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「濃い」楽しみ

 日本のクルマ好きを見ると、楽しみ方・遊び方がごくごく限られているように感じるのである。

 旧車愛好家が昔から「濃い」のはいいとしても、比較的新しいクルマを愛好する人は、えらくあっさりした楽しみ方をする人が多い。ノーマルにこだわって、美しさを長く保つために舐めるように磨き倒す人。ひたすら速さを求めて改造を重ねる人。美しいフォルムにこだわって、エアロやスムージングに凝る人。あるいは、車高の低さや排気音の凶悪さにこだわる人(笑)。多くのクルマ好きの遊びが、クルマそれ自体で完結しているように感じられるのだ。まあ、ストイックにクルマを仕上げ、サーキット走行に熱中するのも、別の意味で「濃い」とは思うのだけどね。

 私は昔から「悪趣味」だと言われることが多い。なので、少しだけそのテイストを加えた提案をしてみよう。

 例えば、モディファイを加える際に、機能面(見た目も大切な機能です)だけでなく、ストーリー性を織り込んでみる。コンセプトを決めて、全体計画を練るのだ。

 現代車のクラシカルモディファイは、旧車ファンには「邪道だ」と言われることがあるが、あえてコテコテに造り込んでみる。やるからにはディテールにこだわって、徹底的にやる。ブリティッシュスポーツの雰囲気をもつ初代ロードスターをベースに、「英車以上に英車らしい」と言わせてしまうぐらいの完成度を求める。だけど、見た人がつい笑ってしまうような「ハズシ」のポイントも欲しい。「ホントはエランが欲しいんだろうなー」と思わせてしまうようでは失敗。あくまで「『ロードスター』を楽しむ」という姿勢で取り組むこと。

 また、あえて快適装備を全部外してしまうというのは?あえてホイールをインチダウンするというのは?ダート仕様のチェイサーというのはどうだろう。・・・これは、ちょっとふざけすぎか。

 ともかく、いわゆる「チックチューン」は数多いが、あえて時代や車種の違うものにイメージのエッセンスだけを重ねてみるのだ。私とは指向が違うかもしれないが、漫画家の田中むねよし氏のセンスが大好きだ。MR−Sのモディファイ案にアルピーヌA110調のがあるのを見て、頭がクラクラした。面白い。どうせやるならディテールは細部まで詰めてやりたいな。

 また、大藪晴彦氏のクライムノベル(あえてハードボイルドとは呼ばない)が好きな方なら、主人公が好みそうな方向をイメージして仕上げていくのも面白い。氏の小説の主人公たちなら、外観はなるべく地味な印象で、中身は驚くほど強力なクルマを好むだろう。そういうクルマが「犯行」には使いやすい。・・・って、本当に犯行に及ばないようにね。これなどは、まさにストーリー性のある楽しみ方になると思う。ついでに体を鍛えたり、食べ物の好みも変わってきたりして。カローラオーナーズクラブのみなさん、どうですか?バリバリのスポーツカーオーナーには決して味わうことのできない、「濃い」楽しみだと思いませんか?

 えらく話が脱線してしまったが、要するに正統派(この表現には違和感があるが)の楽しみ方以外にも、いろんな遊び方があるということだ。周囲に迷惑をかけたり危険だったりでは話にならないが、せっかくの趣味の世界なのだから、いろいろやってみようと言いたいわけ。

 オートモービリア=いわゆる自動車雑貨の世界も奥が深い。ミニチュアに始まり、絵画、カタログ等の資料、書籍、代々のエンブレムやバッジ・・・挙げていけばキリがないくらいだ。この分野では、日本車は寂しい。根強い人気のある特定車種を除き、ミニカー化されるのはRV車ばかり。我がチェイサーも、一時はスポーツセダンの代表格のように扱われた割には、待遇が悪い。やはり、国内専用モデルでは、ミニカー化しても利益が限られてしまうからか。

 特に、JZX100が最後のチェイサーとなったというのに、トヨタが別れを惜しむ様子がないのが寂しい。もちろん新開発の車種を売り込むのがメーカーとしての本道だろうが、長年親しまれてきた車種ではないか。「初代から最終型までのメモリアルセット」なんてタイトルをつけて、1/43のミニカーセットを作ってくれたりしたら・・・。商品としては採算の取れるものではないかもしれないが、メーカーが愛情を示してくれると、オーナーとしても愛着が湧くものなのだ。まあ、日本車の車名はなくなったり復活したりと、コロコロ変わるから仕方ないのかな?

 名車だからグッズが多いというのも当たり前。だが、メーカーやオーナーが「演出」を盛り上げていくことで、「記憶に残るクルマ」にしていくことも、また可能だと考える。各地にあるチェイサーのオーナーズクラブの方々はどのようにお考えなのだろうか。ユーノス500オーナーズクラブの働きかけで作られたという、1/43モデルを見ながらそんなことを考えてしまった。オーナーの絶対数では負けていないと思うのだが、「濃さ」が違うのかな・・・。

 という私の考えも、クルマ遊びの1例に過ぎない。こうしてホームページをつくるのも同じ。「クルマで遊ぶ」というのは「クルマ『だけ』で遊ぶ」のとは違う。もっともっと、自由な発想で楽しみたいね。