蜘蛛の糸・杜子春
著者:芥川龍之介
286円、151ページ、新潮文庫
ISBN4-10-102503-7 C0193
この蜘蛛の糸・杜子春と名付けられた作品は短編小説であり、
読み手が話の中に入っていきやすい小説ばかりが集められている。
八つの話が収録されているが年譜やあとがきの類のものを除くと、
一話一話はかなり短い。
題名を見てみると内容が難しそうな先入観を持ってしまうかもしれないが、それは間違いである。
やわらかい文章と雰囲気を具えており、
中学生であれば読むことは出来るであろうし話を理解することにもそう苦労はしない。
それらの要因は話が単純なだけに書こうとしているものがはっきりしているからだ。
寄り道をせず展開がわかりやすいというのもある。
ページ数から考えれば、話に余計な枝葉をつけなかったために
このようなページ数に収まったのだと言える。
教訓などを含む寓話性のある話ばかりなので童話と言っても良いかと思われる。
勧善懲悪や欲といったものが根底にしっかりと存在して、
話を読み終えた後に少し考えさせるものを頭に残させる。
童話が持つ特有の良い読後感というのも持ち合わせている。
話が単純で分かりやすいのが味方してか、
自分の解釈の介入の余地があり、読めば読んだなりの味が染み出てくる。
短い話が嫌いな人には受け入れられないかもしれないが、
短時間で一つの話を読み終えることが出来るので
本を読む時間があまりない人にとってはありがたい作品である。
(平成十四年九月二十三日作成)