独断的漫画批評の部屋
少年探偵Q
原作 円陣
画 しんがぎん
週刊少年ジャンプ平成10年11号〜平成10年26号にて連載
全2巻
入手難易度:☆☆
週刊で読んでた頃には、たいして面白くなかったように思えたのですが、改めてコミックスで読み起こしたらこの漫画の真の面白さが分かりました。
金田一少年の事件簿や名探偵コナンの人気につられて飛び出されたジャンプ名探偵シリーズ第3弾。(ちなみに第1弾は「あやつり左近」で第2弾が「心理捜査官草薙葵」)
シリアスな推理コミックスかと思いきや、これがビックリ、まるでギャグ漫画(自分にとっては)。こんなに面白いギャグ漫画があったら「ぼくは少年探偵ダン」も人気がでないハズです。
いきなり、「ギャグ漫画」という暴言(?)をはいてしまいましたが、実際のストーリーは、
小学生俳優の主人公・久太が、自分のドラマの中で演じている名探偵の役に「ゴージャスアイリン(古い…)」みたく、なりきって事件を解決していくという、こうやって書いてると何を言っているのかよく分からない内容です。
見もフタもなく露見してしまえば、小学生の名探偵が事件を解決していくストーリー。
一見はごく普通の推理漫画のように見えます。作画もそれなりに評判の高かった「しんがぎん」氏が行っているので、仕上がりは上々です。
しかし・・・
これが、驚くほどツッコミどころが多いのです。いや、ストーリーからトリックから推理から…。
例えば、FILE2より。
主人公・久太は絵の裏を見て犯人に確信を持ちます。もちろん、読者はその絵の裏の内容を見ることは出来ません。
そして、謎解きの時にその絵の裏をべらっと見せて久太が言った言葉は・・・
「ほら、これを見て。犯人の名前が書いてある。」
んなもん、読者がわかるわけないって! それに、そんな証拠は反則じゃないのか!?
これで読者に向けた「真相当て」なんてやったら、苦情が殺到するぞ!
いや、してなくても苦情が殺到してそうだけど。
更に、FILE2。
犯人が犯行を行うシーンが出るのですが、
・・・後ろ姿が、もろに容疑者の一人。見てすぐ分かる。
これが引っ掛けかと思ったら、その人がホントに人を殺してた!!
少しは推理しようとする読者に配慮しろよ!
つーか、推理させる気が無いのか!?
また、FILE3。
木の枝に体が貫かれた斬殺死体が発見されるのですが、その斬殺死体のかかれたページをぺラッとめくって見ると、「あはははは。」と笑いの通う和やかなムード。
って、そこはまだ死体のある現場だろ!!
まだいくぞFILE3。
ヒロインが檻に閉じ込められてしまうのですが、どう見ても柵の隙間から体が抜け出せる!!
更に、FILE3連発!!
「この扉を開けるのに2時間もかかって・・・」
って開けるのに2時間もかかる扉って何なんだ!?
「犯人はその間に犯行を行ったんだ!!」と久太も推理する (実際にそう) けど、犯人も30分で開けれたらどうすんだよ!
それに、その間、犯人が人の目につかれず長い距離を移動し、短い時間で犯行を行った時に使ったアリバイトリックが「隠し通路」って、お粗末すぎませんか!?
しかも、壁に取り付けられているハシゴをみて推理する久太が一言。
「一見、拷問道具に見えるけど・・・」
って、見えねえよ!
そして、FILE4。
前編・後編の2週構成になっていて、前編の終わりに「A」「B」「C」「D」の容疑者の名前が挙がります。普通なら、前編でトリックを出し、読者が後編までの1週間で推理するのがセオリーなのですが、この漫画は別。
だって、推理のヒントが後編になってやっと出てくるくらい。
ホントに読者に推理させる気は無いようです。
まだいくぞ、FILE4!!
警察がビデオテープを探してポップコーン売り場を調べるのはいいけど、どうして出来あがってるポップコーンの中を調べないんだ!!
どこをどう調査すれば見落とすんだ!!
「人気者で行こう」の「100万円を探せ」なら1分で発見されるぞ!!
最後のFILE5もすごい。
もう終わりなのに新キャラを増やしてどうすんだ!?
―――しかし一番すごいのは単行本を買った人だけが読めるおまけ。
「これが、少年探偵Qの原作だ!」といって紹介してますが、これは「こんな原作だからこんな内容になったんだ!! 作画のせいじゃない!!」 と言ってるようにしか思えない!!
しかも、おまけの書き下ろし漫画で原作を読んだしんがぎんが言っているセリフ。
「いくらなんでもこれはムリがあるのでは・・・」
これがこの漫画の全てを物語っていると思います。
ちなみに、とある古本屋ではこの漫画に「オススメ」シールが貼ってありました。
うん。よく分かってる。
しかし、そう考えると「しんがぎん」も可哀想だね。
とにかく、もう少し長くやっても良かったと思います。いや、確かに普通の読者はつまらないと思うだろうけど、自分はもっと読みたかったです。そして、もっとツッコミをいれたかった・・・。
まだ、完結してから日が浅いので見つけるのは容易でしょう。探して読んでみてはいかが?
たまにはこんなギャグ漫画も良いでしょ。
さあ、いますぐ、本屋へGO!