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速いクルマ

2002.3.29

 唐突な話で恐縮だが、あの「高速道路」というヤツが苦手である。ちょくちょく「讃岐うどん遠征」のために利用するにもかかわらず、である。実際、行きは一般道でのんびりとドライブし、帰りは疲れているのと時間の節約のために、仕方なく利用しているというのが正直なところなのだ。

 何が苦手なのか、自分でもよく分からない。インターチェンジからの合流も好きではないが、地方の高速道路はガラガラなので、それなりに何とかなる。取りあえず高速に乗ってしまえばあとは走るだけ。単純に時速100qで走ればいいだけのことだ。なのに、なんだか苦手なのである。

 妙な話だが、どうも私は「スピード」が苦手であるようなのだ。もともとドンくさくて、運動神経が切れていると言われる私だから、当然なのかもしれない。が、近所のプチ峠(こういう表現がお似合い)では、短いストレートでも法定速度の△.7倍くらい出しても平気なので、これはまったく不思議な話ということになる。本格的な峠アタッカーからみれば、お話にならないペースだろうとは思う。走り屋じゃなくて「流し屋」だから、これでいいのである。それでも、少なくとも一般的な高速道路走行よりは激しい走りであることを想像していただければ、ここでは十分だ。

 そんな私が、だだっ広くて真っ直ぐな道を、わずか時速100qで走ることに苦痛を感じるのである。最初は冷や汗は出るは、ステアリングを握る手に力が入りすぎて手が痛くなるはで大変だった。その後、多少慣れはしたが。自分の運転適性に疑いをもって、一時期かなり真剣に悩んだのだよ。マジで。

 ところが最近になって、身近に同様の体質の持ち主を発見した。その人は体育の教師で、スポーツはバリバリにこなし、私とは雲泥の差。肉のゴーレムと言われてるからね、私は。話がそれそうになったが、そのスポーツマンの彼が、高速走行を大の苦手としているのである。スポーツマンでも運転が苦手という人はいるが、彼の場合は基本的な運転技術に全く問題はない。なのに、高速道路では時速80q以上出すことができないというのだから重症である。100qになると泡を吹くというが、どうやら実話らしい。

 よく言われることに、「騎馬民族はスピード感覚に優れ、農耕民族は劣る」という表現がある。騎馬民族じゃなくて狩猟民族だったかもしれない。それはともかくとして、体質としてのスピードへの適応力というのは確かに個人差があるように思う。それは状況や条件によって強く出てくるもののようにも感じる。

 となると私は典型的農耕民族(的体質)ということになる。私の場合、「他車と絡む」場合に苦痛を感じるようだ。だから、単独で峠を走るのはより高いスピードレンジでも恐怖を感じないのに、時速100qで並走する世界には腰が引けてしまうのだろう。レースでも競り合いには弱いタイプだろうなー。もっとも、危険を強く感じる状況というのは個人差が大きいとは思う。

 というわけで、私は高速道路について、「一定速度で走れるから、所要時間を読みやすい。信号が無いぶん、多少は早く着く」程度に考えることにしている。必要がなければ追い越しもせず、100qで淡々と走ると、多少は楽である。そんな私をどんどん他車が抜いていくが、それでO.K.だ。

 ここで、高速を走っていて抜かれることが多い車種を挙げてみよう。といっても、私の感覚的なもの。特に印象深いものということになる。

  3位 セルシオ
  2位 メルセデスベンツSクラス
  1位 ワゴンR、ムーヴ

・・・全国のツアラーオーナーの方々ごめんなさい。多分、日本で一番「高速道路で軽に抜かれているチェイサー」です、私のツアラーSは。でも、高速道路では本当に速いのだ。軽自動車が。

 どうも、この「速さ」というヤツは、2通りあるようだ。「クルマが速い」という場合と「ドライバーが速い」という場合。クルマが速いというのは純粋に性能的なことを指すが、現代のクルマで極端に遅いものはあまりないと思う。問題は、「速いドライバー」だ。これも「遅い車でも速く走らせる能力を持ったドライバー」と「いつでもどこでも速く走っちゃうドライバー」に分けられると思う。前者はレーシングドライバー向きかもしれない。マシンの戦力差を技術でカバーする能力となりうるからだ。後者は・・・意外と身近にいませんか?このタイプ。

 1つ例を挙げよう。T口さんはとってもおっとりした優しい女性。私の仕事上の先輩で、いつもお世話になっていた。ある日、一緒に出張に行くことになり、T口さんのクルマに同乗していくことになった。私、T口さんともう1人が一緒だったので、一番下っ端の私は3ドアハッチバックの後席に1人陣取った。発進・・・クルマは住宅街の細い路地を走り出した。その直後!対向車とのすれ違いもできず、脇道が多くて死角だらけの道を時速80qで爆走するT口さん!私なら30q〜せいぜい40q止まりの危険な生活道である。

 異常な速度で窓の外を流れていく景色に、気が遠くなりそうな私。逃げ場のない後席なのでなおさらだ。もしかしてT口さんって、ハンドル握ると性格が変わるタイプだったのか!?と恐る恐るルームミラーを見ると、そこにはいつもの菩薩のような微笑を浮かべたT口さんの姿が。どうやらキレてはいないようで、安心安心・・・って、普通の状態でこの運転かい!

 こんな人です。身近にいませんか?そういえば、ルパン3世も大してパワフルなクルマに乗っていなくても、ものすごい運転で逃げまくっている。そうか、銭形警部から逃げてる時のルパン一味の車内ってあんな感じなのか、と妙に納得。ルパンが相手なら、チェイサーで負けても許され・・・ないのかな、やっぱり。それはともかく、このタイプの人(身近な人を思い浮かべてみてくださいな)に、本当に速いクルマに乗ってもらったらどうなるだろうか?

 「こんなの危なくて乗れない」なんて言って、かえって遅くなることもあるみたい。だからさ・・・危ないのは速いクルマじゃなくて、あなたの運転の方なんだってば!