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どんなときでもクルマ好き

2002.4.22

 前回「ドライブの友」で私の右手の近況をお伝えしたが、本日(4月22日)にいよいよ手術することが決定した。リハビリの成果が現れないのと、これからの仕事量を考えると悪化はしても回復は難しいだろうとの判断である。玉のお肌にメスを入れるのは忍びないが、これもプロの仕事人ゆえの試練と考えよう。

 手術そのものは40分程度で済むらしく、傷口も2〜3pくらいとか。開腹手術に比べたら屁みたいなもんである。翌日は出勤可だし・・・少し残念。いや待て、切開部の大きさから考えると40分は長いのか。単なる局部麻酔じゃなくて、右腕全体を麻痺させて手術するとか言ってたな。皮膚表面近くの神経を傷つけないようにするとか細かい注意事項もあるようだし、実は結構大変なのかも。ま、私としては心して「まな板の上のコイ」になるだけである。・・・ホネのない男なので「まな板の上のウナギ」だろうという突っ込みもありますが。

 なんにせよ、手術が必要なほど悪化しているということは、日常生活の様々な場面で不都合が出るということだ。前回も少し紹介したが、最近では箸で豆をつまむのも苦痛になってきた。車の運転も同様で、「派手にリヤタイヤをブレイクさせてコーナーに突っ込み、スピンすれすれでカウンターを当てつつ立ち上がる」などという芸当はちょっと無理である。もっとも、手首が痛くなくてもできないんですが。そういうアクロバティックな運転でなくとも、舵角の大きい市街地走行などはひどくこたえる。チェイサーのノーマルステアリングは径が大きいので、操舵力が小さい代わりに手の動きが大きいのだ。この機会に小径ステアリングへの交換も考えたが、操舵力が大きくなったのでは元も子もない。

 しみじみと、健康にクルマを楽しむことができるって有り難いと感じる。反面、運転に苦痛を伴う現状であっても、クルマに対する愛着が少しも減らない自分が誇らしくもある。多分、この先、怪我や病気で障害が残ったとしても、何らかの形でクルマを楽しんでいくのだろう。同様に、年老いてクルマを降りるようになったとしても、別の形でクルマとの関わりを続けていくのだろう。そんな予感がある。

 身体に障害のある人にとって、クルマという工業製品は決してフレンドリーではない。バイクもそうだが、全身の操作を必要とするからだ。両手、両足、目、耳などなど、運転中はこれらの機能が休む間はない。障害のある人たちは、クルマを改造することで運転を可能にしている。手アクセル&ブレーキ、全ての機能を片手で完全に操作できるコントロールパネル・・・もちろんATの普及も見逃せない。おかげで、多くの障害者がクルマの恩恵を受けることが可能になった。あとは、事故や災害時に車外に脱出するためのシステムをどう煮詰めていくか、という部分の今後が気になっている。

 さて、先程述べたような改造によって、クルマを趣味的に楽しむこともできる。以前、某コンビニの駐車場で人待ちをしていたときのこと。1台の70スープラが入ってきた。好きな車でもあり、田舎には珍しくスポーティーなクルマだったので、さりげなく注目していた。すると、降りてきたのは1人の男性。ただ、身長がひどく低い。骨の発育が十分でない病気だと見受けられた。脚が不自由で、歩行が難しい人も多いのだ。大学時代の同級生にもいたので、ふと思い出した。彼もクルマで通ってたっけ。体格的なことや脚の機能的なことがあるので、多少なりとも車両の改造が必要だということだった。

 ピカピカに磨かれた、黒いスープラ。大径のホイールに程良いローダウン。音量控えめなスポーツマフラー。ライトチューンのお手本みたいな、ツボを押さえた上品な仕上がり。・・・見ていると何だかうれしくなってきた。クルマって確かに便利なものだけど、それがすべてではないよね。好きな車に乗るために、乗りやすく改造する。それって、多くのクルマ好きが「俺スペシャル」を作るのと何の違いもない。クルマ好きは、やっぱり単なるクルマ好きなんだ。ただ、健常者より少しハードルが多いだけのこと。

 とっても「あたりまえ」のことなんだけどね。


追記

 よく、障害のある人を指して「障害があるのにすごい」というような言い方をしますね。ぼくはこれが好きではありません。「障害があるのに」の「のに」の部分には、障害がある人を初めから見下げるような気持ちが込められていると感じるからです。はっきり言ってしまえば、「障害者というのはもともと健常者より劣っているのが当然なんだが、ま障害者の割にはよくがんばっているな。ほめてやるよ」という傲慢なものを感じるわけです。障害者だろうが健常者だろうが、すごい人はすごいし、ろくでなしだっている。「障害者はみんな心が優しい」なんて考えるのも、実は差別心の裏返しだと気付いていますか?