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当たる!!

2004.2.9

 まー、なんといいましょうか。

 二輪にしろ四輪にしろ、世の中にある車輪付きの乗り物は、やはりタイヤのグリップに依存して走っているんだなーと実感したわけで・・・。

 何のことかわかんない?つまり、その、一言で言っちゃうとスピンしちゃったわけです。ごく近所で。日頃からドリフトなんてやってる野蛮な(失礼・・・笑)方達ならともかく、私はとびきりのセフティドライバー。珍しくこんなことがあると、すっかりビビッてしまうわけです。

 まさに本日。就業時間を終えた私は、いつもより少し早く帰ることにした。まだ明るい午後5時30分。駐車場のクルマに乗り込んだ私は、何だかこのまま真っ直ぐ帰るのが惜しいような気分になっていた。かといって、お気に入りの音楽を聴きながら海岸線を流したり、セルフのうどん屋に行くほどの時間はない。

「そうや、いつもの峠を軽く流すか」

そういうことになった。

 峠といってもそんなに大したことはなくて、低〜中速コーナー主体の、いわゆる旧道だ。以前は非常に狭い山道だったのだが、長い時間を掛けて全線2車線化を完了させた。「ややハイペース」で流して走ると非常に気持ちが良く、私のお気に入りのコースになった。傾斜がきついので、バイクが少ないのも不安感が少なくていい。

 しかし。走りやすくなった途端にどこからともなくドリフト愛好家が集うようになった。週末の夜ともなれば、深夜まで響くスキール音に近くの住民は悩まされるようになった。日曜の朝走ってみると、路面はスリップマークだらけで真っ黒。路肩には細かなタイヤクズが積もっている。見せ場コーナー付近ではガードレールはボコボコで、ガラスの破片もいっぱいだ。さらに、ちょっと路肩が広くなっている場所には弁当のゴミ、空き缶、すっかり丸坊主になった古タイヤまで捨ててある。

 そんなこんなで、気が付けばコーナーというコーナーにはセンターポールが立てられ、すっかり走りにくい道になっちゃいました。でも、これはこれで仕方ないのかな。うっかり土曜の夜にでも通ろうものなら、路肩の休憩所みたいなところにズラリと並んだ改造車と、タバコ吹かしてたむろってる兄ちゃんたちが異様で、非常に落ち着かない思いをしたから。今は、殆どいなくなっちゃいましたが。善意・悪意ということを抜きにしても、彼らの行為が環境を変えてしまったのは事実で、そしてドリフト君の生息を拒む現在の状態が、道を本来の目的のために使う人たちにとっては都合がよいというのも動かし難い事実だ。

 それはともかく、決して無茶な走りをしない(できない)私には、流して走ることができればおおむね満足。なので今でもちょくちょく走っているわけだ。全開は難しくても、快適なペースを保つことは可能だし。以下、具体的なスピードの記述は省いて解説。といっても4ATなので大した描写はないんですが(苦笑)。

 1コーナー(右)手前で4→3→2。すぐ手前まで民家があるので、控えめのスピードで入る。当然回転数自体は低めなので、小細工せずにシフト。すぐに続く2コーナー(左)は傾斜のあるヘアピンなので、可能な限りアクセルを踏む。傾斜と加速で前輪の荷重が抜け気味になり、コーナーの曲率のせいもあってフロントタイヤがドリフトアウトしようとするのを感じる瞬間だ。実際に車線をはみ出すこともあったりして、カッチョワリー。本当は進入速度を上げる代わりにしっかりとブレーキングしてフロントにしっかりと荷重をかけて、クルッと回った方がいいのかもしれないが、ここはあくまで雰囲気重視で。

 今日もそんな調子で2コーナーに突入・・・した途端に微妙に姿勢が乱れた。オーバーステア傾向になる。アクセルをやや戻すと乱れは収束した。ステアリングもわずかに戻すが、カウンターというほどではない。

 何だ、今の?あっけなくテールが流れたぞ。おまけにフロントの感触の頼りないこと。55扁平のタイヤだからということを差し引いても、ステアリングに伝わる感覚が一瞬途切れたようなかんじ。これって、路面のグリップが異常に低いの・・・か?

 晴天で路面状態はドライ。用心していつもよりペースを落として3コーナー(右)に侵入。切り通しを抜けるような感じのコーナーだ。そのまま4コーナー(左)へ入っていくのだが、どうもグリップ感が怪しい。走行ラインを微妙に外すというか、クルマが常に身じろぎしているような動きをする。

 4コーナーを抜けるとストレート。このコースの中でもスピードが乗る場面だ。直線でのフル加速を試してみる。特にスリップすることもなく2速で6000回転まで引っ張って3速へ。すぐにブレーキングポイントが来る。3→2のシフトタイミングに合わせてヒール&トウ的に、回転数を合わせるアシストをしてやる。のだが、今回は3速に入れてから加速していないので回転合わせも必要ない。ゆっくり入ってやればいい。

 ここから先はセンターポール密集地帯なので、グッとペースは落ちる。それにしても何なんだこの動きは。コーナーに入ると途端に挙動が怪しくなる。アライメントの狂いやタイヤの問題なら直線での走りにも少なからず影響するはずなのだが。

 今日。この道で。コーナーとストレートの状態の違いとは。コーナーにあって直線部分にないものとは。・・・アレか?アレってそんなに影響するものなのか?

 ある仮説に到達しつつあったが、まだ確信が持てないまま、私は峠の最高点に差し掛かった。短いストレートの後の右コーナー。ブレーキングから3→2とシフトダウンし、いつもよりかなり控えめなスピードで進入。ジワリとアクセルを開けた。すると。

 大きくテールが流れたのを感じた瞬間の、お尻がスーッと冷気になでられたような、あの感覚。反射的にカウンターを当て「気味」にする。登りの、しかも加速中だから、リヤタイヤにはたっぷりと荷重がかかっている。それゆえテールの動きは比較的緩やかだ。パワースライドはアクセルの繊細なコントロールさえ怠らなければ収束する。そう、荷重バランスを大きく崩すようなヘマさえしなければ、そう簡単にスピンしたりはしない。だけど、このコーナーは。

 テールスライドが収束する前に車体は峠の最高点を過ぎ、道は下りとなる。重心は前輪側に寄り、リヤタイヤに掛かっていた荷重が一気に抜ける。するとどうなるか。最初はゆっくりと動き出したリヤタイヤが、途中から加速でも付いたように横滑りのスピードが上がるわけです。

 もはや、為す術なし。リヤの動きに合わせてフロントは大きく切れ込み、対向車線へ。車体は180度近く回り、なおも路肩へと流れていく。私はといえば、ひたすらブレーキを踏んで、とにかく最短距離で停める努力をしているという状態。

 そんな時、ふとイン側の街灯が目に入った。チェイサーはどんどんそちらの方に吸い寄せられていく。助手席の窓にどんどん近づいてくる街灯。

 サイドからの衝突だし、この速度だから死ぬことはないやろ。けどドアに当たると修理代がなぁ。頼むからもう少し・・・よっしゃ、ギリギリでフロントフェンダー側に入った。でも止まらんぞ・・・ヤバヤバヤバ!エンジンルーム自体が歪んだらどうにもならんがな!!とまあ、呑気なんだかパニクってるんだかわかんない心境の中、フロントに『ゴットン』という鈍い衝撃が。

 止まりました。路肩に設けてある、アスファルトの盛り上がり、あの10センチくらいある縁みたいなのをフロントタイヤが乗り越えて、ようやくチェイサーは停止した。取りあえず安全な場所まで移動する。

 心臓バクバクの上に、右の大胸筋が痙攣している状態でチェックしてみると、外傷はなし。あー、よかった。けど足回りは狂ってるかもしれん。ま、しばらく乗ってみてからのことにするか。

 それにしても恐かった。こんなに恐かったのは、前のクルマ(FF)で雨の日に「あのコーナーを、テールスライド気味に曲がったろ」とか言ってサイドを引き、アクセル遅れて危うくガードレールに張り付きそうになって以来である。あ、あと夜中にコーヒー買いに行って兄ちゃんに煽られて、頭に来てブッチぎったら直後のヘアピンでタックイン食らって、危うくガードレールに張り付きそうになったというのもあったな。要するに、「それほど飛ばさなくても、アホなことやってると墓穴を掘る」というお話です。特に、ハイグリップタイヤ愛好家は、高性能な分しっぺ返しもデカいですから、十分気を付けましょう。

 スピンの原因?前日だか前々日だかに雪が降ったので、大量の融雪剤がコーナーごとに撒かれていたのでした。もう白い粉状のものは無くなっていましたが、路面に黒い染みのようなものが残っていたりして。よく知らないんですが、融雪剤って実際のところスリップの原因になったりするんでしょうか?詳しい人がいたら教えて下さい。・・・実はオイルを撒いたヤツがいたりして。

 まだビビッた状態で書いてるので、今回はこの辺で。