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トヨタは80点主義か

2002.1.3

 トヨタ車を2台乗り継いだ身でありながら言ってしまうが、別にトヨタ車が好きだというわけではない。単にチェイサーが好きなだけである。他にもJZA70のスープラが良かったり、最近になってMR−2も良く思えたり・・・というのはあるが、どれもその車種が好きなだけである。身の回りのクルマ好きの言葉を聞くと、「ホンダの車が好き」というのはあっても、「トヨタだから好き」というのは、経験がない。

 とはいえ、ある特定のメーカーや車種に特別な思い入れが無い限り、トヨタ車を購入する人が多いのもまた事実である。その品質感や買い得感、商品としての洗練度がユーザーのニーズに合っているのだろう。

 反面、幅広い客層を狙えば、どうしても八方美人的なクルマづくりになりがちだ。言葉を換えれば、「個性がない」「中途半端」「作り手の主張が見えない」ということになる。残念ながら、これらの言葉は多くのトヨタ車に感じることである。これを評して「トヨタの80点主義」と悪口をいる人もいたように思う。

 すべてのユーザーにとっても80点(まずまず満足)のクルマづくりをするということは、決して100点のクルマは生まれないということだ。ここでいう100点とは、「すべてのユーザーにとって」ということではない。90点ならできるかもしれないが、最後に満点を与える決め手は、ユーザーによって異なるからだ。好みとか趣味とか、あるいはテイストというようなものだ。

 日産のスカイラインやZを思い出してほしい。あれも決して100点のクルマではなかった。80点にも届いていない部分もあっただろう。しかし、一部のコアなファンの心をつかみ、やがて伝説に彩られたクルマになった。彼らにとっては100点満点だったということだ。後年の日産の迷走の一因が、コアなファンの人気の上にアグラをかいたことにある・・・とも思え、少々皮肉なのだが。

 反対にトヨタは、コアなファンを獲得する方向に走らなかった。結果、会社そのものは発展したが、人々の記憶に残るクルマは生まれなかった。異論もあると思うけど、トヨタの名車といえば今でも2000GTやヨタ8ぐらいしか出ないでしょ?だから、トヨタの80点主義という批判は、ある意味正解だと思う。まあ、経営戦略上、正しいと言わざるを得ないかな。

 では、80点だからダメなのかと言われれば、そんなことはない。むしろ、残りの20%は個人の好みで味付けをするための「自由度」と前向きにとらえたい。個性の強いクルマであれば、その個性に合わせた「そのクルマならではの楽しみ方」というものがある程度限られてくる。コアなファンはそこに惹かれ、一般ユーザーはそこを敬遠する。だが、最初の個性が弱ければ、どのようにでも味付けが可能だ。「個性が弱い=完成度が低い」ということにはならない。

 例えるなら、個性の強いクルマを選ぶということは、吊しのスーツを買うことに似ている。対して、個性の弱いクルマをベースに自分で味付けするのは、セミオーダーでスーツを作ることに近いかもしれない。いや、金額じゃなくて。あるいは、白身の魚はクセがなくて、色々な料理に使えるとか・・・。どうも、例えが適切でないような気もするな。ともかく、80点だからこその自由度を大切にしたい、ということが言いたいわけだ。

 このホームページを立ち上げてから、色々なチェイサーオーナーの方からメールをいただいたり、リンクを張らせていただいたりした。それぞれのページを拝見して感じることは、「同じ車種なのに、あるいは同じグレードなのに、こんなにいろんな楽しみ方があるなんて」ということである。ハードあり、ライトあり、個性派からさりげない派まで、まさに千差万別。なぜか、チェイサーというベースを太い幹にして、無数の枝を広げる大木をイメージしてしまった。この私も、その枝の一本にぶら下がっている一枚の葉っぱにすぎない。それぞれのテイストで枝分かれしているが、幹は1つである。しみじみと、「このクルマを買ってよかったな」と感じる今日この頃なのである。

 ところで、トヨタといえば、質感の高さや内装の上質感(あくまで「感」だったりするが)で、「値段の割には上等なクルマ」を作るのが得意だ。が、ブレーキが弱かったり、ボディの剛性が低かったり、足が今ひとつだったり、シートが良くなかったり・・・商品としては80点でもいいんだけど、本当にお金をかけて100点にしておくべきところがあるんじゃないかな?目に見えにくい部分でね。