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ドライヴは、アドベンチャーだ。@

2004.1.2

 落としました。ええ、そりゃもう、見事に落としました。何のことかといえば、生まれて初めて「脱輪」というのを経験したんですわ。

 あれは忘れもしない2003年8月の某日・・・要するに忘れてるんですが、ある蒸し暑い夜のこと。フロから出た深夜、ふと「夕涼みがてら近所を一回りしてくるか」と思いついたのが全ての始まりだった。この、「寝る前にひとっ走り」というのが大好きなのである。好きな音楽を大ボリュームで聴くことができるとか、狭い空間は落ち着くとか、もっともらしい理由を並べることはできる。しかし、本当の理由は単に「1日に1度はクルマに触りたいやんか」のような気がするな。

 そんなわけでパジャマで財布だけ持って家を出たわけ。30分くらい走って、そろそろ家に帰るかということになった私は、ふと目の前の横道が気になった。カーナビにも出ていない田舎の生活道である。そこにあるのは知っているが、一度も入ったことはない。あれを入ると、いつもの道へのショートカットになっているのではないだろうか?道幅は十分そうだし・・・ええい、行け!

 対向車もない表通りから、右折の形で横道へ入る。暗い!街灯も無いのか・・・と思ったら、蛍光灯が切れてるのね。左側は大きめの水路。右は所々に民家があるが、基本的には田んぼと畑。取りあえず前進すると、思いの外に道幅が狭い。まぁエエわ、通り抜けるのに支障はないし。なんて気楽に構えていたら、前方が行き止まりになっている!

 一瞬ギョッとしたが、よく見るとT字路になっているだけだった。しかし、塀も迫っていてなかなかシビアな曲がり角だ。左側の道は民家の間を通る路地で、いかにも狭そうで危険を感じる。右側の道は、塀の陰になっていて、曲がった先がどうなっているのか読めない。クルマを降りて、ちょっと見てくればよかったのだが、何故かその時は思いつかなかった。そんな私の選択肢は2つ。

 @取りあえず右側の道へ入ってみる→失敗だったらバックでカーブを戻る
 A冒険せずに来た道をバックで戻る→狭くて暗い道をバックで戻るのはヤだなぁ

 実際には@の後にはAの「来た道をバック」があるわけで、面倒臭いことが嫌いな私は、名誉ある撤退をすることを決意した。それにしても暗い田舎道である。水路にでもクルマを落とすと面倒なので、ひとまずクルマを右肩に寄せる。ドアを開けて、右の後ギリギリに寄せてバックしていけば何とか脱出できるやろ。ありゃ、ちょっと前に出しすぎたか。気持ちクルマを下げて・・・と。

 わずか数十センチのバックに油断していたとしか思えない。ルームミラーだけ見ても人がいないのを確認していたから油断していたのかもしれない。皮肉にもその時私が漏らした「これでクルマ落っことしたら洒落になんないな」という独り言には現実味がなかった。が、数秒後、それは現実となった。グラッときて「!!!!」てなもんでブレーキを踏んだが間に合わず。ガキン!ゴキゴキ!!というような、鈍ーい感じの音と共に、車体は斜めになって停まりました。

 アクセルを踏んで脱出したい衝動を抑え、クルマを降りて状況を確認する。

「何じゃそりゃ〜!?」

 文章で表現するのは難しいのだが、何というか右側の路肩が一定ではないのである。畑や田んぼの広さによって道との境界線がマチマチで、要するに道路の右端がデコボコとしたラインになっているわけだ。で、問題の右後輪部分は、畑によって大きく道が切り取られている。つまり、運転席から前を見ている限りではちゃんとクルマは道路上にいるわけだが、右後輪の後には道がないという・・・この状態でバックしたもんだからひとたまりもないわけやね。

 微速で比較的ゆっくりと落としたから、ダメージは小さそう。アクセルを踏むと落ちた側のタイヤが空転するから、駆動系も異常なし、と。それにしても足場が悪いのと、適当な木材も見当たらないので自力脱出は難しそうだ。ヘタにジャッキなんか使おうものなら、大ケガするかもしれん。目の前に民家があるけど、助けを求めるのも格好悪いし、ロープか何かで普通に引っ張り出せるとも限らない。私はJAFに助けを求めることを即断した。

 20分ほどで救援車が到着するとのことでホッとする。とはいえ狭い道を塞ぐ格好で立ち往生しているわけだから、近所の人が通りかからないかと冷や冷やする。午後11時を回っているとはいえ、仕事で疲れている人の帰宅を邪魔するのは忍びないもんね。民家の前だし、クルマの腹が地面に接しているのでエンジンはかけられない。夜中とはいえジワジワと車内の気温が上がっていく。フロ上がりのさっぱりとした気分が湿っていくようで、情けない気分になる。

 気分が十分滅入った頃、煌々と明かりを灯したJAFの救援車が到着した。いやー、その姿の頼もしいこと!ウルトラ警備隊のテーマでも流れそうなほどに凛々しいその姿に、不覚にも感動してしまった。これで助かった!!真冬の山中なら、ホントに命に関わるからね、大げさじゃなくて。で、ここで思い出した。オレ、パジャマやん(苦笑)。JAFのオジさんもそこはプロ。私がパジャマ姿だろうとお構いなしで、素早くチェイサーを引き上げてくれた。「まぁ、事故じゃないから気を落とさずにね。ただの脱輪だから」という優しい言葉が身に染みる。あのー、ただの凡ミスだから余計に凹んでるんですけど。

 それはともかく、無事に路上復帰した我がチェイサー。さっさと家に帰ることにする。JAFのオジさんが私に言った。「帰りはそこの角を右に曲がってねー」って、それはさっき曲がるのを諦めた角では?半信半疑でその角を曲がると・・・何のことはない、すぐ先に広い道があるやないの!!まったくもぉ・・・人生なんてこんなもんである。

 あー、死ぬかと思った。