車輪の下
著者:ヘルマン・ヘッセ 訳者:高橋健二
324円、246ページ、新潮文庫
ISBN4-10-200103-4 C0197
題名を見て読むにはつらい。どのような内容の話なのか分からないし、
けれどもまったく意味が無いわけでもない。かといって重要な示唆があるというわけでもない。
話の展開がのんびりとした印象で、面白さには欠ける。途中で退屈になったりもする。
主な登場人物はいいのだが、登場人物の性格などを文章で書き連ねているだけで、
行動を伴っていない。だから、あまり個性を感じないし、みんな似たような印象がある。
ただし、主人公が受験勉強に追われ自分というものを確立できず、
自分というものに苦しむという、その構図はいい。
そして、教育について現在色々言われていることもあり主人公に現代の学生と姿を重ねてしまう。
また規律や学業で子供たちを押さえつけようとする教育者たちにも。
そういう視点で見ると非常に考えさせられる。
細かいところがもう少しよければいい作品になったであろう。
娯楽性はないが、なかなか文学的な作品か。
(平成十四年六月九日改訂)