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田端

ライトブルーの薄明かりの下、エメラルドグリーンの液 体にぶくぶくと育てられた僕は、造りものの臓器を持つ いびつなクリーチャー。頭の中のおとぎの国は、いつだ って侵略の危機に瀕してる。 甘いビスケットの壁と、チョコレートの柱。広大な砂漠 のど真ん中にできた僕の塔を、蜃気楼だと人は言う。 砂混じりの夜風にさらされて、全てが消えてしまうんじゃ ないかと眠れぬ夜の気分が分かるか? 愚直で敬虔なるイカロスな僕を、地に足をつけず泥水も 飲まぬ道楽貴族めと揶揄するのならすればいい。 でも今飲んでるミルクティーがこんなにも苦いのはなぜ だ?胃が痙攣して吐いちまいそうだ。 かあああん。かあああん。 だるま落としの逆方法で、この塔は下層部をどんどん継 ぎ足して、僕の部屋をどんどん上に上に運んでく。 今度のバベルは倒れませんよと、施工担当管理官からの メッセージ。 逆立ちでもしてやろうか?カードを逆位置にすれば救わ れるのかタワー。なんてね。 ミルクティーで酩酊してるのかな。 空の上のほうにはいろんな連中が住んでいて、塔が高く なるにつれてそこらへんを浮かんでる奇妙なやつらが窓 から入ってきたんだ。 「よくここまで来たね。すごいねえ。これ、あげるよ。」 そいつら気さくな悪魔たちで、親愛の情を込めて宝石を 一つくれる。 その昔、川で拾った石ころなんかよりもとてもきれいな 宝石。 悪魔は魂を奪うなんて聞いてたから警戒してたけどそう いうことも言ってこなかったし、まあいいかと思ったん だけど、最近わかり始めたのさ。 あいつらが僕から奪っていったのは、川で拾った石ころ をきらきら光るまで磨いたあの時のそういう気持ち。そ れを悪魔は奪っていった。 ヘイブラザー。うまいことやるねギブ&テイク。 逆立ちをやめて、僕は施工担当管理官に言ったんだ。塔 を伸ばすのをやめませんかと。 いつからか僕の首は上が下か、しか向けなくなってた。 のぼるとかおちるとか。 でも本当に向かなくちゃいけない方向は上でも下でもな くて前だった。 窓を開けて前だけを見て足を踏み出すと、僕は空を歩い てた。悪魔がひゅらりと寄ってきて定規をくれた。 「これ、お前だけの定規。お前だけの、喜びを測る定規。」 「お代は?」 「君が道中転んだり、バタバタあがいたりする姿を見させ てもらうってのでいいや。塔にこもってる時より、なん かおもしろそうだから。」 ヘイブラザー。うまいことやるねギブ&テイク。


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