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『ミキティの真の目的が発覚した件』


「メグ・・・外が騒がしいようだが今日は何かあるのか?、とゆいたい」 
部屋の隅っこで小さくなっていたマーサー王だがアジト内の異変に気づくなり顔をあげ尋ねる 
同居人兼見張り番のメグ・アンブレラも特に差し当たり無いと判断したので喧騒の正体を告げる事にした 
「さすがマーサー王、お気づきのようですね 
 実を言うと今日はミキティがこのアジトに帰ってくる日なのです、リカチャンのような仕事の無い者には一大イベントなのでしょう」 
「ミ、ミキティが!?」 
以前にも一度触れたがここはミキティ一派のアジトである小さく古びた建物 
だがミキティのアジトとは言えここではマーサー王はミキティの顔を一度として見る事はなかったのだ 
小さな屋敷ゆえにマーサー王の軟禁されている部屋から建物内のほとんどを見渡す事が出来るのだが、見るのはミキティの部下ばかり 
どうやらミキティはなんらかの理由でどこかに外出していたらしくこのアジトに立ち寄る事はほとんど無かったのだった 
そしてそのミキティが諸々の任務を終えこのアジトに帰ってくるのだ 
「来ました!ミキティ様、そしてならびにコンコン様とマツーラ様のお帰りです!」 
ミキティの部下であるミヨシの声とともにアジトの本門がバタンと開く 
本門をくぐり現れたミキティはマーサー王が見る限りあの大戦当時とほとんど変わらない容姿をしていた 
だがそんな事よりマーサー王はミキティが後ろに従えていた2人の若者の顔ぶれに驚いたのだった 
その一人は元帝国軍師であり、ミキティが失踪した時期と同時期に行方不明になったコンコン・バックマウス 
そしてもう一人はこの世で最も優れた傭兵と謳われていたマツーラ・アティス・ヒメモンキだ 
コンコンがミキティについている事は大体想像できたもののマツーラの存在はまさに予想外 
理由はどうあれマツーラほどの実力者がミキティと手を組んでいたとしたら大ピンチだ 
真贋は不明だがマツーラは全身が鋼鉄で出来ていて、打撃・斬撃・銃撃全てを無効果するという噂が流れている 
「サイボーグ」の異名を持つマツーラに食卓の騎士が勝利する事は可能なのだろうか? 

さきほどまで騒々しかった館内も主人の帰還に水を打ったように静まり返る 
そしてその厳かな空気の中ついにミキティが口を開き始めた 
「リカチャン、私が居ない間に何があったか教えてくれないか?なるべく詳しくな」 
ここで話し相手に選んだのはミキティを相手にしても緊張しない者の一人であるリカチャンであった 
ミキティが不在の中リカチャンは一応一派のまとめ役として尽くしてきたので当然ではあるが 
「そーねー、結構色々あったから何から話そうかしらねぇ・・・う〜んとぉ・・・え〜っとぉ」 
今年で結構良い年になるくせにクネクネしたりブリったりして焦らすリカチャンにその場の全員がイライラし始める 
中でもマツーラは気が短いのか、それとも癇に障ったのか我慢できずにリカチャンにメンチを切ってつっかかっていった 
「リカチャン空気読めないの?ていうかアタシ達長旅で疲れてるんだからこんな所でイライラさせないでくれる?」 
マツーラの挑発的な発言にまたも場の空気が凍り付いてしまう、プライドの高いリカチャンがこんな風に言われたら・・・ 
「あ゛ぁ!?てめぇの全存在がうぜぇんだよ!!」 
「あぁ?やるの?リカチャンやるの?潰すよ?四天王最強のアタシに勝てると思ってるの?潰すよ?」 
「うぜぇんだよこの猿が!!てめぇの指を一本一本丁寧にポキポキ折って差し上げてやがろうかぁ!?」 
・・と、こんな感じに喧嘩が始まってしまうのだ 
とは言えミキティの前なので本格的にやり合うなんて事は無いのだが、それにしても二人とも鋭い目つきをしている 
かたや最強の傭兵、かたや元帝王の右腕、どちらも実力と同じくらいプライドも一人前だ 
そしてマーサー王はこの2人をいとも容易くまとめているミキティに畏敬の念を抱かずにはいられなかった 
ところでマツーラは四天王がどうのこうの言っていたが、マツーラとリカチャンの他にも実力者がいると言うのだろうか?・・・ 


「と、とりあえず今までの成果を順を追って説明するわね」 
ようやく正気に戻ったリカチャンが自分の痴態に顔を赤らめつつも話を進める 
外野から「最初からそうすりゃいいのに」と言う声が聞こえついキレそうになるがグッと抑える 
「まずは私とミヨシちゃんとオカダちゃんのマーサー王拉致計画、これはバッチリね・・・ほらそこ」 
リカチャンが指差したのはマーサー王の捕らえられている部屋だ、聞き耳をしていたマーサー王もハッとする 
館内にいる全員がマーサー王に注目したので当然マーサー王とミキティの目が会ってしまう 
「ミキティ、せっかくだからマーサー王に挨拶でもしたらどうかしら?」 
「いや・・・必要ない、私たちの目的は友好なんかじゃないのだからな」 
「そぉ?じゃあ話を続けるわね」 
このミキティの態度はマーサー王にとって屈辱以外の何物でもなかった 
確かに自分は捕らわれてはいるし、この状況では権力も何もあったものではないのだがこうも邪険に扱われるのは腹立たしいものだ 
友好目的ではないにしろ何か一言でも声をかけるべきではないだろうか・・・ 
「それでね、マーサー王を拉致したついでに食卓の騎士のミヤビって子に大怪我負わしたわ、たぶんあの子戦争には出れないかも 
 別たったに一人戦闘不能になったからってどうって事ないけど一応報告しておくわね」 
「いやそれは有益な情報だ、そのランクの騎士を一人欠くだけで王国と帝国の戦力バランスが大きく崩れるからな 
 数ヶ月で治る程度の怪我なら必要ないがそう言った事実はどんどん報告してくれ」 
このミキティの発言を聞いてマーサー王は不思議に思うところがあった 
王国と帝国の戦争を気にするのは別に不思議な事でもないが何故戦力のバランスまで細かく把握しようとしているのだろうか? 
ミキティの言いぶりはあたかもまるで己が戦争を手のひらで操ろうとしているようにしか聞こえないのだ 

「次に行われたのがカノンの風説の流布ね、これは報告するまでも無いくらい大成功よ 
 カノンの書いた新聞のおかげで帝国民の反王国感情はバッチリみたい」 
「そ、そんなに褒めないでください・・・」 
リカチャンの報告に顔を赤らめたのは他でもないカノン・ミロドリン・ツブログだ 
彼女はエッグ7人集の一員ではあるが他のメンバーと違って戦闘経験はゼロに等しい 
だがその代わり有り余るほどの文才を持っているためミキティに直接スカウトされたのだった 
いくら他のエッグが強かろうと戦争を起こす事など出来ない、しかしカノンはペンと紙だけで反王国感情を引き起こしてしまったのだ 
まさにペンは剣より強し、ある意味このカノンはミキティすら上回っているとも言えるのかもしれない 
「そうかカノン良くやってくれたな、君なら出来ると思っていたよ」 
そう言うとミキティはカノンの頭を優しく撫でてあげる 
マーサー王から見ればあのミキティが穏やかに仲間の頭を撫でるなんて信じられない事であった 
てっきり血も涙も知らぬ狂人かと・・・とは言えミキティが情を持ったとは言え許せる訳はないのだが 
「ちょっと待ってくださいよ、カノンばっかり褒められてるけど私たちだって頑張ったんですからね! 
 リカチャンさんちょっとその辺早く説明してくれませんか」 
「う・・・うるさいわね分かってるわよ」 
撫でられるカノンに嫉妬し大声でリカチャンに物申したのは同じエッグ7人集のユーカ・ブルパレットだった 
大鎌を扱いあのヒトミ・ボスの右腕を切断した張本人だ 
「はいはい、次に行われたユーカとコレティとキッカによるヒトミ・ボスのスカウト活動は失敗・・・ 
 あら!?そういえば貴方達って任務失敗してたじゃないの!あやうく流される所だったわ」 
「あ、あれ?・・でも私ヒトミ・ボスの右腕をスパッと斬りましたけど?・・」 
「斬っちゃ駄目でしょ!貴方達の任務はヒトミを私たちの仲間に引き入れる事じゃなかったの!」 
「え・・だって・・・断られちゃったんですもん・・・」 
リカチャンに叱られたユーカは何も言い返せなくなって瞳に涙を浮かべてしまう 
主であるミキティに褒められたカノンと違ってユーカは同僚のコレティになだめられるだけなのであった 

「そういやエッグって7人いるんだよね?ここには4人しかいないじゃないの 
 アタシもいちいち顔覚えてるわけじゃないからよく分からないんだけど何してんの?」 
やや疲れた感じに腰をトントン叩きながら言い出したのはマツーラ・アティス・ヒメモンキだった 
確かにマツーラの言うとおりこの場にはエッグ七人集がコレティ、ユーカ、キッカ、カノンの4人しか居ない 
普段エッグと絡みの少ないマツーラだがさすがにこれには気になったのだろう 
「ああ、残りの3人には私が重大な任務を与えておきました」 
マツーラに問いにリカチャンの代わりに答えたのはコンコン・バックマウスだ、その場のみながコンコンの側を振り向く 
「ふ〜ん、そうなんだ・・・ていうかアタシ知らなかったんだけど」 
「はい!言ってませんので」 
「・・・なんで?」 
「マツーラさんに言ってもしょうがないと思いましたので」 
「おい」 
コンコンの発言にイラッとキたのでつい殴り飛ばしそうになったマツーラだがなんとか心の中で自分を説得し拳を下ろす 
コンコンは悪気があるわけじゃないんだ・・・こういう子なんだ・・・と5回は繰り返したという 
「でもそのうちの一人ロビン・キュジー・ストューカスの活動だけはマツーラさんにも関連しているので伝えておきますね 
 現在ロビンはモーニング帝国の一般兵になりすまし潜入しています」 
「へぇ結構大胆な事してんのね」 
「はい!で、潜入している理由は言うまでもなく分かると思いますがマツーラさんのオツムの程度を考慮して説明しますね 
 王国と帝国が今度の戦争で引き分けるのが我々にとって最も好都合ですのでそれを促進するために潜入してるのです 
 王国が有利そうだったら食卓の騎士を射抜き、帝国が有利なら帝国剣士を射抜くといった感じですね 
 まぁいくらマツーラさんの思考能力がアレとは言えここまで詳しく説明するのは野暮でしたかね」 
「コンコンは悪くないコンコンはこういう子なんだコンコンは悪くないコンコンはこういう子なんだ・・・・・・・・」 


コンコンの説明に継ぐようにミキティも続けざまに語り始める 
「前回の大戦では上手い具合に帝国と王国を引き分けにする事が出来たからな 
 今年は決行の時だから前回以上に帝国と王国には共倒れになってもらわなくてはならない、それにはロビンの能力が最適だろう 
 コンコンは相変わらず良い人事をしてくれる・・・本当に助かるよ」 
褒められて嬉しいのかコンコンもカノンと同様に顔を赤らめる、そのような和やかな様子に場も温まっていった 
だがさらりととんでもない事を言うミキティにマーサー王が注目しない訳がなかった 
前回の大戦で帝国と王国を引き分けに・・・確かにミキティはそう言ったのだ 
「引き分け・・・!?いったいどういう事だ!!貴様がいったい何をしたのだ!!」 
急に大声を出すマーサー王にその場にいる全員の視線が集まる 
そしてさすがのミキティもその声を無視する訳にはいかなかったのだ 
「何を取り乱しているマーサー王、大戦が仕組まれていた事がそんなにも意外か?」 
「これから出す質問に答えろ・・・あの大戦で何をした?いつから組織を組んでいた?・・・そして目的はなんだとゆいたい!」 
怒鳴りだすマーサー王を快く思わないリカチャンとマツーラが黙らせようと前に出たがミキティがそれを制する 
「二人とも下がってくれ、どうせマーサー王は食卓の騎士ヌキでは何も出来ない無力な存在だ 
 ならばせめてその無力な存在に情報くらいは与えてあげようじゃないか」 
そう言うとミキティは自らマーサー王の捕らわれている個室の前まで歩いていった 
「まずは・・・そうだな、一番知りたがっていそうな我々の目的から教えてあげようか 
 我々の目的はただ一つ、この地の宝であるヤマザキャリバーを奪い取る事だけだよ」 
「ヤ、ヤマザキャリバー・・・!」 
ヤマザキャリバー、その言葉を耳にするだけでマーサー王の体が震え始める 
普段は優しき父も祖父もヤマザキャリバーの話をする時は人が変わったかのように厳格になったものだ 
ヤマザキャリバーの恐ろしさは誰よりもマーサー王が知っている 
そしてミキティがヤマザキャリバーを利用して何を企んでいるのかもすぐ理解する事が出来たのだ 
「ハ・・・ハロマゲドンを起こす気か」 
「当然、それ以外に何がある? 
 我々はヤマザキャリバーを得るために帝国と王国には無力になってもらわなくては困るのだ、理由は言うまでもないだろう?」 

「あの大戦の前には私が帝王になる事が内定していたのは知っているな? 
 その時代々モーニング帝国の歴代帝王のみに伝えられるヤマザキャリバーの存在を知ったのだよ」 
ヤマザキャリバー、あまりにも危険すぎる存在のためミキティの言う通り限られた者にしか伝えられて来なかったのだ 
その限られた者とはマーサー王国の歴代国王とモーニング帝国の歴代帝王のみ、これなら秘密が守られると先人は思ったのだろう 
実際はミキティと言うイレギュラーにより思惑は潰えてしまった訳だが 
「秘密を知った私は舞い上がるような気分ですぐコンコンにバラしたさ、私の力とコンコンの知恵さえあれば不可能は無いからな 
 その後作戦の遂行を確かなものにするためリカチャンやマツーラとも接触し勧誘する事が出来た 
 そして今日この時のために戦争を引き分けに追いやり両国民に戦争というものの恐怖を植え付けたのだ」 
そう言うとミキティはさらに前に出てマーサー王のアゴを軽くつまみ更に言葉を続ける 
「コンコンが用意した帝国の布陣は無理矢理引き分けるための布陣だ、その気になれば軽く勝利する事など出来たのだ 
 それとあの時なぜ両国民が武器を持って戦場に向かったのか分かるか?あれも全て我々が手引きしたのだよ 
 国民が兵士にバッサバッサと斬り捨てられうやむやのまま戦争が終了する・・・両国民に怒りと恐怖を感じさせるには理想的な状況じゃないか」 
ミキティが言い終えると同時にマーサー王の右ストレートが放たれた 
怒りが篭ったその重い拳に頬をやられたミキティは殴られた勢いで吹き飛ばされ壁に背を打ち付ける 
「ぐっ・・・」 
「貴様がぁっ!貴様が罪の無い国民をっ!・・・己のくだらない欲のために・・欲のために国民をっ!!」 
怒り狂いあたりに叫び散らかしたマーサー王だったがしばらくすると落ち着きを取り戻しこう言い放つ 
「・・・ミキティ、私が死ねばお前の計画は台無しなはずだ・・・ならばいっそここで死んでやるとゆいたい!」 
なんとマーサー王は口を大きく開け、勢い良く己の舌を噛み切ろうとしたのだった 
だがその瞬間ドスッとした音がマーサー王の腹に響き渡る 
「マーサー王、今は寝ててください」 
舌を噛み切るつもりだと瞬時にした判断したメグ・アンブレラに鳩尾を強打され、マーサー王は気絶していく 


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