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大崎

 いったい何なんですか、あの巨大な化け物は。あ れですか、ええ、あれがゾラグマです。ゾラグマ? はい。このままだと、街ごと飲み込まれてしまいま すよ。仕方ありません。仕方ない?もう、止めるこ とはできないのです。ゾラグマ自身、おそらくもう 自分の行方を自分で決めることはできないでしょう。 しかし、このまま流れにまかすままでいいのでしょ うか。それがこの世界の常なのです。言うなれば、 ゾラグマとは我々と同様に儚き「生きる意志」の集 合体なのです。あれは、幸いをもたらすのですか、 それとも災いを?そのどちらもです。ただ、そのど ちらもが規模の大きなものとなって。私はなんだか、 怖いのです。あの大きな力が、大切なものを壊して しまうような。あっ、またひとつ大きなビルが、ゾ ラグマの渦の中に。ええ、しかし、私としては、ゾ ラグマが正しい成長をとげて、我々に新しい世界を 見せてくれることを期待しています。あっ、あなた のその期待が。あ、はい。飲み込まれましたね。ゾ ラグマに。宇宙ですね。そう、巨大な引力なのです。 この宇宙に存在する全ての物体が引力を持ってい ます。万有、というくらいですから。ただ稀に、そ の引力を自分の質量と釣り合わないほどに持って出 現する存在がいるのです。それが、ゾラグマ?  アスファルトを引き剥がし、木々をなぎ倒し、空 気を、水を、人を、光を、闇を、その体で全て受け 止めてゾラグマは進んだ。我が身に受けとめるその 全てがゾラグマを支え、傷つけながら。その進行の 経路は無軌道のようでもあり、何かに向かうための 最短距離のようでもあった。それが何を意味するの かわからないまま、ただ呆然と。 その鼓膜を突き破るほどの轟音と皮膚が焦げ付 くほどの熱風に包まれて。ああ、もう私は…そろそ ろお別れのようです。体が、ゾラグマに…。私はま だのようですが。さようなら…。あの…。え?もし よければ、見てきていただけませんか?何を。その、 ゾラグマの中心に何が…。あっ。ああ…。行って、 しま、われた。ものすごい速度で回転してるにも 関わらず、ゆっくりと浮遊しているような感覚。 ひんやりとした暖かさ。ここが、ゾラグマの内の 世界。五感がなにも感じなくなったような、六感に も十感にもなったような。…あれは?あの、大きな 光のそのさきにたゆたうものは。…赤ん坊?ちいさ な赤ん坊が、泣いている。 そして目を閉じた。目を閉じてただ願うのであっ た。素晴らしき世界を。


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