※旧サイトのものを、転載して若干改訂しています。
ごっついタイトルが長いですが、これが正式タイトルです。
略称は、公式には「青空」で、ファンの間では「果て青」と呼ばれることもあります。
【DATA】
◆果てしなく青い、この空の下で…。(2000年6月)PC(CD)版
その後、PSで「どこまでも青く…。」(KID)発売。改変度合いは不明。
・ブランド=TOP CAT
・シナリオ=鷹取兵馬
・原画=たかみち
(グラフィック…犬山工房、かにかに)
・音楽=SYUN
この作品は、本来であれば「ギャルゲーの枠を越えた…」で紹介すべき作品かもしれません。そのくらい、非常に高い次元で何もかもがまとまった、大変良い作品です。
ちなみにこのゲームを発売した「TOP CAT」というメーカーですが、実はこのゲームの次のゲームくらいで、開発に手間取ったかスタッフ間のトラブルがあったか何かわからないんですが、潰れてしまいました(T.T)。比較的独創的なゲームが多く、固定ファンも多かったんですが…。でも、まだHPは運営されているんで(更新もたまにあります)、良ければ見に行ってください。
この作品との出会いですが、実は「ジャケ買い」でした。何も評判を聞かず、レビューも特に観ず、タイトル名のインパクトと、ジャケ絵の雰囲気に呑まれたんでしょう。結構衝動的に買ってしまいましたw
絵は、たかみちさんです。この絵は見たことのある人もいるんじゃないでしょうか。雑誌の表紙などではよく見かけますし、「HOSHIGAMI」というPSのゲームの原画もされていました。
この人の魅力は、何と言っても「シンプルな線なのに、それで十二分な魅力あるキャラを描ける」というところでしょうか。萌え絵とは全く異なりますし、表情やポーズ、どれを取ってもほぼ完璧。エロも描ける(^-^;。僕の中での、一番のお気に入り絵師さんかもしれません。ジャケ買いしたゲームって、これと「終末」くらいですから。
内容なんですが、あと1年で廃校になる学校の生徒や先生(っつても一人か)と主人公の、最後の1年を描いた作品です。
また、非常に和風です。
これだけでは説明になっていないので、簡単に紹介を。
舞台は過疎の村で、若い人も減るし、リゾート開発の計画も進んで、高速道路やテーマパーク建設の予定も立ったことでの廃校処置。しかし、その開発を進める地主みたいな人物の悪いウワサや、伝承にまつわる神隠しのような事件など、様々な要素が折り重なって話は進んでいきます。
で、選んだヒロインによって、ゲーム全体の謎みたいなものへのアプローチの仕方がかなり異なり、片や地主にハメられたり、片や伝承の真相に迫ったりと大きく異なります。
具体的な流れは、春・夏・秋・冬の4パートからなっていて、春はヒロインと主人公の関係の説明や、世界観や事件の発端みたいなものがおぼろげに描かれます。夏は、キャラによっては「海水浴旅行」イベントがあり、そこで意中のキャラとの進展がありますし、海水浴イベントが無いキャラもいますが、それなりに進展があります。秋は、事件や伝承の真相に迫ったり、巻き込まれたりしていくさまが描かれます。冬は、それらの事件や伝承の真相が明らかになっていきます。こんな流れです。非常にメリハリが効いていますし、見せ方もめちゃくちゃ上手い。
この作品は、まず舞台やストーリーを設定した後にキャラを後付けにするタイプのゲームなんで、キャラ萌え系ではありません。それでも、キャラクターにも相当力を入れているみたいで、どのキャラも非常に力が入っていて、キャラ立ちも非常にあったと思いました。そして、そのキャラの個性も生かしたストーリーに仕上がっていたんで、かなり高い次元で調和が取れていたな、と思いました。
何が良かったか? まずは「絵」でしょう。決して「萌え」に迎合しない、シンプルなラインで表現した絵は、かなり魅了されます。表情や構図なども完璧でした。背景も素晴らしかったですね。「空」の絵は、AIRとは対極にあるシンプルな美しさがありました。グラフィックに関しては申し分ありませんね。
ちなみに、数あるギャルゲー(だけじゃないかも)の中で、キャラクターを黒髪だけで描き上げているのはこのゲームくらいじゃないでしょうか? 黒髪のロングのストレートという、最もシンプルでなかなか(現実ではたまにあるけど、ゲームでは)無い髪型が好きなんですが、それでいてキャラクターを描き分けられるんだから、この辺にも画力の凄さ、桁違いさがわかると思います。かなり異質ですね。
シナリオも、かなり凝った作りで面白かったですね。ヒロインによって、ゲームの本質への迫り方が違うんですが、主人公との関係の深め方や、ゲームの本質へのアプローチの仕方、さらにはクライマックスへの持っていき方は、相当高いレベルにありましたよ。
音楽も独創的でした。何よりも、ワンフレーズだけで止まってしまう仕様ですかね。全体的なイメージもかなり統一されていましたし。
そして、それらがかなりの高い次元で融合していたことです。世界観の統一という意味では、「終末」には敵わないかもしれませんが、これだけの世界観を、これだけ魅力あるキャラクターを使って、魅力的なストーリー展開をするってのは、「終末」あたりでは太刀打ちできないレベルの高さがありました。
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キャラクターの紹介を軽くしておきます。最後の「好き度」は、僕個人の好きなキャラってことです。
・芳野雨音…メインヒロイン(だと思う)。一応幼馴染属性。
ゲーム開始時に、既に両親が蒸発してしまっているという薄幸な属性も。
控えめだが気遣いは十二分なくらいしてくれる。あまり本心を言わない。
(好き度☆☆☆☆)
めっちゃ良いです。最初はかなり頑ななくらいに心を開いてくれないんですが、夏の海水浴イベントで一気にお互いの距離が近づきます。でも完全に本心は言ってくれません。それはエンディング後くらいかもしれません…。
メイド服萌え(^-^; かなり色んな意味でですが。
しかし、良い感じの恋愛が描かれていますよ。爽やかなだけがこのゲームの魅力ではありませんけど、爽やかさと痛さが同居するキャラではあります。
・穂村悠夏…雨音の対極に位置するキャラ。幼馴染属性。天邪鬼属性...でもありませんw
強気なタイプですね。割と物事をハッキリ言うタイプです。
そして、実家が神社をやっているために、巫女装束を着てくれますw 巫女さん属性はあまり感じられませんけど。
傾向としては、何も理解できないまま事件に巻き込まれていくって感じでしょうか。このゲームで、ある意味一番不幸な展開になるキャラです。
つーか、最初から主人公への好感度はかなり高く、序盤から膝枕してくれたりとかなり熱い。雨音がかなり控えめに好感を持ってくれているのとは違い、かなりストレートに表現してくれます。
(好き度☆☆☆)
・松倉藍…小動物属性。主人公のことを「お兄ちゃん」と呼ぶので妹属性でもある。猫口。
結構謎が多いままのキャラですし、最後まで理解できない部分もあります。一番、このゲームの本質からは遠いキャラです。が、上手いこと本質のストーリーとは結びついているんですね。
ただ、主人公との関係は結構楽しく見られましたね。終わりへの持っていき方などはKEYキャラ的な要素も持っていました。語尾が気になりましたが、なかなか良かったんじゃないでしょうか。
(好き度☆☆)
・松倉明日菜…メガネ属性。気弱で控えめなところはありますが、このゲームの根幹に関わるキャラである「文乃」に最も関わったキャラでした。
ストーリーのインパクトとすれば、サブキャラの領域を越えません。あんま印象に残ってません。
(好き度☆)
・八車文乃…最初は無口属性。無感情属性。不思議属性もありますが、KEYやリーフのそれとは全く異なります。自分をなかなか出さないという部分で。
このゲームの裏ヒロインにして、ゲームの世界観や設定などがかなりの部分で明らかになるキャラでもあります。
とにかく、このキャラは最後にプレイすべきでしょう。色々な要素が詰め込まれていますし、かなり魁せてくれます。
と言うか、彼女のストーリーを見せたくて、このゲームを作ったんだろうなあと思わせたシナリオでした。
(好き度☆☆☆☆☆)
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このゲームの何より凄いのは、18禁なシーンを、非常に効果的に使ったと言うことでしょう。まずは海水浴イベントがいい感じです。ドキドキするようなHなシーンに仕上がっていますし…(^-^;。主人公とのHシーンも意味のあるものに仕上がっていますし。
また、ヒロインたちが辱められるシーンもあって、欲情もしますが、かなり憤りも感じるシーンに仕上がっています。ここまでHシーンを必然的に扱えたゲームは無かったと思います。逆に、PS版移植時にどうやってHシーンを削除したのかが気になるんですが…。かなり18禁であることを生かしていましたしねえ。そのシーンをどう差し替えて全年齢向きにしたのか? また、ストーリー自体は素晴らしかったので、PSへの移植の際に、ちゃんとオリジナルのスタッフが参加して改変したのかなど、かなり気になっています。
ここまで書けば、申し分ないゲームであると言えます。雨音ちゃんと文乃のラスト直前のシーンは、CGの美しさもありましたが、本当に印象的でした。
では何故、このゲームの評価を落としたのか? それは音楽にあります。
このゲームの音楽のメロディを聴けばわかりますが、一曲(だけ?)が、CMでも頻繁に聴ける曲になっています。
CMで頻繁に聴ける曲…それは、坂本龍一さんの曲のほぼパクリなんです。時期的に逆はありえないので...。
ですから、もしかするとこのゲームの設定自体もパクリなのか?と疑ってしまいました。たぶんそれは無いのでしょうから、やはりオススメできるゲームであることには間違いないでしょう。
もう一つは、エンディングの見せ方に若干問題があったのではないか?と言うことです。キャラごとにグッドエンドとバッドエンドがあるんですが、バッドを見てグッドを見ても、そんな凄く泣けたりも出来ませんし、最後の最後での盛り上がりに欠けた印象が若干あります。じゃあどうすれば良かったのか?って、それも言えないレベルなんですが、とにかく、あと一歩詰めを誤った感もなきにしもあらずな印象でした。
まだ、突き抜けきれていないような感じです。
でも、ストーリー重視のパソゲーで、逆にここまでHシーンで色んな感情になったゲームは初めてです。Hシーンを効果的に使いつつ、読ませるシナリオにした当時のスタッフには「すごい」としかいえません。
レベルは高いと思うんで、坂本龍一氏の音楽に興味の無い方や、坂本龍一氏の音楽なんて聞いたことが無いという方は(っていう言い方もおかしいけどw)存分にハマってください。
また、「和風」「伝承」のキーワードにビビっときた方は、問答無用でプレイしてみてください。
CG:10/10
音楽:7/10
ストーリー:8/10
キャラ:9/10
涙腺刺激度:8/10
感情移入度:8/10
そういや、ボリューム的にはかなりのものがあります。どのくらい時間がかかるかは忘れましたが、1キャラあたり3〜5時間はかかったかと思います。
<ジャンル>
ノベル系。世界観やストーリーの先設定。キャラクターは後設定だと思う。純和風。
<こんなゲーム好きな方にオススメ>
・痕…やはり、このゲームの踏み台になった作品です。一つの事件へのアプローチが、選択したヒロインによって大きく異なる手法はかなり似ていますし、表面上の”事件”と設定上の”伝承”とを上手く絡めているあたりは、痕を進化させたものと感じました。色んなノベル系ゲームの土台というか礎ですよねえ。このゲームが無ければ、色んなゲームが生まれてこなかったわけですから。
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