ゲームクリエイター烈伝 「デジタルモンスターを作った男達」 |
(※この物語は全て一部の事実に基づくフィクションであり、実際の人物・団体・事件とは全く関わりありませんし、ゲームクリエイター列伝のパロディにする予定だったのに、いざ出来上がったのを見てみると、「全然似てねぇよ!」と突っ込みを受けること間違いなしの内容になりました。 ご注意ください)
星幸秀(32)バンダイ開発第三部・企画担当は、目の前に積み重なったダンボールを前に苦悩していた…。
「これが、かつて日本を牛耳ったと言われる「たまごっち」の不良在庫……」
それは、一時期、莫大な人気と、入手困難さが入り混じって社会現象となったバンダイの商品・「たまごっち」だった。
「何を他人事みたいに言ってるんですか星さん」
そこに現れたのは、同じく第三部・広報担当のドラゴン鈴木(ドラゴンボールのコスプレ中)である。
「星さんが、「たまごっち」のような携帯ペットに「ポケットモンスター」のような成長・戦闘の機能を搭載すれば、バカ売れ間違いなしという触れ込みで開発した「デジタルモンスター」も、大量に在庫が残ってますよ。」
「バカ、あれは、これから売れるんだよ!」
「何を言ってるんですか、いい加減目を覚ましてください!
とっとと消費者金融から金借りて会社の損益に還元するか、会社を辞めるかしてくださいよ。
スクウェアのヒゲ扱いされますよ!」
「あれ… 今、何年なの? まだ20世紀の話でしょ…? まだ坂口さんが映画なんて…。」
「もはや、たまごっちすら売れないのに、そんなパチ物なんか、もう売れませんって…。」
「ま、待てって、これのどこがパチものなんだよ!」
「誰がどう見たって、たまごっち+ポケットモンスターなんだから! いまどきの小学生だって騙されませんよ!」
トボトボと帰宅する第三部の星。
目の前に見える消費者金融の看板を見て足が止まる------
「俺のバンダイ魂もここまでか……」
と、その目の前を通りかかる帰宅途中の小学生達……。 ふと、そのランドセルについているキーホルダーに目が止まった。
「!!」
それは紛れも無く、星の開発した「デジタルモンスター」
「…………………………………………………。
そうか、忘れていたよ…。 いくら在庫が残っているとしても、遊んでいる小学生がいることは間違いないんだ……。 俺があきらめてどうする! 今、デジタルモンスターを遊んでいる子供達がどれだけ悲しむか分からないのか!!」
と、そのとき、星企画担当は、恐るべき会話を耳にした。
「あ、おい! こいつランドセルにデジモンつけてるぜ!!」
「あ、外すの忘れてた!!」
「デジモンなんてダッセーよな!」
「ポケモンの方が面白いよな」
「家返ってポケモンやろーぜ!」
小学生はランドセルからデジモンを毟り取ると、それを蹴り飛ばした。
「ちくしょう……ポケモンなんて…ポケモンなんてぇ…」
頑張れ星企画担当! BANDAI!
居酒屋で一人酒を煽る星。
丁度そのとき、テレビではポケットモンスターのアニメが放送されていた。
「ちくしょう…なにがパチモンだ… かたやポケモンはゲームが大ヒット、そしてアニメ化…。 発売される数々のヒット商品… かたやデジモンは不良在庫に押しつぶされそうな毎日…
へっ。 ポケモンのパチモンか…… うまこと言いやがるぜ!
………ポケモンのパチモン…… ! そうか! そうだったのか!!
デジモンを生かす道が見えた!」
次の日、ドラゴン鈴木をはじめとする第3部のメンバーが開発室に集められた…。
「ついに、辞める気になったんですね、星さん」
「この企画書を見てくれ!」
「これは…… デジタルモンスターTVゲーム化!? あんた何を言ってるんだ!? デジモンにあれだけ在庫が残っているからって…」
「デジタルモンスターが何故、あれほど在庫を抱えたのか… それがわかるのか? 鈴木!」
「いえ、それは、作りすぎたから……」
「いや、違うな。 ベースが「たまごっち」だったからだ!」
「はぁ!?」
「「たまごっち」+「ポケットモンスター」と呼ばれた「デジタルモンスター」
今度はポケモンをベースに考えるんだよ!」
「なんだって!」
「たまごっちブームの去った今、たまごっちの影を追っていては駄目なんだ! 追うのはポケットモンスター!
デジタルモンスターを育てる主人公を子供にし、育てたデジモン同士を闘わせるゲームにするんだ!」
「しかし、ポケットモンスターはすでに確立されたゲーム…。 今更、追ったところで追いつけるとは…」
「追いつけなくてもいい!」
「!?」
「追いつけないのは百も承知だ! 我々は数で勝負する!
今、ポケットモンスターは何作発売されている?」
「えっと… 赤・緑・青・黄色に64スタジアム…」
「だが、発売されているのはどれも任天堂機に限られている…」
「そりゃ任天堂から発売されているソフトですし。」
「我々にそんな制約は無い! セガサターン、プレイステーション、そして、バンダイ自らが発売するワンダースワン、様々な機種で発売し、更に、ジャンルも育成・アドベンチャー・RPGと様々なジャンルで発売する!
我々は数で勝負するんだ!」
「そうだったか! 所詮2番煎じと言われ、売上が少なかろうが、短期間で複数の作品を作り上げれば問題ない!」
「更に、アニメ化もする!」
「!? それは無謀です! いくら何でも、あのポケモンの人気ぶりにはかないませんよ…」
「それはどうかな? よく考えてみろ! あのアニメのメインキャラクターといえば、「サトシという小僧」に、「ちびっこの女の子1人」、「声がマサルさんの細目男」の3人くらいしかいない!
後は、モンスターばかりだ!
だが、アニメ版デジタルモンスター(=デジモンアドベンチャー)では……
キャラクターを豊富に登場させる! 更にメインキャラクターたちを全員子供にする!」
「そうか! 一人一人の個性が弱くても、数で勝負すればそれを埋めることが出来るんだ!」
「更に、
・お兄ちゃん大好き!という妹キャラ
・母性本能をくすぐる子供キャラ
・普段はかっこいいキャラのクセに、弟のことになると大暴走するブラコン兄さん!
・お嬢様キャラ
・小学生にしてオタクのクセに、可愛い顔のキャラ
・主人公の声はキテレツ!
という強力ラインナップで、全てのアニメファン層から支持を受ける!」
「そ、そうか!
我々は、ゲーム会社ということで、すっかりアニメの人気の本質を忘れていた……。」
「デジモンアドベンチャーのアニメ放送開始から一月がたった…。 しかし、本当に人気が出ているんだろうか……。 この視聴率じゃ…とてもじゃないが1年程で打ち切りになるに違いない………………」
バンダイの3階の企画会議室で今日も悩む星。 そこに鈴木が駆けつけてきた……
「た、大変です! 星さん! 窓の外を見てください!」
「ん? どうした……?
!!!!」
バンダイの玄関に出来上がっていたのは、数百人はいる少年少女。
「!! まさか、デジモンをパクリと見破った少年少女たちが、バンダイに抗議に来たのか…。 俺も終わりだな…・」
絶望に打ちしがれる星。 その肩を鈴木が叩く。
「何を言ってるんですか星さん! よく聞いてくださいよ!」
「太一くん可愛いーっ! もっとテレビに映してーっ!」
「ヒカリ萌えーーっ!」
「ヤマト×タケルーーーっ」
「!! そうか! アニメの余りの面白さに暴走してしまった少年少女たちがバンダイに駆け寄ったのか! よく見れば、少年少女といっても、10代半ば〜20代前半と言ったところ…。
良かった…。 ついにデジモンが社会(ごく一部)に受け入れられたんだ…」
星幸秀、32歳の男泣きであった…。
こうして生まれたTVゲーム・デジモンは今でもシリーズを続発し、更に、アニメ・デジモンは、今でも大人気放送中。
ポケットモンスターカードゲームが出れば、デジタルモンスターカードゲームを発売し、
ポケモンが映画化されれば、デジモンもアニメ映画化された。
だが、彼らの意欲は消えることは無い。 次なるヒット商品の開発を目指し、ポケモンの動向を伺っている――――――。
次回のゲームクリエイター烈伝は「メダロットを創った男達」です。 乞うご期待!!!