『 ネモの受難 』
俺の名はネモ。理由あって猫の姿をとってはいるが、破壊神ウルグの円卓の騎士の一人だ。
元の姿をとれば、泣く子も黙るどころかもっと泣いてちびるくらい恐ろしい魔人である。
その俺が・・・その俺が・・・・一体なんだってこんな目に。
***
事の発端は、無限のソウルを持つとかいう女である。
そいつが連れてきた弱っちそうなコーンスが、俺を見るなり、
「ね、ネ、ネ、・・・・ネコーーーーっっ!!!!」
と叫んでバタリと倒れたのだ。
ヘビやらゴキブリやら俺の元の姿を見て卒倒するならともかく、猫を見て倒れる奴は初めて見た。
「なんだぁ、こいつ?」
呆れて女を見上げると、
「ナ、ナッジ・・・大丈夫?」
こちらも呆然としていた女が、慌てて声を掛ける。
と、もぞりと横たわっていた物体が動いて俺は思わず声を上げた。
「うぎゃ!!」
倒れていたコーンスが、何時の間にかゾンビさながらずりずりとこちらに這い進んでいたのだ。
「な、なんなんだ〜!?・・・こいつは!!」
後ずさるものの、後ろは本棚だ。逃げ場がない。
「逃がさないよ」
本気だ。こいつは本気で殺る気だ。
にっこり笑ってるが
目が本気なんだよー!!
泣く子もちびらせる俺様も、この時ばかりがこっちが泣きそうになりながら覚悟を決めた。
その時だった。
「うわーもう!!!!可愛い可愛い可愛いなぁ〜〜vvv」
ひょいと身体を持ち上げられ、ぐりぐりと頬をすりよせられる。
俺の思考は瞬間冷凍された。
「見て見て〜!!白くてふわっふわで、生意気そうな瞳が最高に可愛いよ〜!!」
女は少し遠巻きに俺達を見ながら、ひきつった笑いを浮かべている。
「あ、ナッジ・・・猫好きだったんだ・・・」
「うんっ。猫のためなら死んでもいいくらい好きv」
一瞬呆然としていた俺は、我に返ると猛然と暴れ始めた。
「て、てめえ、何しやがるっ。気持ち悪いだろうがーー!!!離せ・・・離せったら!!」
必死でもがく俺をがっしり掴んだまま、コーンスは嬉しそうに笑った。
「わー、君喋れるんだ。すごいね!!・・・んんーー・・・。」
そして、だんだん近づいてくる奴の顔。
嘘だろ?嘘だよな。誰か嘘だと言ってくれ〜〜!!
「・・・ちゅv」
「・・・ふぎゃにゃぁーーーーー!!!!!!」
***
その日猫屋敷には、
男にちゅーされる(しかもなかなか離してくれない)という猫人生最大の屈辱に、ネモの悲痛な叫びが響き渡ったのであった。
*ネモがちゅーされているところが見たかったので。
「ナッジ・・・いい奴なんだが」の屈託が気になるのでナッジに犠牲になってもらいました。
「ユーリス・・・あの馬鹿女」は相当ひどいことされたんだと思います(笑)