三好達治詩集
著者:三好達治
438円、298ページ、新潮文庫
ISBN4-10-119801-2 C0192
十六、拾遺と呼ばれるものを含めば十九もの詩集で構成された詩集ということになる。
その詩集の数からして、多くの数の詩が収められている。
一つ一つを吟味して咀嚼しようものなら、相当の時間がかかる。
それは単に詩の数が多いというのもあるが、詩集によって詩の傾向が変わるからだ。
例を挙げるならば一番始めに収録されている詩集、測量船。
これは他の詩集と比べ、一つ一つの詩が短くて簡潔だ。
そして表現が素直で内容が分かりやすくまとめられている。
他の詩集ではまた別の傾向を持っている。
作風が微妙に変わってきたりするので、その変化を探ってみるのも面白いかもしれない。
とは言っても同じ人が詩を作るのだから、すべての詩が持つ傾向というのもある。
それは詩が五、または七音で一つの句とされ、読む調子がとられていることだ。
俳句や短歌を思い浮かべてもらうと理解していただけるかもしれない。
この傾向はむしろ特徴といったほうが正しいだろう。
五、七音は日本語において一種のリズムとでも言おうか、読みやすさを持っている。
俳句を読むときのあの流れるような読みやすさがこの詩集にも確かにある。
詩なので五・七・五と厳密には書かれていないが、
どことなく俳句や短歌のようでもあるし、そういったものの延長線上にあるもののようにも思える。
詩は、氏に身近なところから得たと思われる題材がほとんどだ。
中には、詩の心情を表した詩もある。
それ故に、この作品に対して近しさというものが感じ取れる。
時折、難しい言葉や表現を用いて詩を分からないものにしているのが残念なところだ。
しかし、本質的にはテンポの良い、分かりやすい、地味ながらも味のある詩だ。
強烈さというものはないのだが堅実な印象をもった作品である。
(平成十四年八月十六日作成)