第
一
話
chicket
to
the
party
さあ、ピコル君の話を始めようか。ピコル君が生きてた
頃の話。正確には、未来の話だ。
ピコル君はその日も公園に子供たちを集め、生きてくう
えでの黄金律を説いていた。
「いいかい?頭の上にむやみにリンゴを乗せてはいけな
いよ。矢で…射られてしまうからね。」
空は青く澄んでいた。ピコル君を見る子供たちの目は透
き通っていた。
ピコル君の一言一句を逃さぬように、全員がハンディカ
ムをピコル君に向けていた。
「よし、今日はだいたいここまでだ。最後に、本日の格
言をさずけよう。」
暖房の温度を2度下げるだけで、電気代は随分ちがうよ
なあ。
でも、それってさ、恋愛と一緒だよね…。
「この台詞を毎朝、鏡に向かってつぶやき給え。みるみ
るうちに顔が猿に近づいていくよ。見違えるほどにね。
」
子供たちは、目に涙を浮かべていた。
そんなありふれた朝。全身をコンクリートスタイルでび
っしり固めた、いなせな男がピコル君に近づいてきた。
「ピコル・ド・オードトワレさん、ですね?」
緊張が走った。ハンディカムが一斉に謎の男に向けられ
た。しかしピコル君は動じずに答えた。
「ああそうだ。どこの国でも人間国宝、ピコル・ド・オ
ードトワレとはこの俺だ。」
「パーティの紹介状です。」
ピコル・ド・オードトワレ様
前略、窮鼠猫を噛む季節となりましたが、いかがお過ご
しでしょうか。逆上していますか?
来たる2月29日。うるう年フェチを集めての骨折パー
ティを企画しております。
いろんな骨を用意しましたので、思う存分折っていただ
けます。
なお、優勝者には徳川家康のぬいぐるみをプレゼントし
ます。
ぜひ、お越しください…
黒田 五右衛門
「なるほどね…。」
ピコル君はつぶやいた。
そして、携帯のストラップにしていた自分のヘソの緒を、
引きちぎった。
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