花の降る午後
著者:宮本輝
700円、476ページ、角川文庫
ISBN4-04-146904-X C0193
花の降る午後は長編小説であり、素直な表現の文章がとてもよく目に付く。
七つの章で構成されており、ページ数から見ると少し細かく分けられている。
この小説は女性が主人公となっている。
主人公が女性であるためか少し華やかな感じがこもっている。
それと人物描写がきちんと出来ているのだが、主人公が立派で、出来過ぎとも言える。
読み手によっては現実味を感じられないのではないかと思われる。
内容が少し薄くページ数ほどの内容を感じさせない。
展開が平易で起伏に乏しいためというのもある。
あと二転三転させてもっと展開にうねりがほしいところだ。
起伏が乏しいため展開による面白さというものも欠けている。
どこかしら氏がこの作品をうまく練りきれなかった雰囲気もある。
話の筋自体は悪くなく、書こうとしていることは評価できる。
特にこれといった技法は使われておらず、読むのが難しいといったことは全くない。
この小説にはあとがきが存在し、氏からの言葉を直接的に読み手が味わうことが出来る。
たった一ページではあるが少し考えさせられる内容であり興味深いあとがきだ。
わずかながら氏に近付くことが出来る。
(平成十四年八月三十一日作成)