銀河英雄伝説(全十巻)
著者:田中芳樹
総計6000円、3665ページ、
一冊平均600円、約366ページ、徳間文庫
紛れもないSF長編小説である。
戦争をテーマに扱っており、全体的に軽い筆致で書かれている。
全十巻ということで非常に多くの人物が登場するわけなのだが、
戦争に携わっている人が死ななさ過ぎるので、緊張感が欠落し現実味が喪失してしまっている。
その副産物としてだれがどういう人物なのか分からなくなるという事態が生じる。
ただ、壮大さを感じさせるという役割は果たしている。
一方、時代背景や人物設定は矛盾や指摘を作らないようにうまくなされている。
わずかに煙に巻いている感があるが、枝葉を取り除き筋をまとめて考えてみると
うまく計算されていることに気付くのではないだろうか。
やはり、背景や設定ができていると無駄な神経を使わなくとも良いので安心して読める。
残念なことに文章は納得のいくものではないと言わざるを得ない。
まず必要のない文が多すぎるのである。言わずもがなといった文もある。
しかしもっと余分な文は皮肉やジョークといったものを表す文である。
少し割合が大きく、いいジョークなどの文があるにもかかわらず
質の低い文でかえって良くない効果を生み出している。
戦争を扱っているため雰囲気が暗くなることを避けたのかもしれない。
明るくはなっているが減らしても雰囲気はそう変わらないと思われる。
次に文章がくどい。それほど重要でないところは長々と書き立てるものではない。
氏が時折登場人物を通して史観を読み手に伝えようとしているのだが、
何度も書く必要はあまりない。
全体的に言葉が多く、単語を削った方がいいと思われるところもある。
すっきりとした文章とはいえない。
文章の癖が強く、受け入れられるかどうかは読み手次第な作品ではあるけども、
一定の面白さは持ち合わせている。
(平成十四年七月九日作成)
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一巻 黎明篇 600円、404ページ
ISBN4-19-890592-4 C0193
二巻 野望篇 600円、380ページ
ISBN4-19-890624-6 C0193
三巻 雌伏篇 600円、373ページ
ISBN4-19-890652-1 C0193
四巻 策謀篇 600円、350ページ
ISBN4-19-890689-0 C0193
五巻 風雲篇 600円、392ページ
ISBN4-19-890717-X C0193
六巻 飛翔篇 600円、343ページ
ISBN4-19-890754-4 C0193
七巻 怒涛篇 600円、348ページ
ISBN4-19-890787-0 C0193
八巻 乱離篇 600円、343ページ
ISBN4-19-890819-2 C0193
九巻 回天篇 600円、366ページ
ISBN4-19-890856-7 C0193
十巻 落日篇 600円、366ページ
ISBN4-19-890889-3 C0193