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新宿

空から絶え間なく降り注ぐのは雨ではない、爆弾だ った。激しすぎる爆音のせいで、パルハの鼓膜はと うの昔にやぶれていた。 ときおり、ざざ、ざざざとノイズが頭をかすめる程 度で、世界は古いコメディ映画のようにトーキーな 風合いでカタカタ進む。 なにが起こっているのか?脳の中の間取りは3LDKく らいあるはずなのに、それは忍者屋敷のように入り 組んでいて、回転する壁や掛け軸裏の通路が自分を あざ笑っている。 白い壁にびっしりとメモがしてある。ずっと同じこ とばかりメモしている…?そしてずっと同じ場所を ウロウロ行ったりきたりしている。 パルハは自分の顔に張り手を食らわせて目を見開き、 あたりを見回した。誰かがうずくまって寝ていた。 こんなところでいい気なもんだと思ったが、そいつ の顔には見覚えがあった。ペルヘだった。 仲間のペルヘが流れ弾を被弾してひゅうひゅうと息 をもらしていた。このひゅうひゅうというのを虫の 息というのか。子供の頃、昆虫の足をきまぐれにも いだとき、こんな動きをしていた。 ああ、ペルヘ。声をかけようとしたが声は出なかっ た。声をかけられない自分を残酷だと思ったが、声 をかけようとした自分はもっと残酷のようにも感じ た。 ああ、こんなときにはピルヒにどうしたらいいか聞 かなくちゃ。ピルヒ。俺の大好きなピルヒ。なあ、 ピルヒはどう思う? ピルヒはいつも笑顔で応えてくれる。ねえピルヒ、 いや、これはピルヒじゃない…! なんだこれは。カカシだ。ピルヒのお面が貼り付け られたカカシだ。足の部分がキャタピラになってい て、自動でついてくるようになっているだけだ。こ れがピルヒ? お面をはがすと裏に何か書いてあった。 「私はもうこの世にいませんでした。」 下に日付がうってある。半年も前だ。こんな馬鹿げ たことがあるか?理由も意味もわからない。なんな んだこれは。 「邪魔になると思ったから、言えませんでした。」と 書いてある。 邪魔に?ああ、ピルヒ。パルハは涙をぽろぽろ流し た。そして、涙を流してしまったことに嫌悪感を感 じた。そんな叙情的な手法でなにかをした気でいる ことに罪悪感を感じた。 もぞもぞ。視線をうつすと、見たことのない生き物 が足の血を吸おうとしていた。 ひゃう、とパルハは悲鳴をあげてその新生物を叩き 潰した。執拗に何度も。 とにかく宿に帰ろう。そして深呼吸をしよう。深呼 吸ができるなんて、奇跡だぜ。 パルハはくくくと笑った。 笑うしかないように感じた。


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