金がない。とにかく金がないのである。世の中不景気なのはわかるが、それにしても金がない。
そんなわけで、自分の趣味にばかり湯水のように金を使うというわけにはいかなくなる。モディファイするにしろ、「取りあえず試してみるか」で財布を開くことはできない。じっくり考えて、費用対効果や自分の方向性を基に検討を加えることになる。独身貴族の私でさえそうなのだから、世の妻帯者の方々はさらに難しい状況にあるのではないだろうか。この前、公立の保育園の費用を聞いて、目ン玉飛び出しそうになった私は、心底そう思う。私の場合、独身貴族というよりは独身山賊のほうがふさわしいという話もありますが。
どうでもいいですね、そんなこたぁ。
私の場合、まずマフラーの交換からモディファイがスタートした。1番の理由は「1度マフラー交換っちゅうもんをしてみたかった」というだけのことである。それまでアフターのパーツがないクルマに乗っていたので、交換できるというだけでうれしかったものだ。そのころはまだ家も建ててなくて、ほどほど羽振りも良かったということもある。飲酒も喫煙もしないからね、私は。パチンコも、風俗にも行かない。
で、次にホイールを換えた。これも色々と理屈を語ることはできるのだが、早い話が「チェイサーを買ったら、このホイールにしよう」というのがあっただけの話である。30万とかは平気でするものなので、今考えると「勢い」だよなぁ。
純正のエアロも最初はフロントだけだったが、いつの間にかフル装備になっていた。ホイールより前だったか後だったか。ま、その辺りの時期、というぐらいの記憶しかない。外観に影響のあるパーツはここまでで購入が止まる。
その次はスタビライザーだったと思う。これはチェイサー特有のロールの大きさが気になって仕方がなかったから。目に見えないパーツだが、満足度は大きかった。私が走り回っているワインディングは中低速コーナーが多く、あまりハードな脚は必要ない。単にロールだけを押さえることができれば、数段気持ちの良い走りができるのである。「速い」じゃなくて「気持ちいい」走りであることがミソね。でも、前後で5万円は高いような気もする。
多少なりともコーナリングスピードが上がれば、横Gも大きくなる。腰痛対策も兼ねてスポーツシートを導入した。赤とかにすればグッと派手だったのだが、何となく黒にした。赤は色褪せが心配だったのと、汚れが目立ちそうだったから、というビンボ臭い理由もある。そんなわけで、運転中に対向車から見ても、シートが変わっているのはわからないだろう。多分。
次は、トムスのフロントサス・メンバーブレース。ボディ下面に取り付ける補強パーツである。これはTRDをはじめとする各社から類似のものが出ているので、インターネットでリサーチしてみた。すると、トムスのものはずいぶんと評判がいいみたい。ただ、その効果を評価する声がある反面、「見えない部分のパーツなのが不満(見た目でアピールできないのが残念)」という声も結構多いようだ。
そんなこんなで、実際の取り付け。早速ワインディングを走ってみる。「がびーん!」いいよ、これ。1つ部品付けただけでこれなら、他の補強関係付けたら、どうなってしまうのか私のチェイサー!?というぐらい、イイのだよ。
クルマを脇に停めて、横から見てみる。地面に這いつくばってやっとピンク色のメンバーブレースが確認できる。ボンネットを開けると、ゴチャゴチャと詰め込まれた機器の間から、ちらっと見えるような見えないような・・・。
外から見えんところがエエな・・・。
考えてドキリとした。いや、これはマズいぞ、オレよ。外観のモディファイも立派なチューン・・・というか、モディファイを語る時には外せないポイントだ。なのに、今オレの心に聞こえた声は一体何なんだ。
いっそのこと見えない部分だけ補強して、タワーバーは無しでいくのも面白いな・・・。
いや、だからそれは普通じゃないって。一応オレだってTRDのフロントバンパーが欲しいという気持ちはあるんだぜ。大型のリヤスポはポリシーに合わんが、外観だって少しはアピールしたいんだよぉ。
ほほぅ、そうかい?じゃあ、なぜ大径ホイールを履かせない?ボルクのホイールを買う金があれば、買えないわけではあるまい。それになぜ、ローダウンしない?実用に問題ない範囲で落とす方法を、知らないわけじゃないだろう?ビルシュタインのショックを組もうとか、車高調で調節してノーマル車高をキープしようとか、小細工をたくらんでやがるな。
う、うぐぐ。それは・・・。
本当はお前、目立ちたくないんだろう?で、色々と理屈をつけてるだけなんだよ。なのに、見えないところできっちり仕上がったクルマにしようなんて考えてるだろう?何でもないサラリーマンが、スーツの下にボディビルダーのような肉体を持っている・・・そんなクルマにしたいんだろう?
わかるようで、わからんぞ。さすがは私の心の声。
じゃあ、こういう例えはどうだ。
ど、どんな例えだよ。
スーツの下に女物の下着をつけてるおっさん。
ああ!なんかすごくイヤだけど、よくわかるぞ。その例え。ピンク色をしたトムスのパーツは、女物の下着だったのか!?
くっくっくっ・・・(笑い)。お前みたいなヤツをなんていうか教えてやろうか?
な、なんだよ。
・・・変態(ボソッ)
ああああああ!オレは変態だったのかあああああ!?
・・・・とまあ、こんなことがあったのである。思えばあれが「クルマ変態」を自覚した出来事でしたね。ちなみに、私には女装の趣味も下着ドロの癖もないですからね。覗きも盗聴も、露出趣味もありません。女子高生のソックスや上履きを集める趣味もありません。説得力がない?
それはともかく。人によってクルマの愛し方は様々だ。知り合いに、乗り継ぐクルマがすべて真っ赤のボディカラーという人がいる。服や持ち物もすべて赤を基調としたもの。これもある種、フェチ入っているかも。異常に清潔で、ボディ下やフェンダーの内側までドロひとつついていない人。月1回はシート外して車内の丸洗いをする人。これも普通じゃない。これのバリエーションで、液モノの劣化や汚れに異常に敏感な人っていますね。
また、レーシングカー並のボディと脚に、フルバケに5点式シートベルト。路面の段差を越えるたびに背骨がきしみ、ベルトがタマに食い込む。低速スカスカのハイチューンド・エンジンとトリプルプレートのクラッチは、正に苦行。「やはり公道を走るのはツラいな」・・・って、かなりマゾヒスティックでっせ、ダンナ。でも危ないからブレーキパッドはストリート用に換えてね。
苦行、といえば。ヤンキー系やVIP系の人たちも結構苦労が多いようだ。ヒョコヒョコ跳ねる超シャコタンは普通に走っているだけでムチ打ちになりそうだし、あのマフラーは難聴になりそう。おまけに掟のように大音量で低音の聞いた音楽かけてるから・・・妊婦さんは乗っちゃだめよ。正しいドライビングポジションだと格好つかないのか、異常にふんぞり返ったポジションだし。前見える?そういえば以前、マンホールのフタのところで亀の子状態になったヤツを見たことがあるな。
そんな風に考えていくと・・・なんだ、みんな変態じゃん。好きなことをする時は、普段気が付かないクセがでるもの。それが本当に好きなもので、心からのめり込めるものなら、なおさらだ。きれいだと思っていた彼女が、マニキュア塗っているときの横顔を見てごらん。すごい顔で塗ってるかもしれないよ。でも、それだけ真剣だということで、許してあげて欲しい。そしたら、彼女もあなたのクルマ変態を許してくれる・・・かもしれない。何はともあれ、クルマ変態万歳!!
ところで、私が考える「日常に見られるクルマ変態的光景」ナンバー1とは。それは、「新車の時から手放すまで、シートにかかってるビニールのカバーを外さない人たち」です。これって、ある意味「変態的クルマいじり」以上に変態かも・・・。