Phantom(ファントム) PHANTOM OF INFERNO
PlayStation2:¥6800(初回限定版:¥7800)
ジャンル:ノベル式ADV
このゲームを初めて見かけたのは
いつも購読している雑誌でした。
設定などに凝ったADVが出るっていう感じの記事で。
その時は「へえ〜、期待していいな」くらいに思ってて
発売も夏予定くらいだったので
自分は気にはするけど遠い日の話だと思ってました。
5月に雑誌でその月末に発売されるみたいな記事を見て
「あら、もう出るの?夏じゃなかったの?」
などと、まだ僕は寝ぼけていて(苦笑)。
発売日が過ぎてから、ネットでチャットする友人と話をしていて
「多分、僕が欲しいと思ってたゲームはコレだろう。買おう」
と買った次第です。
買ったのは通常版でした。
僕は限定版に固執する気持ちは、もう薄れていたし、
このファントムは割と売れたみたいで
僕が買おうとした時には、限定版はありませんでした。
「まあ、通常版でもいっか」と軽い気持ちで買いました。
さて、出会いを語ったところでレビューを始めます。
正直言って第1印象は悪かったです。
大きな1枚絵にテキストだけの味気ない画面だから。
実際、画面写真を見て「即、買い!」と判断する人はいないと思います。
思いっきり地味ですから。
でも、ゲームをしているうちに違和感はなくなりました。
このゲームはフルボイスなのです。
それもナレーションにまで声優さんが声を吹き込んでいて
出てくるテキストに吹きこまれてない音声はないです。
それこそ「‥‥‥‥」にも、声優さんの演技は入っています(笑)。
イメージ的には、副音声で状況説明が入っている洋画
みたいな感じで遊びました。
ある雑誌レビューに「テキストのみなので誰が話しているか解り辛い」
と書いてありましたが
音声を聞いていれば、誰かキチンと解りますよ。
このゲームで最高に良かった点は、ストーリーです。
この手のギャルゲーの文法に従って
どのキャラと親しくするかによって、多少ストーリーが変わってきます。
感心したのは、
ストーリー分岐しても共通に起こるシナリオがあります。
そのシナリオが、プレイヤーと親しいキャラとの状況によって
少し変化しています。
共通イベントをやっていて
時々、矛盾みたいな気持ちを感じる事はありませんか?
「何か、違うんじゃないか?」みたいな。
でも、ファントムは細かく変化を加える事によって
ゲーム内での矛盾を徹底的になくす努力をしています。
多いでしょ、「共通イベントはどのキャラでも同じ」というゲーム、
少々の矛盾は「所詮ゲームだから」って逃げるゲームも多いでしょう?
本作は、あるキャラを攻略している場合
プレイヤーがこの情報を知らないなら、その部分は変更されています。
多分、このような矛盾は
声優さんの音声吹き込みが影響してると思います。
スケジュール的に厳しいからだと思います。
例えば‥‥
(1)シナリオ執筆
↓
(2)声優さんの音声録音
↓
(3)ゲームのプログラムとしての作成
↓
(4)デバッグ後、完成
という流れになると思います。
コレで音声がなければ
そもそも(2)の作業がありませんし、
(4)のデバッグ中でも、
テキストでおかしい部分があれば、変更できます。
結果的には音声ナシの方がデキは良くなります。
そうでしょ?
こういった矛盾が発生するのは、
製作者がサボって遊んでるとは思いませんが
たくさんの人が関わるために変更が容易にできなくなります。
ですから、僕は声優さんの音声吹き込みが多いゲーム
(特にフルボイス)は、あまり好きでないんです。
僕は、売り文句に「フルボイス」と謳っているゲームは
「底が浅いつまらないゲームかな」
と先入観を持ってしまいます(苦笑)。
実際、ギャルゲーの評価を下げた原因に
声優を売りにしただけでゲームとしては全然ダメ
というゲームがたくさん出たからだと思っています。
ありますからね、
「このゲームを遊ぶのは、マジで時間のムダだ」
と確信できてしまうようなゲームが(笑)。
ファントムは、実に良くできています。
感心した!
(↑は、横綱・貴○花の優勝賜杯授与の時の小○総理の口調で(笑))
グラフィックについてですが、
背景を実写で取り込んで
コンピュータで画像処理した物を使用しています。
上手くできている画像もありますが
実写っぽさが強過ぎてゲームとして浮いてしまう画像があります。
特に、ケバケバしい現代風の建物の時に。
それは残念でした。
グラフィックについての注文は、もう1つあります。
通常画面の表示で目パチ口パクをするキャラと
しないキャラがいる事です。
イベントグラフィックの1枚絵では
全てが目パチ口パクしませんが、コレには別に不満はありません。
パクパクするのは、エンディングが用意されているヒロインキャラたちで
(しないキャラは、野郎とエンディングに関係ないキャラたちです(笑)。)
パクパクするキャラにもパクパクするグラフィックと
しないグラフィックがあります。
するならする、しないならしないで統一して欲しかったです。
遊んでいて、スゴク違和感を感じます。
ストーリーに注目する所なのに「あ、口が動いた」とか
余計な部分に注意が行ってしまいます。
あと、音声のオン・オフがメンド臭かったです。
音声のボリュームをオフにしても
各キャラごとに音声をオン・オフを決める画面が他にあって
それをオフにしないと
音声が完全に出ない設定にならないからです。
先ほど、共通イベントがキャラによって
少し違っていると書きましたが、大体同じですし、
このジャンルのゲームは繰り返しプレイが前提で何度も見る事になるので
オフにしたくなる事が多いのです。
ボタン1つで音声オフにできるゲームが多いので
そこら辺も努力して欲しかったです。
ただ、各キャラごとの音声のオン・オフを決める場面で
3章に入ってから出てくるキャラが何名かいるのですが
それらのキャラの音声は、3章に入ってからでないと
オフにできません。
製作者のネタバレを抑えようという姿勢に感心しました。
ストーリー(特にエンディングに顕著)については、
スッキリしない、釈然としないものが多かったです。
エンディングが、ヒロインキャラたちとの(ベスト)エンディングだとしても!
このゲームのパッケージには
「残酷な表現があります」という赤い三角のシールが貼ってありました。
でも、僕は、残酷さでなく、ストーリーの複雑さから
R指定(15歳未満推奨)くらいにはすべきだと思いました。
(注:元々のPC版は18禁Hゲームです。)
シールが貼られていましたが、それほど残酷なシーンもないです。
加えて、Hシーンなしですが、僕がよく言う違和感もありません。
Hゲームの移植と言ってもエロ要素があるからでなく
話の複雑さから年齢制限して欲しいですね。
このレビューは、
一応全てのエンディングを見てから書いているのですが
「EVE バーストエラー」を終えた時と同じ
脱力感、達成感に襲われています。
共通しているのは、ゲームの謎解きとして難しくて頭を使うのでなく
絶妙で複雑なストーリーを理解するのに頭を使いました。
久々じゃないですか、こんなにストーリーが骨太のゲームは?
最近、僕はギャルゲーを敬遠しています。
僕は、昔から割とギャルゲーを遊ぶ方だったと思うのですが、
最近は「萌え」要素を前面に出した
お手軽ハーレムみたいな軽いゲームが多くなって
つまらなく思って敬遠しています。
このゲームは、ADVが好きで
「萌え萌え」のゲームが嫌いな人に遊んで欲しいですね。
そもそものキャラデザインからして萌える要素はないように思います(笑)。
最後に、このゲーム銃などの兵器の描写がやたら詳しいのですが
その設定が生きていません。
選んだ銃によってストーリー分岐があるのでなく
単純に獲得グラフィックがあるだけですから。
(このレビューを書いている時点では、
全てのエンディングは見ましたが、
全てのグラフィックはゲットできていません。
未獲得グラフィックはすべて銃器のグラフィックです。)
やはり詳しい設定と、
それを遊んだ時に生かすゲームデザインがないと
イケナイなと思いました。
このコーナーの主旨は、良い点も悪い点もハッキリ書く事ですので
悪い点もキチンと記しました。
プレイ時間(約80時間)
基本的な部分は全てクリアしました。
エンディングは全て見ています。
未獲得グラフィックが少し残っていますが
ゲームの進行には関係ないグラフィックです。
<80/100点>