原宿
「バルトライド、状況を報告しろっ。」
「はっ!現在、西の門が炎上、東の門で疫病の流
布、北の門で痴話喧嘩、南の門で仮面舞踏会がく
りひろげられています。なお、天候は花吹雪と落
雷。推定される敵兵の数およそ20万、潜伏してい
るスパイ200、対してのこちらは… 私とカルザ将
軍を含めて…2名であります!」
「持ちうる武器は!?」
「敵軍が衛星レーザー、対空迎撃戦車、ヘリ、戦
艦、モトクロス、モーニングスター、鉄バット、
マジックハンド。対してのわが軍は…安全ピン
2つ!!!」
「キエエエエエエエ!」
「将軍、お気を確かに!」
「違うよ、違うのだよバルトライド君。私は今歓
喜にうち震えているのだよ!」
「はっ!?」
「人生という一大喜劇にもっとも必要なものはな
にかね!」
「はい!コエンザイムQ10であります!」
「おしい!しかし完全に的外れだ。おしおきとし
て後でボールペンの先についているボール3つを
使ってのお手玉!」
「了解です!しかして答えは!?」
「エネミーだよ。」「メアリー?」
「エネミーだ。わかるね?つまりこの状況こそが
最高の演出なのだよ。全てのクソムカつく野郎どもに
最優秀助演男優賞&女優賞を与えたい気分さ。」
「しかし、このままでは我々はひっ捕らえられた
あげくいろいろされて最終的にはカマンベールみ
たいにされてしまいますよ!」
「バカモン!いやback a moonlight!!そのため
に、我々にはあるんじゃないか、力が。」
「チカラ?この非力で無力なわが軍に何の力が?」
「勝利のために必要なのは何力(なにりょく)だ?
軍事力?経済力?技術力?引力?重力?遠心力?
電力?」
「やはり軍事りょ…」「否!いな・いな・いなだよ。
いないいないばあだよ。」
「何力(なにりょく)なんですか!!」
…全力だっ!!!
カルザ将軍は安全ピンを握り締めてぶんなげた。
時空の壁に突き刺さる安全ピン。
その穴から洪水のように人間の感情があふれてく
る。
とてつもない異臭。
窓の外では、太陽が昇るのを数万の浮浪者が引き
ずりおろそうとしている。
将軍、なぜこんなにも悲しいんですか。どうして
こんなにも。
か、な、し…
バルトライドの首がごろんと床に落ちた。ボルト
が転がる。
いいからそこで黙って見てろ。
太陽はいずれ昇る。幸福な毎日は焼け野原に宿る。
なにをかくそうこの俺の前世は、核ミサイルだったん
だぜ。
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