あすなろ物語
著者:井上靖
400円、224ページ、新潮文庫
ISBN4-10-106305-2 C0193
明日檜になろう、明日檜になろうと願い、
結局檜になれないというあすなろ(翌檜)の木の説話を元に書かれた作品である。
六つの話に分かれていて、主人公の生き様を何気ない筆致で書いている。
また、その説話を隠喩に用いるなどして効果的に使われているのが印象的だ。
加えてその説話が重要な部分を占めている。
六つの話に分かれているが次の話に進むと、
急に場面が変わることに初めは戸惑いを覚えるかもしれないが
入り込みやすい世界のためすぐに慣れる。
自分なりに登場人物が檜であるのか翌檜であるのか、それともどちらでもないのかを
当てはめながら読んでいくのも一つの読み方である。
言いかえるならば様々な読み方ができる。
非常に分かりやすい小説である。何気なくそれでいていい文章というお手本のようでもある。
井上靖氏の作品を読んだことのない人は一度読んでみるといいのではないだろうか。
(平成十四年六月十五日作成)