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―― ガルナハンの現状 ――

ガルナハンを含めたコーカサス地方は、もともと温泉地として有名であったことからもわかるように、豊富な地熱資源がある。
地熱発電の開発は二つの大戦以前からのものであったが、最初の大戦にてNJが使われたことにより急速発展。

西暦のころの化石燃料を中心とした経済から、地熱と火力を利用した 電力供給拠点としての経済へと変化していった。
その開発の余禄として、数々のレアメタル鉱床も発見され、コーカサス地方は経済上の重要な拠点としての地位を持つことになる。


このエネルギー資源がガルナハンの独立問題を複雑にしている。
現在、電力供給の火力・地熱プラントももちろんだが、変電所などの施設も重要拠点として、東ユーラシア治安局の警備が入っている。
ブレイク・ザ・ワールドや、史的な飢餓を経て国力の著しく衰退している東ユーラシアにとっては、コーカサス地方の地熱資源は決して手放せない貴重な財産だ。

しかし、コーカサス地方は、西暦時代からその地下資源が原因で大国に蹂躙され続け、自治独立の芽を摘まれ続けた歴史を持つ。
せっかくの地元資源の恩恵にあずかれず、常に収奪され続ける歴史に、いい加減終止符を打ちたい気持ちは、募るばかりなのだ。

そういったコーカサス地方の自治独立運動に対して、東ユーラシア共和国は弾圧をもって対処している。
一地域のエゴで東ユーラシア共和国全体が貧困に転落するのを看過するわけにはいかないのだ…というのは、真実の一部ではあるが全体ではない。

実際には、コーカサス地方の地熱プラントは老朽化が著しい。
本来ならば、適切な維持管理ならびに、改修・新造が必要なのだが、東ユーラシア共和国はそれにふりわける予算すら、統一連合からの自治権維持の交渉材料に使っているのが現実なのだ。
そして、政府自体の腐敗もある。
コーカサス地方の地熱資源の総量は、他地域に分配した後でも地元にある程度の恩恵を与える余力が十分あるはずなのだが、なぜかそれはごくわずかにとどまっている。
そう、途中でエネルギー資源の横流しが半ば公然とおこなわれているのだ。
東ユーラシア共和国政府はこういった惨状について、看過するばかりでなんら改善の手を打っていない。
このような現状のために、コーカサス地方ではレジスタンス活動が活発化している。

では、統一連合はこの事態にどう対処しているのだろうか?
実は何もしていない、のである。

CE75年に統一連合が西ユーラシア連邦を武力にて制圧、自治権を剥奪したことはまだ記憶に新しい。
その後、統一連合に対する抵抗運動は収まるどころかさらに激化している。
統一連合の強引な手法が反感を買ったことは明らかである。
そのため、東ユーラシア共和国に対してはあえて強攻策は取らず、統一連合へ地熱エネルギー資源を優先的に配分してもらうのみに留めているのである。
しかし、いずれは東ユーラシアの自治権を返上させ、統一連合へ併合する心積もりであることは変わりない。
それには、レジスタンスの活動により政府が弱体化してくれる方が都合よいし、東ユーラシア共和国政府に統治能力がないことの有力な証拠となりえるとの計算があるのだろう。

もちろん、ラクスやカガリ達は、そういったよこしまな考えは持っていないに違いない。
東ユーラシア共和国政府の腐敗の現状を知れば、心を痛め、その力をもって腐敗した為政者を排除することだろう。
しかし、それが抜本的な解決につながるだろうか?
彼らは確かに一時は腐敗を一掃するだろう。
しかし、人間が政治をつかさどる限り、腐敗は決してなくならぬものである。
それは必然だ。
大事なのは、腐敗が生まれにくく、発見されやすく、排除しやすい環境を作り出すことのはずである。

彼らの行動には、そういった観点が完全に欠落している。
よくおとぎ話に、王子様が国を食い物にする悪い代官を退治して、めでたしめでたしというものがある。
彼らのメンタリティはまさしくその王子様だ。
悪代官を追い払った後に、疲弊したその地域をどう建て直し、どう統治していくかという考えが全く無いないのである。

こういったコーカサス地方の現状を、端的に表現すると以下のようになる。


■コーカサス地方(ガルナハン)の民
生活が苦しいから何とかしたい。しかしこの生活苦は全世界的に見れば、比較的まだマシな方。
とはいえ、苦しいことには代わりがないので、東ユーラシアから独立までは行かないまでも、自治権の拡大を行うことによって火力プラントなどの利権をより地域に還元できると考えている。



■東ユーラシア共和国政府
東ユーラシアにCE77に発生した飢饉により全体的に食糧危機から立ち直っていない。
そのために、ガルナハンの電力は各国との貿易(特に西ユーラシア直轄領は統一連合の富がある) を有効活用し、食料の確保に躍起になっている。
そのためガルナハンの自治権拡大は、東ユーラシアの他地域を切捨てることにつながると考えており、徹底的に反対している(武力行使をすることもある)。
ただし政府が腐敗の温床となっているために、その言葉と行動にはまったく説得力が欠けている。



■統一連合
東ユーラシア全体としてもさることながら、CE77の北半球の飢饉は大規模であり、プラントの食料プラントなど使えるものは何でも使うスタンスで対応するも、間に合っていないという認識。
その時点で自治権など認められるはずもない。
現在はコーカサス地方の地熱資源が貴重であるため、東ユーラシアに譲歩している形になっているが、隙あらばその自治権を奪い取ろうと機会をうかがっている。
ラクスやカガリなど統一連合政府首脳は、東ユーラシア共和国の現状を正確に把握していない。
そして、たとえ把握したとしてもその場しのぎの対処にとどまり、抜本的な解決策に至ることはない。



■レジスタンス (リヴァイヴ)
コーカサス地方の富(=地熱資源)の再分配そのものは現状では必要と考えるが、ガルナハンそのものの活力低下を懸念している。
特に火力プラントは使用限界が近づいており、そのメンテナンスにかかる費用すらも他の地方に回されざるを得ない状況に懸念を持ち、地元住民と協力している。
レジスタンスも地元住民のためのエネルギー確保などのために、関連施設を襲うなどが多い。
そのため地域全体でレジスタンスを匿うなど一種の共犯関係が成り立っている。
目的は東ユーラシア共和国を交渉のテーブルにつかせ、ガルナハンを含めたコーカサス地方の自治権を拡大すること。
しかしリヴァイヴ(=ユウナ)は、最終的に統一連合政府の正常化までいかなければ、根本的な問題解決に至らないと考えている。