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恵
比寿

   北原螺子太郎(きたはらねじたろう)は考えてい た。なぜ青空に輝く太陽は俺のものではないのか と。北原螺子太郎は考えていた。なぜ夜空に瞬く 星々はあの娘ものではないのかと。答えは出な かった。しかし考えていた。しかも…恵比寿で。 「え・び・す…。エビス? エヴィス? どっち? ねえどっちなんだよ!誰か俺を助けてくれ!」  螺子太郎は髪をかきむしりながら、動く歩道を逆 走した。ガーデンプレイスから、西口の恵比寿像 を目指して。 「恵比寿像に聞けばわかるはずだ…。アレのことと か、あと、女の子をアルデンテする方法とか」  そして螺子太郎は、恵比寿像にインタビューを 決行した。深夜3時、春の星座たちはそれを見守っ ていた。 ――それではインタビューを始めたいと思います。 恵比寿様、よろしくお願いします。 「よろしく。ははは。まあそう堅くならないでよ。も っとフランクにゴーだよ」 ――まず、あなたが恵比寿様を始めたきっかけか らお聞きしたいのですが。 「ま、基本的にはデフレ対策からかな。高校時代、 ボクね、ネギばっかり食べてたの。密室で」 ――歯茎をむき出しにしながら? 「もちろん」 ――意外ですね。 「いわゆる前衛ベジタリアン。その作業で月に200 万程度はコンスタントに稼いでたんだけど、ある日 ふっと思っちゃったの。『ボクの人生これでいいの か』って」 ――なるほど、それで恵比寿様に? 「いや、その時はまだそこに発想が行かなかった。 生活に疑問を持ちながらも、一日じゅう郵便ポス トに抱きついたり、クロスワードパズルしてる人の 邪魔したりしてた。でもさ、その時期があったか らこそ、アバラ骨を何本か骨折することができた わけだし、結果的にはバームクーヘンを作る技術 も覚えたし、なんというか…」 ――あ、すいません。ちょっと携帯がブルってるん ですけど、出てもいいですか? 「え!? あ、まあいいけど。キミ、けっこう大胆ボー イだね。武田信玄の末裔?」 ――ピッ…もしもし、あ、今?うん。大丈夫… うん。とりあえず、こっちも仕事やっつけちゃうから。 お前、メンバー集めて先に崖から飛び降りといて。 ヨロスィク〜。…ピッ。あ、すいません。何の話で したっけ? 「え〜と、ね。だから、ボクがその後“恵比寿様養 成所”に通うまでにね…」 ――あ、すいません。また着信が…。 「ぶっとばすぞこの野郎!」 ――なんだとこの野郎!  そうして二人は朝まで互いをゴボウでしばきあった。 春の星座たちはそれを見守っていた。


コピペ元 「変人ラジオ書き起こし
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