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渋谷

改札をぬけると、そこは不思議の国だった。喧 騒と熱気を撒き散らして、街は大きな心臓のよう に鼓動していた。 「渋い谷、と書いて渋谷か…」 ネルバ君はそうつぶやきながら天を仰ぎ、Suica をへし折った。飛び散った破片が二、三アゴに突 き刺さるのもどこ吹く風で、颯爽と歩きだす。そん なに渋いのかねえ…。待ち合わせの人だかりをか きわけてハチ公を睨みつけた。 「え!?そんなに渋いのかい!」 ハチ公を勢いよくベロベロと舐め回すネルバ君。 しかしその味は渋くはなく、むしろサトウキビの ようにほんのりと甘く。 「犬め…甘ったれやがって」 舐めすぎて溶け、ひとまわり小さくなったハチ公 を蹴りあげたが、ハチ公は一つも吠えはしないの だった。だがその時、ネルバ君の後方から怒号が 鳴り響いた。 「SHIBUYAを舐めるな!!」 あ、あなたは…! 振り返れば、湯葉のマントで 身を包んだ小粋なナイスミドル。そう、麦田善太 郎博士だ。 「博士…ボリビアから帰ってきたのですか?」 「ちょっと尿意をもよおしたものでぬ」 「ぬ?…ね、ではなく?」 小賢しい!と一喝され、その後その場で68時間 にわたりネルバ君は説教を受けた(その時間のう ち11時間は仮眠をとったわけだが)。博士いわく、 ハチ公は「緊急災害時の糖分補給剤」として作られ ているので甘いのは当然であり、むしろ渋谷の渋 み成分を担っているのは109の0の部分だという。 「そんな馬鹿な…。丸井(○I○I)の○の部分ならと もかく、109の0の所だなんて…」 「悔しいかもしれんがこれは厳然たる事実なのだ。 ネルバよ、渋谷の真実の渋みを知りたくばあそこ を舐めてこい!」 博士にそう言われながら何らかの注射をされた ネルバ君はその前衛的勇気を覚醒させ、109のほう へ。しかし0の場所へ登るのは至難の技。どうした ものか。 「よし、109から出てきたギャルっぽい女の子に聞い てみよう」 次に出てきた娘が自分の救世主となるに違いな い。生唾をゴクリと飲んで目を活目させると、109か ら出てきたのはギャルではなくボロボロに老いた メスゴリラだった(この場合、メスゴリラっぽい 女の子というわけではなく本物のメスゴリラ)。 落胆の表情を見せるとゴリラは強いまなざしで叫んだ。 「ウホッ!」 …なるほどね。その言葉で全てを理解したネルバ君は、 すぐさま準備を整えてロシアへ飛び立った。 「俺、絶対にピロシキを食べてくる!」 冒険の始まりだ。


コピペ元 「変人ラジオ書き起こし
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