柳橋物語・むかしも今も
著者:山本周五郎
476円、310ページ、新潮文庫
ISBN4-10-113404-9 C0193
二つの話が収録されているが、どちらも江戸時代を背景としており質は大体同じくらいである。
両方とも展開としては悲しいというか非情な方向に向かってゆくが、
その都度、力になってくれる回りの人たちや話の根底に義理人情とか優しさが見受けられる。
人間の温かみというのが再認識できる作品となっている。
どちらも話としては似たような形なのが勿体無い。
特に話が面白いというわけでもないが、文章はしっかりしている。
精錬された文章で、あらを探そうと思っても見つかるものではない。
それに、読みにほとんど詰まることはない。
会話がはきはきしていて、それのうまさを味わって読むのも一興かと。
(平成十四年六月九日改訂)