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独断的漫画批評の部屋

タイムウォーカー零
飛鷹 ゆうき

週刊少年ジャンプ平成3年26号〜平成3年48号にて連載
週刊少年ジャンプ平成2年48号で読みきり
全4巻

入手難易度:☆☆☆

 こんなに面白い漫画が何故こんなに短くなったんだ!?
 と、思わずにはいられない作品です。
 ただ、早く終わってしまった分、その面白さは倍増しましたが・・・。


 この漫画は、読みきりで人気が出て、連載の日の目を見ることになったという週刊少年ジャンプの漫画の王道を見事に歩んだ漫画です。タイトルは、「タイムウォーカーゼロ」と読みます。

 タイムウォーカーのタイトル通り、主人公・刹那 零(せつな れい)は時間と空間を自在に飛び越える能力を持っています。この手のタイムワープネタはドラえもんの時代からお馴染みなのですが、この漫画はその設定を生かし、1話完結で毎回心温まるストーリーを展開していきます。某漫画風にいえば、をテーマにした漫画ですか。
 ストーリーの具体的な流れは、主人公・零が、自分の能力を利用して、時間をまたにかけた仕事を高額な報酬でこなしていくうちに、それが心温まる結末を迎えるというパターンです。

 ・・・少なくとも最初の方は。

 というのも、この漫画、連載までの歩みがジャンプ漫画の王道なら、連載自体もジャンプの王道です。最初は1話完結に始まり、途中から「強大な悪の登場する」長編に移行していくのです。
 必殺技らしい必殺技も持っていない (タイムワープとテレポーテーションしか使えない) 主人公なのにどうやって戦うんだ!? 
 と、思っていたら、しっかり「
プラナ放出」とかいう、かめはめ波系エネルギー波を身につけます。

 また長編になってスケールが大幅アップ。1話完結の時代は、「私が若い頃に犯してしまった過ちを過去に戻って、防いで欲しい」とか、「XXXX年に紛失したとされる掛け軸を取ってきてくれ」とか、ささやかな内容だったのですが、この長編になると、時間移動を良いことに、ついに実際の歴史へと手を伸ばしていきます。例えば、この漫画では、天草四郎は生きてることになってます。もちろん、零の活躍です。ドラえもんならタイムパトロールに捕まってます
 長編の主な内容は、歴史の中で失われた「漏尽珠」というアイテム(全五種)を、見つけてきて欲しいというもの。その中で、同じく「漏尽珠」を狙うライバルや悪役が出てきて、努力・友情・勝利の展開になります。
 そんでもって、1個目の漏尽珠の持ち主が天草四郎なのです。
 そして、2個目を持ってるのは柳生十兵衛。しかも、十兵衛は零の仲間になってその剣技を披露してくれます。ちなみに、この十兵衛、強すぎです。前述の敵のエネルギー波を剣で受け止めてくれるほどの剣の達人。

 ちなみに、3個目から、確実に最終回へと加速していきます。零の出生の秘密、敵の正体などが、次々と明らかに・・・。

 しかも今まであった設定がコロコロ変わっていきます。零と出来ちゃいそうだったヒロインは実は妹で、それが明らかになるやいなや、二人の中は冷めていき、妹は別の男と出来ちゃうし・・・。5個の漏尽珠のうち2個は、「漏尽珠を探してくれ」と依頼してきた爺さんが、最初から持っていたという、えらいオチが待ってるし・・・。
 連載打ちきりが近くなったから、仕方なくやったんでしょうが、もうちょっと長く連載してすっきりさせた方が良かったと思います。
 ―――これはこれで面白いですけど。(ゴメンナサイ。ネタバレして・・・)

 まあ、終わりがごちゃごちゃした代わりに、「真の戦いはこれからだ!」とか「第1部完!」という、後を引く最終回は避けられたので、後味は良いです。
 王道を歩んだ短期連載漫画でありながら、これくらい後味のよい作品も珍しいでしょう。それだけでも読む価値あり!

 ぜひとも、次回からは、この手のネタは、「能力者がいっぱい集まってきて、大会をやるようなストーリーにして長続きさせる王道パターン」にまで持っていってもらいたいものです。

 ところで、この漫画の作者は、今、どうなさっているんでしょうか。
 つい先日までかなりマイナーな光文社のゲーム4コマ漫画で仕事をなさっていたところまでは知っているのですが・・・。


 とにかく、早過ぎる命でした。みなさんも買って読んでみてください。大きな古本屋に行けば、結構簡単に見つかるはず。しかも、この漫画は、本誌では22話しか連載されていなかったのに、読みきりや書き下ろしをふんだんに散りばめて大幅水増し全4巻です。これまた、大変お買い得!!
 さあ、いますぐ、本屋へGO!


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