沈黙
著者:遠藤周作
476円、256ページ、新潮文庫
ISBN4-10-112315-2 C0193
読んだ後に読んだぞ、という何か充実感のようなものを与えてくれる作品。
それはこの作品のテーマというか内容、宗教が絡むためなのだろう。
ヨーロッパから来た宣教師たちが日本にやってきて布教をしたり、
布教を妨げる日本の有力者との奮闘を描いているからかもしれない。
はじめのほうは外国から見た観点でかれた導入の部分が退屈だが、
中盤以降の宣教師の心理描写はよく書けていて、宣教師の心の動きに納得してしまう。
日本のキリスト教徒の発言や行いも作品の雰囲気をうまく出している。
中でも要所要所で登場する日本のキリスト教徒であるキチジローの行いや心の動きが
なにかを象徴しているように思えてならない。
歴史の教科書の話の裏側を読んでいるようでなかなか面白い。
自分が宣教師になったつもりで読んでみると、心が痛む。
読む人それぞれが考えるところがある。
宣教師の視点ではなく日本の有力者の立場から読んでみるのも一つの読み方である。
(平成十四年六月九日改訂)