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武力 〜BURIKI ONE〜
World Grapple Tournament '99 in Tokyo
ハイパーネオジオ64:135,450円

 濃い。とにかく濃い。
 旧SNKが末期に繰り出した、男臭さ爆発の3D格闘ゲーム。
 登場キャラクターはボスを含めて全部で12人だが、女性キャラは一人も存在しない。
 1999年に開催された異種格闘技大会という設定で、実在の企業などが大会スポンサーに名前を連ねている他、ゲームの各デモも大会のインタビューといった雰囲気にまとめられている。

 最大の特徴は、システムの根幹である操作方法。
 通常の格闘ゲームならば、左にレバー、右にボタンといった配置で操作するが、
武力では左にボタン、右にレバーで操作をする。
 
ボタンは左右の二つだけで、前進と後退に使用する。
 
レバーはアクションとリアクションに使用。
 前要素の入力をすることによりアクション(殴る、蹴る、掴み、構え)を行い、それ以外の方向に入力する事でリアクション(跳ぶ、避ける、溜める、しゃがむ、伏せる、構え、挑発)を行う。
基本的にレバー操作ではキャラは移動しないので、リアクション動作をするとその場で上体を反らしたりして攻撃を回避する事も出来る(各キャラリアクション動作は違うので注意)
 このボタンとレバーの操作で重心の移動などを再現し、よりリアルで直感的な操作を狙ったというわけだ。

 
リアルさの追求も特徴の一つで、普通の人間に出来ない動きは極力減らし、飛び道具なども存在しない。人間に不可能な動きをするのは、主人公の一部の技と、「龍虎の拳」でおなじみのリョウの一部の技、そしてラスボスだけ。ラスボス以外の二人は、せいぜい「人間にはギリギリ無理」といった動きで止められている。
 
体力ゲージも通常の目に見えるゲージではなく、バイタルゲージという名前の心電図が表示されているだけで、ハッキリと「あとどれくらい」という事は解りにくくなっている。体力は攻撃を受けないでいると徐々に回復し、心電図の色も残量に応じて青→緑→黄→オレンジ→赤と変わっていく。赤くなって激しく点滅している時に打撃技や投げ技を喰らうとKO、関節技を喰らうとギブアップとなる。
 
パワーバランスゲージも重要なシステムで、これはキャラクターの重心がどこにあるのか、投げ技に対抗出来るだけの力が残っているのかという事が解る。重心が前に行きすぎるとカウンターを喰らいやすくなり、ゲージが少ないときに掴まれると投げられやすくなる。ゲージは自動で回復するが、攻撃を喰らうと減少して行く。ゲージの長さはキャラクターごとに違う。さらに、ダメージと被ダメージも体格差を反映しているので、単純な打撃でも力士の一撃と合気道の一撃ではダメージが違う。こういったリアルさが女性キャラの登場を許さない理由の一つだろう。
 
ロックゲージというものもある。これは関節技が成功した時にパワーバランスゲージが自動的に変化するもので、残量もパワーバランスゲージと比例する。関節技をきめている側は、きめ続ける事で相手のロックゲージと体力を減らすことが出来るが、自分のロックゲージも徐々に減っていく。きめられている相手側も抵抗する事できめている側のロックゲージを減らすことが出来る。ロックゲージ残量がゼロになったら関節技を解除してしまい、ロックゲージは再びパワーバランスゲージに戻る。これは自分のパワーバランスゲージが少ないのに下手に関節技をかけると、関節技終了時にかけた側が不利になる事もあるという事だ。
 なお、関節技には解除ポイントが存在し、技をかけている側はそのポイントになる寸前にレバーをニュートラルに戻さなければ技を解除してしまう。目安はカメラがズームになって最大までアップになる瞬間。

 武力の技は一発一発を入力する必要があるので、技を続ける際に入力タイミングが解りにくい。そこで搭載されたのが
セコンドシステムだ。セコンドONにしていると、技を継続する際にどのタイミングでどういう入力をすればいいのかが表示される。関節技の解除ポイントもセコンドONだと表示されるので解りやすい。ただし、決勝戦では強制セコンドOFFなので、そこにたどり着く前に技やタイミングを覚えないといけない。最初からOFFにしても特に利点はない。
 
リングアウトも存在する。六角形のそこそこ広いリングで戦うのだが、ロープなどはないので、リング端で攻撃をガードするだけであっさりリングアウトしてしまう。攻撃を仕掛けていても踏ん張らずにそのまま転落する。体力等に影響はないのだが、判定の際に不利になってしまう。
 KOやギブアップが取れないまま試合時間を終了すると
判定になる。審判3人の判断で決定し、2ポイント取った方の勝ちとなる。ただし、ドローと判定された場合は試合時間30秒でバイタルゲージ残量も底をついた状態でサドンデス戦となる。また、決勝戦ではドローでもゲームオーバーとなる。

 細かいシステムでは
ガード耐久値があり、上半身と下半身にそれぞれ独立したガード耐久値が設定されている。例えば上半身にばかり攻撃が集中して、上半身がガードクラッシュ寸前になっても、下半身のガード耐久値は無傷なので下段攻撃をされてもガードクラッシュは発生しない。ガード耐久値が下がってくるとガードポーズも変化するので、クラッシュする前の目安になる。
 ガード耐久値をキャラ別に分けると、
上半身Aランク:パイソン、暁丸、ヒディング
上半身Bランク:リョウ、パヤック、ズィルバー
上半身Cランク:凱、竜誠、宋
上半身Dランク:ソコロフ、デュガリ、貴人
下半身Aランク:リョウ、パヤック、ズィルバー
下半身Bランク:凱、竜誠、暁丸、ヒディング、宋
下半身Cランク:パイソン、ソコロフ、デュガリ、貴人
 となっている。力士の暁丸が上半身が最高ランクで下半身が普通だったり、ボクサーのパイソンは上半身が最高ランクなのに下半身は最低ランクな所など、リアルに設定されている。
 
 
ゲームとしては、凄まじくプレイヤーを選ぶ作品。
 
ゲーム速度は他の3D格闘ゲームに比べると格段に遅い。実際の人間が戦う速度よりも、まだ遅いといったくらいで、他のゲームに慣れていると凄まじくもったりとしていると感じるだろう。ただし、独特の操作感覚は他のゲームでは味わうことの出来ない、武力のみの個性として異彩を放っている。
 だが武力は大きな欠点も抱えている。
 それは、
リアルさを追求した作品なのに肝心の「格闘家の動き」のリアルさに欠けている事だ。
 なぜかこの作品、
モーションキャプチャーを使用しているのがやられポーズのみで、それも開発スタッフの動きをキャプチャーしている。技などは全てビデオなどの資料から手作業で作っている。
 プロレスやボクシング、相撲といったメジャーな格闘技ならば資料も多いだろうが、合気道や太極拳といった資料が少なく、流派の多い格闘技はフォローできたのかというと、恐らく出来ていない。
 筆者に解る範囲でも、少なくとも太極拳はまったく出来ていなかった。
 
ただ、「異種格闘技」の雰囲気は抜群に表現されており、各格闘技によって完全に基本動作から違う点は素晴らしい。

 システム的な妙な間や、知識だけで作られた形だけの動きを無くして、スムーズな戦いが出来るようになれば、充分にヒットする要素はあった。
 
操作性の面白さや、読み合いの楽しさ、異種格闘技の雰囲気は充分にあっただけに、肝心な「格闘技」部分のいい加減さが勿体ない。せめてモーションキャプチャーだけでもしてくれれば……。システム面と設定が丁寧に作られていたのに、あと一歩……なんとも惜しい。

 何気に、最大の特徴は何年経っても唐突にやりたくなる中毒性かも知れない。

ストーリー

 1999年、東京に建設されたNEO TOKYO GRAPPLE DOMEでSNK主催の異種格闘技大会が開かれた。
 ヒジや金的など、他の格闘大会では禁止されている攻撃を撤廃した1R勝負という過激な内容と、世界規模の大会だということが話題を呼んでいる。

 といった設定の他は、各選手がなぜそれに参加するのかという、個別の設定とインタビューがあるだけで、エンディングも記者会見という形でインタビューのみとなっている。

システム(右向き時)

前進:右ボタン
後退:左ボタン
ガード:右+左ボタン同時押し
アクション:
リアクション:
ヘビー攻撃:前進+アクション
テクニカル攻撃:リアクション→アクション
投げ回避:掴まれた直後に後退
エスケープ:レバガチャ+ボタン連打
キャラクター&技表
(全11人+隠し1人。名前クリックで技表へ)
天童凱 坂崎リョウ
パヤック・シピタック 徐竜誠
イワン・ソコロフ 暁丸
ロブ・パイソン ジャック・デュガリ
パトリック・ファン・
ヒディング
西園寺貴人
宋玄道 ズィルバー
(隠しキャラ)
隠し要素、裏技等

アーケード版
ズィルバー乱入:
 ノーコンティニューで決勝戦まで進むと、決勝戦の相手が乱入してきたズィルバーに変化する。……といっても、コンティニューする人が少ないため、ほとんどの人はズィルバー乱入が隠し要素だとは気付かない。

ズィルバーの使用:

 全キャラでズィルバーを倒すと、ズィルバーが使用可能になる。

2Pカラーの使用:
 キャラ選択でスタートボタンを押すことにより、1P側でも2Pカラーのキャラクターを使うことが出来る。

エンディングの変化:
 ズィルバーと戦ったか否かでエンディングのインタビューが変化する。


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