…?」 「え…いや、そ、そんなことは…」 「アタシとしたいか…?」 「う、うん……したい」 「ホントにアタシとしたいか?」 「うん…早紀ちゃんが欲しい」 そう隆士が言うなり早紀はぱっと顔を上げニヤッと笑った。 「よーし、よーやく言ったな!」 「ええっ!?」 「んじゃ、しようぜ!」 「早紀ちゃん、謀ったね!?」 「ねぇ、早紀ちゃん、ホントにいいの…?」 「アタシはいいっていってんだろ?」 未だに煮え切らない態度を取る隆士とは裏腹に早紀はすっかり腹を決めていた。 「こんな中途半端なところで終わられちゃアタシも納得できねえんだよ」 「……」 「なっ、隆士…」 「わかったよ…」 そう言うと隆士は覚悟を決めたように再び早紀の体を抱き、愛撫し始めた。 今度は早紀も積極的にそれを受け入れ、次第にふたりの気持ちは高まっていった。 「早紀ちゃん……」 「ん……いいぜ、隆士……」 隆士は頷き、早紀の割れ目に数回なぞるように走らせた後、ゆっくりと中に入っていった。 「んっ……くぅっ……!」 くちゅりという音がして、ずぷずぷと隆士のモノが侵入してくる。 早紀は異物の挿入に違和感を感じたが、意外と耐えられるものだった。 実際は身体自体が経験済みのため慣れているせいだったが早紀は気付かなかった。 隆士はゆっくりと押し進め、ついに一番奥まで辿り着いた。 結合部からあふれ出た愛液がとろりとこぼれ落ちる。 「早紀ちゃん、入ったよ…」 「あ、あぁ、わかる…熱いのが…入ってるな……」 「大丈夫?」 「ん、ああ、思ったより…平気…」 「じゃ、動くよ…」 隆士は2,3回突き入れ感覚を確かめた後、ゆっくりと腰を動かし始めた。 「あっ、あっああっ、なんかっ、すごっ」 腰が動くたびに未知なる快感が駆け上ってくる。 舌や指でされた事などとは比べモノにならないような刺激が体を貫いた。 「あっひっ、あくっ、りゅ、しっ、あぁ、はァっくぅ!」 「ッ早紀ちゃん…!」 ふたりは無心になってお互いを貪りあった。 初めは一方的に受け入れているだけの早紀だったが、次第にリズムを掴み隆士の動きに合わせるように自分も動く。 そうすることでより深い一体感を味わい、快楽に変える。 いつしか互いのこと以外考えられなくなり、結合部から聞こえる淫らな水音さえも至福の音と思えた。 「ハァハァハァハァ……」 「早紀ちゃん…!」 そろそろ限界が近いことを感じ、互いに荒い息を立てさらにヒートアップした。 繋がったまま互いの唇を貪り、玉のような汗がこぼれ落ちる。 「早紀ちゃん、もう……!」 「あっ、あぁ…!」 「くっ……!」 隆士は限界ギリギリまで突き入れ、絶頂の瞬間引き抜こうとした。 が、あろう事か早紀は両足で隆士を捕まえそれを許さなかった。 「ちょっ!? 早紀ちゃん!?」 「あ、ああああぁぁぁぁぁ!!!!」 「うわあああぁぁぁ!?」 一瞬先に達した早紀の内部が激しく収縮し、隆士のモノを締め上げる。 限界まで来ていた隆士がそれを止められようはずもない。 どくどくと早紀の一番深い部分でそれは迸った。 「りゅ、りゅぅしぃぃっぃぃっっ!!!!」 「さ、早紀ちゃん、ダメだよおおおぉぉぉぉぉっ!」 隆士の叫びが虚しく響く。 勢いよく迸るそれはもう止められない。 全ての白濁を早紀ちゃんの中に出し切ってしまった。 ビクビクと痙攣していたモノがやがて大人しくなると同時に早紀の全身から力が抜け、隆士は解放された。 「ハァ…ハァ…」 「…あ、あぁあああ……」 隆士がモノを引き抜くと入りきらなかった精液が早紀と繋がっていた場所からどろりと溢れた。 「早紀ちゃん……」 「あ〜あ…やっちまったな、隆士」 「早紀ちゃんのせいでしょ!?」 全てが終わった後、早紀ちゃんは満足げに悪戯っぽくニヤニヤ笑っていた。 「な〜にいってんだ、オ・ト・コの責任だろ?」 「そんな無茶苦茶な…」 「アタシゃいつできるかわかんねーからな、目一杯楽しませてもらったよ」 「人ごとみたいに…」 早紀とは対照的に隆士はどんよりと落ち込んでいた。 「あー、もう落ち込むなって」 「わっ」 早紀は肩を落としている隆士の頭を捕まえると胸の間に抱きかかえた。 「わわわっ」 「へへっ、いいじゃねーか。 こーんな可愛い彼女捕まえてガックリもないだろ?」 「そ、そうだけど…」 「だったら、いーじゃねーか。 そんときゃ、そんときだ」 「はぁ…」 すっかり気も晴れたのか早紀は曇りのない笑顔で笑っていた。 「でも、早紀ちゃんが元気になったならそれでいいかな」 「オゥ、おめーにいっぱい元気もらったからな」 と言ってポンとお腹を叩く。 「は、はは……」 (どうですか? 簡単なことだったでしょう?) (ん? 千百合か。 そーだな) (前に進む努力さえすれば、悩みなんて吹き飛びますよ) (だな。 おめーにゃ世話かけたな) (いえいえ、早紀さんは私に似てらっしゃるからついお節介を) (オゥ、サンキュ!) 「…早紀ちゃん?」 「ん、ああ、わりぃ。 ちょっと千百合のヤツがな」 「ち、千百合ちゃんが…?」 「あいつがずっと後押ししてくれてたんでな。 ちょっと礼を言ってたんだ」 「そうだったんだ…」 自分の中のもうひとりの自分が教えてくれたこと。 愛すること、愛する人を信じること。 それはとてもシンプルで、とても難しいこと。 でも、アタシはもう迷わない。 愛する人を愛し続けるために。 「じゃ、第二ラウンド行くか!」 「えぇぇぇ〜〜〜〜〜!?」 <Simple>    Fin. 712 名前: Simpleあとがき [sage] 投稿日: 2005/06/13(月) 00:48:36 ID:StCipK2e と言うわけで早紀x隆士SSでした。 やっぱ<恋のマホウ>で二人の仲がいい感じだったからでしょうか? 設定自体は引きずってないんですが、別のハッピーエンドを書いてみよう、 ってのが書き始めるきっかけでした。 そしてもう一つの動機は「エロパロらしい作品を」です。 ま、これは言わずもがなですがまほらばでちゃんとした純愛エロが書けるか? というのがあったわけでしてそこに挑戦してみました。 そんなわけで表現はなるべくソフトに、と気をつけて書いてます。 えちシーンで「それ」「モノ」とか抽象的な表現が多いのはそのせい。 出力75%ってところですか。 わりと難産でしたが一つの愛の形、を書けたかなと思えます。 まあ、18禁モノと言うことで賛否両論でしょうが「恋愛の先にあるもの」という 欠かせない要素を書きたかっただけなんですわ。 そんなわけで感想とかありましたらどんとこいッス。