第五話
germanium island
教育用小冊子「この島のれきし」より抜粋
かつてこの国には
ゴミとガレキから作られたとても大きな島がありました
国じゅうのいらないものをそこに集めたために、山より
も高く高くなった島でした
その島のまわりはとてもいやなニオイで満ちていました
そこに近づくのは、虫と、カラスと、ゴミを捨てに来る
人だけ
だれも、その島のことを見ようとはしなかったので
その島は、目には見えない島と呼ばれていました
しかしある時
空に大きな穴が開いて火の雨が降ると
南極の氷がとけて
わたしたちの街は海に沈みました
たくさんの命が海に沈みました
この国のすべてのものが海に沈んだのです
しかし沈まなかったものがひとつありました
この国で最も高い場所
ゴミでできた島、目には見えない島でした
生き残った人々はその島に住み
ゴミを頼りに、ふたたび生きていくことにしたのです
捨てられたものから、全てをふたたび生み出そうとした
のです
誰かがその島をこう名付けました
うすぎたない、はかない、しかしそれでも輝こうとする
灰白色のもろい結晶
ゲルマニウム・アイランドと
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