『 噛痕 』首筋に鋭い痛みが走った。 つぷりと自分の肉に鋭利な牙が食い込んでいくのを、まざまざと感じる。 私はそれを、身じろぎもせずに受けとめた。 目の前に広がる、白金の髪。 その美しさは確かにあの人だと感じられて、沸きあがる愛しさのままにそっとその背を抱きしめる。 すると、びくりとその背が震え、恐怖に慄いた表情であの人は顔を上げた。 「俺は・・・また・・・・」 普段でも白い顔が、今では蒼白になっている。 そんな顔、しなくていいのに。 「いいの。」 私はにっこりと笑うと、目の前にある、自分の血に濡れている唇の端をそっと舐め上げた。 口の中に広がる、錆びた鉄の味。 それさえも今は甘美に感じる。 「何があったって、世界で私だけは、あなたのそばにいるから」 あなたが私を傷つけるたび、あなたの心は傷つく。 私の血があなたのものになるたび、あなたの心は私のものになる。 だからもっと強く噛んで。痕をつけて。 あなたが私から離れられないように。 「・・・っ」 たまらないように強く抱きしめられながら、私はひっそりと微笑んだ。 ――――――この噛痕が、わたしとあなたをつなぐ永遠の鎖。
*名前出てこないけどレムオンです。ちょっと怖い女主でした。
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