第十二話
K-report #
41
No.41 異常天才、第五十七代黒田五右衛門に関する
57の報告書
この文書は、現在、我がゲルマニウム・アイランドを
事実上独裁支配している、
第五十七代黒田五右衛門に関する報告書である。
No.41では、ゼロエリア特別区内で調査中に発見された
黒田五右衛門の
日記らしき文書の断片を公開する。
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F−72年 P月48日
眼球がくるくる自転を始めたら、それが軟体動物のチ
ギレトブ合図だ。
紫色の花が腕の端からどんどん生えてくる。生えてき
たら危険だ。止まらない。
部屋の壁が全部ドロリと溶け出して、いくつもあった
ドアが見えない。
怖い。体に穴が開いている。
スピードが上がりすぎてまともに前が見れないカーブ
を曲がりきれない
曲がりきれないだめだぼくはもうだめだ。
誰の名前を呼べばいい。
僕の辞書には大切な言葉がない。
僕はこのままではいずれ壊れてしまうだろう。
だから決めたのだ。僕は僕を分断する。
肥大しすぎた脳味噌を、二つに分けて、片方をどこか
の誰かに預けよう。
いつか僕と僕とが出会う時、その時に、僕Aが僕Bを
愛することができたなら、許すことができたなら。
そうさその時、僕は初めて僕になれるんだ。
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以降の調査結果についてはNo.42の報告書で述べる。
ゲルマニウム開放同盟 第5エリア支部
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