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第十二話
K-report #
         41

 No.41 異常天才、第五十七代黒田五右衛門に関する 57の報告書 この文書は、現在、我がゲルマニウム・アイランドを 事実上独裁支配している、 第五十七代黒田五右衛門に関する報告書である。 No.41では、ゼロエリア特別区内で調査中に発見された 黒田五右衛門の 日記らしき文書の断片を公開する。    *       *       *    *       *       * F−72年 P月48日 眼球がくるくる自転を始めたら、それが軟体動物のチ ギレトブ合図だ。 紫色の花が腕の端からどんどん生えてくる。生えてき たら危険だ。止まらない。 部屋の壁が全部ドロリと溶け出して、いくつもあった ドアが見えない。 怖い。体に穴が開いている。 スピードが上がりすぎてまともに前が見れないカーブ を曲がりきれない 曲がりきれないだめだぼくはもうだめだ。 誰の名前を呼べばいい。 僕の辞書には大切な言葉がない。 僕はこのままではいずれ壊れてしまうだろう。 だから決めたのだ。僕は僕を分断する。 肥大しすぎた脳味噌を、二つに分けて、片方をどこか の誰かに預けよう。 いつか僕と僕とが出会う時、その時に、僕Aが僕Bを 愛することができたなら、許すことができたなら。 そうさその時、僕は初めて僕になれるんだ。    *       *       *    *       *       * 以降の調査結果についてはNo.42の報告書で述べる。 ゲルマニウム開放同盟 第5エリア支部