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ドライブの友

2002.4.18

 どういうワケか、どうもこの1年ばかり右腕が祟られているようだ。はじめは大して仕事もしていないのに中指が腱鞘炎になった。どうにも痛くて、マウスを使うのも苦痛で、外科医に相談。「とにかく安静にすることが大切。ひどくなると手術するしかなくなるから言いつけ守ってね」と脅された。肉体的苦痛に極端に弱い私は、ひどく忠実にそれを守ったものである。それでも1ヵ月以上はかかったかな。

 で、まだその記憶も薄れぬ2002年3月初め、今度は右手首が痛み出した。はじめは筋を痛めたのかぐらいに考えていたのだが、安静にしていても治るどころかどんどん痛みが増していく。やがて、朝起きると腕を持ち上げられないほどになってしまった。とはいえ年度末で山ほど書類をまとめなくてはならない。だましだまし仕事を済ませた。

 そして4月。年度が替わっても痛みは引かない。車庫入れ時の片手運転ができない。ズボンの上げ下ろしが苦痛である。ポケットの中を探ることもできない。何より、トイレでウ○チをした後に、自分のシリを拭くのが最も痛いのである・・・と言えば、どういう動きが痛みにつながるのかわかってもらえますか?私の職場ではまだまだ「手書き」が中心なので、これは致命的なのである。

 そこで、またまた外科医に相談。例によって「こりゃ大分ひどいねー。これで症状改善しないようだったら手術ね」なんて脅された。手術はイヤなので、痛い注射にも耐えた・・・のだけど良くならない。最後の手段ということでついにリハビリを導入。まだ5日目(毎日行く)だけど、これでダメなら本当に手術だ。

 気持ち悪いのは、こうなった原因に心当たりがないということ。特別に手首を酷使したというわけではなく、怪我をした覚えもない。それに、医者によると「腱鞘炎的な症状は、女性に多く見られるものである。男性には少ないのだが・・・前の中指といい、なりやすい体質なのかな」ということだが、私だってこんなの初めてである。手首の症状以上に、私の体質自体が病的な変化を起こしているのではないかということの方が、深刻な悩みではある。

 そういう状態なので、仕事から帰っても遊びに行くこともなく、家でボーッとしているわけだ。テレビを見るのも大儀なので、何となく音楽など聴き流している。クルマの中で聴くCDなども流してみるのだが、家で聴くにはこっ恥ずかしいものもあったりして。みなさんは、クルマの中でどんな音楽を聴いていますか?

 いろんなパターンがあるだろうが、完全な「個室」と化す車内で聴く音楽は、どうしても「濃い」ものになりがちだと思う。たとえば、私。流行りものや最近の歌は、女の子でも乗せない限りは滅多に聴かない。普段は、古めのアニメソングを編集したオリジナルCD(笑)を流したりしている。べつにマニアというわけではなくて、これが私の「懐メロ」だというだけです。ふと、子どもの頃の熱狂を思い出したりして。ま、けっこう新しめのアニソンが入ってることもありますが、魔が差したということで。後は仮面ライダークウガ〜アギト〜龍騎を車内で熱唱し、先日とうとうカラオケデビューを果たしたとか色々噂はあるが、すべて事実です。

 懐かしのアイドルのCDなんてのを好む人もけっこう多いのではないだろうか。私はあんまり「アイドル歌唱法」が好きではないので、若いねーちゃんの歌はあまり聴かないのだが、最近少しだけ宗旨替えをした。いわゆる、その、ギャルゲー(恋愛シミュレーションといったほうがいいのかな)の主題歌群がかなり私のハートをつかんでいるのだ。ゲームならアクションかRPGしかやらないので、ギャルゲーそのものの批評はできないのだが、ふとしたことから試聴できるホームページを見つけ、聴いてみたところ「すごくエエがな!」だったのである。なんというか、おぢさんがスレて忘れちゃってるあの「甘酸っぱい」感じを、けっこうな歌唱力でチクチクされると・・・ああ、あの日に帰りたい。そんな感じなのだ。CD欲しくなったぜ、マジで。誤解や偏見もあろうが、「エエもんはエエ」と言っておこう。

 それはそれとして、お気に入りのテレビや映画のサントラを聴く、というのも王道だ。最近なら「頭文字D」のユーロビートものとか。ついアクセル踏んでしまいそうになる。また、クルマのドラマといえば忘れちゃいけない「ナイトライダー」。あのテーマは耳に残る。アレンジ版のCDは持っているけど、サントラは貴重らしい。ついでに「エアーウルフ」のテーマもかなり燃えるものがあるな。

 私のお薦めは、「蘇える金狼(大藪春彦原作)」のテーマ。テレビで香取慎吾がやってた方じゃなくて、故松田優作の方。できたらDVDかビデオで見た後で試して欲しい。見たことがある人なら、「優作が真っ赤なカウンタックで、大通りの中央線(センターライン上)を爆走するシーン」といえばピンと来るはず。金と権力を求めて(あくまで個人の欲望を満たすために)戦う主人公が、成功の象徴として購入したカウンタック。その運転席で、優作は不敵に笑い、やがて狂ったように笑い転げる・・・ 成功につき物の、ある種の虚しさとか、その後彼を覆う不吉な影を暗示するのかもしれない、非常に印象的なシーンである。ぜひ優作になりきってやっていただきたい。対向車から見ると不気味なので、不敵に笑うあたりでやめておくのが正解かも。

 さらにお薦めなのが、同じ松田優作でも「野獣死すべし」のテーマ。トランペット主体の何とも言えない曲で、聴けば「ああ、コレね」という人も多いだろう。この曲の雰囲気、そして主人公(原作の方ね)のイメージにひたるには、夜がいい。それも、クルマの通りがほとんど途絶える深夜でなければならない。雨でも降っていれば最高だ。ただし、クルマはいなくても街灯があって十分明るい、ある程度の規模の街じゃなければダメだ。たとえば、こんな感じ。

 夜の街。日中は道行く人々であふれていた歩道は完全に無人である。
 クルマの姿もない。目に見える範囲で、動いているのは自分だけ。
 そんな時間帯である。
 さほど強くもない雨が飽きもせずフロントガラスを濡らし、
 時折思い出したようにワイパーが水滴を払う。
 雨音以外に、音らしい音はない。
 長時間聴いているとその音にも慣れて、ほとんど無音のようにさえ感じるようになる。
 音のない世界を、急ぐでもなく、クルマを走らせている。

 と、行く手の信号が黄色に変わった。
 そこからアクセルを踏み込むような無粋なことはせず、滑らかに減速していく。
 停止線ぴったりで停まる姿は、無用なノーズダイブも見せず、猫科の動物が立ち止まるかのような優雅さである。
 停止するのとほぼ同時に、信号が赤に変わった。歩行者用信号が青になる。
 だが、横断する歩行者はいない。当然である。
 今、この瞬間を噛み締めているのは、この自分だけなのだ。
 静かに、時が過ぎていく。
 やがて、信号が青に変わった。
 クルマはまた、静かに走り始める・・・。

と、この瞬間にペットの最初の「ぷぁぷぁっぷぁぷぁぁぁーんん」という部分が重なると、もぉ!ぞくぞくするような格好良さなのである。といっても原曲を聴かないと理解してもらえないだろうなぁ。「ぷぁぷぁっぷぁぷぁぁぁーんん」じゃあね・・・とほほ。ともかく、なんとも乾いた感じの格好良さなのだ。私は一時、雨が降る度に、コレをやるために深夜隣町まで30分かけて行っていました。バカですね。

 クルマの中でヒゲ剃る人や化粧をする人、たまに鼻毛カッターを使う人(!)まで目撃されていますが、目に見えない部分でもっと恥ずかしいことをして楽しんでいる人もいるのでは?というお話でした。

松田優作氏がらみの曲は、最近では入手が難しいかもしれません。私は「YUSAKU MATSUDA CHRONICLE '73〜'89」(VPCD-81234)というCDを2年ぐらい前に購入しましたが、古いCDなので手元に届くまでにかなり時間がかかったように記憶しています。