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新・漢を磨け!俺の修行日記 -#4 Validation -

先週、霧雨の中こっそりとトミンに赴き、転倒後初のスポーツ走行を行った。まずは無難なペースで走り、無事に帰ってから一人反省会を開き、書物などと合わせて考えて辿り付いた結論「外足荷重ってなんなんじゃあ!?」。

今週は、その疑問を解決すべく再びトミンへ。そう、2週連続だね。やる気は満々。でもちょっとやる気がホイールスピンしてるね・・・なレポートです。

予約とってどうの、って話はもう面倒なので割愛。で、とにかくコースに行くと、空いてました。俺を入れて3台。素晴らしい。

まず、前回と同じく、2速、3速を使って走る。で、今回とても気になっている「外足荷重」というものを考えたのだが・・・ぬうぅ・・・。わからん。
左コーナーでは、確かに左足の荷重は抜けていて、加速に入る(いわゆる二次旋回か)と、ケツがシートに押し付けられるような感じがする。これは、教科書通りの感覚でよい。自分でも、やはり安心感もあるしタイトに周れてると思う。
しかし、右コーナーでは・・・右足が思い切り踏ん張ってる。左(外)足はステップにしっかり乗せて、したがって以前のようにケツを完全にシートから外す超ハングオフではなく、半ケツのハングオフ(こっちが正解らしい)で、右(内)足はステップにつま先を乗せた状態。にも関わらず、右足は思い切り踏ん張った状態であり、体重の多くを支えている感じだ。逆に、ケツには荷重感は少ない。
ついでに、グリップも外側(左)に力が篭って押している感じだ。
これは、非常によくなさげだ・・・。
内足を踏ん張らないようにすると、どうにも不安定になる。あれれ・・・。

結局、この日は後半には1速と2速を使って走ってみたが、回転が上がって音はレーシーになっているものの、コーナリングに迷いを抱えたままではアクセルも開けきれず、実際にはたぶんあんまり速くなかった。2、3速の場合とタイムを比べたかったが、やはりあの忙しいコースでストップウォッチを操作する余裕はなかった。一緒に走っていた人との比較で見ると、2、3速の場合より1、2速の場合の方がラップタイムで言えば、0.5秒程度は上がっているのかな、と思えたが、コーナリングもスムーズさに欠けて、全然俺の妄想通りの走りにはならない。

いろいろと思い出しては試し、検証を試みるがいい手応えは感じられない。ラインも相変わらず乱れている。
ムキになって周回を続けていたら、休憩時にさっきまで滝のようだった汗がすっと引いた。アレ?暑い筈なのに・・・(後で知ったがこの日は梅雨が明けた)・・・なんかマズい兆候だなと思い、水分をとって空調の効いた小屋で休んで、その日の走行を終えた。

この日は、結局、余計にワケがわからなくなってしまった。
参ったな・・・と思っていた帰り道、高速のパーキングでふと電話を取り出すと、メールが来ていた。浦和に住む古い友人からだった。
彼・・・ここでは「マッシュ」としておこう、マッシュは高校時代の友人で、高校の頃は俺がバイクに乗っているのを羨んでいただけのショボ太郎(いや、地元神奈川は3ナイ運動の発祥地で、高校生でバイクを許可される家は少なかった)だったが、学生になってからは早速免許とバイクを入手して草レースにも参加するようになり、果てはかなり有名なバイク関連企業に就職してしまった漢だ。
10数年前には俺の胡散臭いウンチクに聞き入っていたマッシュも、いまやライディング、工学面の技術・知識とも俺よりは確実に上だ。ここは俺も素直になって、ちょっと相談をしてみよう。ふふふ、負うた子に教えられ、とはこのことか・・・(いや、背負ったことはないかも知れんが)。
久しぶりに会って、結構いろいろと話をしたが、ライテクに関しては・・・なにせ、彼は実際の俺の走りを見ていないから、どこが悪い、というような指摘は無理というものだったようだ。そりゃそうか。
ただ、荷重がなんとか、ってのがワケわからなくなった、という俺に、彼が言うには、「俺は乗り方で迷ったらしばらくリーンウィズで走ってみるよ」とのこと。
それは使えそうだ。
さっそく試してみよう、との思いを胸に俺は家路に付いた。

さて、そして次の日、つまり日曜日。昨日の思いつき、つまりリーンウィズで落ち着いて走ってバイクのコントロールを再確認してみよう、を実行したくて仕方ないので、奥多摩に行く事に決定。
奥多摩周遊道路はどうせ早朝にはゲートが閉まっている。ので、普通に寝坊して昼頃に家を出たのだが・・・道が混んでるなあ・・・。
新青梅街道なんかは広いからいくらでもすり抜け可能なのだが、奥多摩が近づくにつれて、道幅が狭く、キャットアイの設置などもあり、見通しも悪くなるのですり抜けは難しくなってくる。しかも、夏休みの休日なだけに、本当に盆と暮れしか運転してねえだろ?ってなドライバーが、有り得ないようなスローペースで繋がって走ってる。
ああ、やっぱ朝に出るべきだったと後悔しながらも周遊道路に到着・・・と・・・ああ?なんてことだ!ここまで来たのに、「がけ崩れで通行止め」だと!?
もうガックリくんですよ。俺はここまで何しに来たんだ・・・。が、嘆いていてもしょうがない。山のふるさと村までは通行可能らしい。だいたい、今日はリーン・ウィズで走りに来たんだから、その辺までで十分だろう。
入ってみると、走れる区間は短いが、行き止まりになるために空いていて、逆に良かったかな、とも思えてきた。
入り口ゲート近くの駐車場には、四輪の走り屋が結構いる。バイクのも数台。ツナギ着用のホンキマンだ。
今日はリーンウィズで。だから、人と競うように走るなんて滅相もない。
そう思って走り始める。ううむ、しかしやっぱり、俺は右コーナーでは内側ステップを踏み込んでいる感じがする。
ああ〜、チキショウなんなんだよ、と思いながら走っていたら、図らずも前方で駐車場からスープラ発進。まあ、別にどうでもいいんだけどさあ、俺はリーンウィズ男だしぃ・・・と思いながらもなんでしょう、これはライダーの意地ってヤツなんでしょうか、極低速からの加速で四輪に置いていかれることは受け入れられません。
あんましせっついたら感じ悪いので、50mくらい置いて、1速を引っ張る・・・よしよし、そりゃそうだ、そう簡単に置いてかれるマイティフロッグじゃないよいくら俺がウィズ男であってもな、と思っていたら、コーナーが連続してくるところで徐々に離されてしまった。あちゃ。
しかし、ここでムキになってはいけない。つーかよう、俺はウィズ男だし、こんな路面に縞々が彫ってあるところで限界に挑めるかよ!とおもむろに開き直って冷静さを取り戻したような感じだったのだが・・・。
なにげにこれが尾を引いた。以降、リーンウィズでじっくり荷重移動の研究、の筈がだんだんハイペースになって来て・・・危うく崖から離陸するかと思いました・・・。
長い直線で、「1速で引っ張るとどのくらい伸びるのかなあ・・・」とか考えながら走っていたらオーバースピードになったようだ。思い切りバンクすれば曲がれたかも知れない気もするが、「しまった曲がれん!」という考えが一瞬、頭をよぎったが最後、バイクを寝かすタイミングを逃してしまった。いわゆる壁に吸い込まれる現象か。
それでもフルブレーキしつつ若干だけでも右に右にと(右コーナーね)逃げて、こんなところで挑戦したくはなかったストッピー状態(前輪がロック間際で後輪が上がって移動する技)を、まったくやる意思もないのに実践しつつ、ガードレールの15cmくらい手前でなんとか停止。ただし、インチキストッピーからパタンと横に倒れて、結局また「転倒」です。
はあぁぁ・・・・。何やってんだろうな俺は。
もう口から魂がはみ出た状態で山を降りました。バイクの損傷はほぼ無し。壊れたカウルにしてあるし、一瞬取れてるように見えたウィンカーも、外れるように作ってあったようで、パコッとはめたら元通りになった。
まあ、ブレーキレバーがちょっと曲がった(レンチで修正)のと、ステップが欠けたってのも実はあるんだけど・・・。昼飯数回分程度ではある。もちろん、怪我は一切してない。最終的には立ちゴケみたいなもんだったからな。

だいたい無事なのはよかったけど、この前のハイサイドよりも恐怖はあった。なぜなら、ここは公道。コースアウトしたら壁に崖だ。つまりバイクで危険なのはこういう場合だ。
奥多摩湖畔で缶ジュースを飲みながらひと休みして、帰途についた。
なんか、このバイクに乗ればものスゲえ速く走れると思ってたのに、いいことねえなあ・・・としょっとショボくれながら帰りの青梅街道を走っていた。走りながら、漠然と何かを考えて・・・それでもすり抜けを繰り返し、適当なペースでワインディングを縫う。

しばらく走っていると、なぜか、だんだんと頭が整理されて来たような気がした。
俺が今日もまた犯した、一番のミスは何だろう?ブレーキングが甘い?目線がどうの?・・・そういうのももちろんある。が、大前提をひとつ間違えていたのだ。
何時の間に、俺は「独りチキンレース」に没頭していたんだろう。
コーナーに進入する速度が速すぎて怖いと思っていた。が、旋回中に失速するのだからもっとブレーキは遅らせられる「筈」だと考えてギリギリまで引っ張った。で、わずかに気が緩んだらこの結果。確かに、レースでは「突っ込み勝負」ってのもあるだろうが・・・本来、怖いというのは、曲がれない危険を感じているからであって、そしてそれは大抵は勘違いじゃない。
他の誰かには曲がれる速度でも、その時の自分には難しいのだ。そして難しくて失敗したら、下手すりゃ死んでしまうのがバイク。
賭けに出てはいけないし、「理屈ではこうすれば曲がる筈」でもない。コーナリング中の体とバイクの微妙な動きはすべてテキストで解説されるものでないし、読めばできるものでもない。・・・当たり前だ。
もちろん、だからと言って、本なんか無意味というワケではない。が、本で書いてあったのとまったく同じ動きをして、まったく同じフィーリングを得られなければいけない、とそういうことではないのだ。
人の感じ方は様々だから、他人の解説は・・・それは解説で飯を食ってる者の言葉ならより多くの人が共感できる筈だが、それでもまったく同じではないだろう。しかし、その一方で恐怖と安心感というのは感覚としては絶対的だ。
自分では、本で書いてあるのと似たような乗り方をしてる筈・・・だから曲がれる筈・・・なのに怖いとしたら、それはやはり何かが間違っていることを示している。そこでやるべきことは、曲がる筈なんだから突っ込むってことじゃなく、まだ自分の乗り方は間違っていると気づくことだった。
ハイサイド以来、俺は自分の走り方を全否定するようになっていた。もう、「だいたい、ブレーキレバーへの指のかけ方も悪いんじゃねーか?」と変えてみたりしたくらいだ。俺は中薬小の3本掛けだったが、たぶん多いであろう人差し指と中指の2本にしようとしたのだ(でも、なんかブレーキし辛かった)。
確かに、腰を大きく落とし過ぎだったり、極端な前乗りだったりと、明らかに直すべき点も多い。
そして、俺がすぐに転倒するのはすべてそういうことが原因だと思っていた。リヤに荷重がないからハイサイドするんだと。
しかし、今日のでわかった。俺がコケる原因の一番は、リヤ荷重不足ではない。怖くなってもペースを上げて突っ込んでしまうことがある特攻精神だ。
たしかに、そうやって自分の技術力の限界ギリギリで走れば、同じ技術の仲間よりは速い。しかしそれは偽りの速さだし、それに頼っていては成長もしない。そしてなにより、最終的に払うべき代償はきっと大きい。

言葉で説明するのは難しい。結局、だからやっぱりちゃんと技術を高めなくては、ということに落ち着くのだが、ちょっと心境の変化があったのだ。きっと。

次はもっと楽しく走れるような気がするのだ。

だけどやっぱし、峠では頑張り過ぎちゃいけないな。安全マージン、ね。なんでそういうのすぐ忘れちまうのかな・・・しかし、もう忘れないと思う。161kgの車体に125馬力というのは、もはやどこでも使い切れるパワーではないとわかったから。(TOPへ