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ジラしのヨロコビ

2003.1.18

 いきなりだが、バイクがけっこう好きだ。「非常に」ではなく「けっこう」と書いたのは、現在は1台も所有していないから。2年ほど前に自宅を建て替えた際、置き場の関係から、気に入っていた’88NSR250Rを廃車にしてしまった。それ以来、原付も含めて2輪車を持ったことはない。現在は、趣味の古墳巡り(笑)のために、オフロードタイプの原付を手に入れたいと考えている。そんなこんなで、ふと、バイクに乗っていた頃のことを思い出すのだ。

 私が持っている2輪免許は、中型限定。今では教習所で大型が取れる時代なので、意外に思う人もいるようだ。多くのバイク乗りが、「より大排気量、より大パワー」という指向があるのではないかな?現に、私のバイク師匠のY田もNSR250Rから始め、VFR750F、RVT1200と、順調に排気量&パワーをアップしてきた。私はといえば、ほとんど大型バイクに対する興味がない。説明が面倒なので、表向きは経済的な理由を挙げて「大型免許取っちゃうと、ビッグバイクが欲しくなるでしょ。そんなお金は無いから、最初から免許取らないのよ」ということにしてある。ホントはね、少し違うのだけど。

 さて、私が所有したことがあるバイクといっても、わずか2台でしかない。どちらも排気量250tの小さなバイクだ。初めて購入したのは、87年式のCBR250R。フルスケール20000回転のタコメーターを持つ、バカみたいな高回転エンジンが特徴。ホンダご自慢の「カムギアトレイン」は、バルブ駆動をチェーンではなくギアで行うため、より高回転に対応することができる。実際、高回転揃いの各社クオーターマルチ(250t4気筒エンジン搭載モデル)の中にあって、最もよく回るエンジンだったと記憶している。カムギア特有の「ギューン」というノイズが勇ましく、また未来的でもあった。そして、レーサーレプリカ全盛の時代にあって、フルカウルモデルでありながらレプリカとは一線を画すそのデザイン!アルミのメインフレームまできちんとカバーされ、まるで水中で生きる哺乳動物のような滑らかな面構成なのだ。このデザインにはホレた。スポーツ性能には詰めの甘さが目立ったが、今でも最も美しいモデルの1つだと信じている。

 次に買ったのは、88年式のNSR250R。買った当時、すでに6年落ちの中古車だった。なぜ、コレなのかと問われれば、「歴代NSR中、もっともキレたモデルだから」としか答えようがない。ピーキーで、下はスカスカのくせに上ではドカンとパワーが出るエンジンもそう、うまくマシンコントロールが決まれば異常に曲がるくせに、ツボを外すとドアンダーになるハンドリング然り。ホンダらしく、誰もが高性能を楽しめる優等生のNSRシリーズ中で、唯一88年式だけが「素人お断り」のハードな性格を持たされているわけだ。そういえば、当時45馬力の自主規制があったのだが、’88NSRだけは、こっそり50何馬力かの実馬力を出していたという噂もあったな。ホンダの確信犯的な作品かも知れない。

 実は、CBRに乗っていた頃はNSRが大嫌いだったのだが、実際に所有してみるとすっかり気に入ってしまった。ブーツやツナギも購入し、ミニサーキットを走ったりして初めて膝スリも覚えた。ただ、ライディングポジションが異様に窮屈で、ツーリング向きのバイクではなかったな。CBRはわずか1年で手放したが、NSRの方はなんだかんだと7年も手元にあった。

 では、オマエはNSRの方が好きなのかと言われれば、実はそうでもない。もう一度乗るなら、CBRが欲しいと思っているのだよ。速さなら、NSR。これは間違いない。パワー感も、2ストならではの圧倒的なパンチがあって、痛快。ただ・・・「味わい」が無いわけよ。CBRだって、そんなに味がある方ではない。フラットに回転が伸びていくマルチエンジンは、盛り上がりに欠けて面白くないとよく言われるくらいだ。しかし、パワーバンドに入るまでの「待ち」の間の音、振動、が私の感性にはピタリと合って、しかも適度なパワーの無さ(苦笑)が、「味わう」ことを可能にさせてくれる。NSRでは、パワーバンドを外せば『モモモモモモモ〜』と情けなく、一旦パワーバンドに入れば「パッイーンッッッ!!!」と一気にレッドまで吹け上がる怒濤の変貌。味わう余裕なんて、私には全くない。

 要するに、私は気持ちのいい「待ち」が大好きだというわけ。おとなしい回転域から、レッドゾーンに向かって、エンジンが変貌していく様子を「味わう」のが好きなのだ。だから、同じ4ストのマルチエンジンでも、大排気量車はダメ。最初からモリモリパワーが出てるから、変化を味わいにくいし、速度域がとんでもないのでそんな余裕もない。

 そういえば、私はエロビデオを見る時に、服を脱がすプロセスがないと評価が低くなるのだよ。どうせ最終的にはハダカにしちゃうにしても、そこまでの「過程」を楽しみたい・・・といえば、何となく私の好みを理解してもらえるような気もする。まぁ、それで理解してもらえるというのも、複雑な心境なのですが。

 そう考えると、例の「ターボ嫌い」の理由もはっきりしてくるというもの。あえてトルクの細いNAで「息の長い」加速を楽しむのが私のスタイルだ。グッとアクセルを踏み込んで、徐々にスピードが乗って、排気音とメカのイズが微妙に変化して、4000回転近くなると目に見えてタコメーターの針と排気音が元気になって・・・と、ここで満足。自然と、表情は微笑みに変わっている。これ以上は回さなくてもOK。「速さ」を求める場合は、逆にここから上の回転数をキープできるように努力する。エンジンに求めるものもT.P.O.で異なってくるというお話。

 さて。あなたのクルマは、街乗りでも気持ちいいですか?競争相手がいなくても楽しいですか?そして、その時のあなたは笑顔?それとも・・・?