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新・漢を磨け!俺の修行日記 -#1 Stay Away -

やっと手に入れた愛機を、慣らしを終えた次の日にハイサイドで壊してから数日が経つ。
俺のZX6R”マイティフロッグ”号は、翌日にバイク屋に預けていまは修理待ちだ。
まず、カウル以外の損傷をチェックする必要と、間違いなく高額な修理費と相談して、どうやって直すか・・・ローンか、少しずつ直すか、できるなら一気に直すか、それを決めねばならない。

もともと平日はまずバイクには乗れないが、家に帰って在るべきものがそこに無いと、やはり、ああ、壊しちまったんだよなあ・・・という寂寥感と後悔が込み上げる。
なにせ悔しいので、やはり何かにつけ、転倒のことを考えてしまう。なんで転ぶのか?いつも自分がどう乗っていたか?どんな感触で走ってたか?

そして、落ち着いて考えると、いろいろと気づくこともある。
そもそも、俺のコーナリングにはおかしいところがある。ハングして膝を擦っている時に、胸がタンクにあたるのだ。それだけ姿勢が下方向に移動してるってことでイイと思ってたんだが。
よく考えると、重心がバイク本体の、しかもフロントに残ったままになるワケで、オフセットしたケツだけが体重移動を担ってしまうではないか。
ケツだけの移動では重心が十分に移動しないから、バンク角が深くなって、たいして速くないコーナリングスピードで腰も目いっぱい落としてるのにステップも擦ってしまうのかと。で、後輪の荷重が抜けてるから、コーナリング中にリヤがフワフワすることがあるのじゃないだろうか。もっと腕を伸ばして、体を起こす必要があると考えられる。ハングした姿勢で体を起こせば、それはより後ろかつ内側に重心を持っていくことになるはずだ。

ブレ−キングも悪かった。ちょっとペースを上げるとロックしかけてタイヤがホップすることがよくあったのだが、その割にはその後のコーナーでは失速してたりすることが多かった。つまり、この場合は減速し過ぎということだ。逆に、何気なくコーナーに侵入してから外に膨らんでいっていつまでも旋回が終わらない(大周りになる)ことも多い。これは減速が足りない。
まずひとつの問題としては、やはりブレーキの使い方が悪かったと思う。大きく減速しようとすると、オンオフスイッチのように、ガツ!と握りこんでしまうことが多かったのだ。
しかし、もう一歩突っ込んで考えると、ラインの問題が絡んでいるのだと思う。
俺の走るラインは、短い都民モーターランドのコースであっても1LAP毎に違う。思ったところに入れない、というよりは、ラインを考えてない、と言った方が正確かも知れない。コーナーに入るにあたって、どこを走るっていう設定がないのだ。いま走ってるところから適当に内側寄りに入り、外側寄りに立ち上がる、という漠然とした感覚しかない。
そのせいで、コーナリングにメリハリがなく、膝を擦っている時間が長い。これも最初は「膝擦りまくりだぜ!」とか思ったのが本音だが、進入から立ち上がりの直前までやたらに擦るというのは、つまりバイクが寝たまんまなので、アクセルが開けられないではないか。
そして、コーナリングには必ずどこか一点、減速から加速に転じる点、つまりはもっとも速度が小さくなり旋回がし易くなる点がある筈で、それを即ちクリッピングポイントと呼べばいいのかと思うが、俺の走りにはその概念が欠落している。
もちろん、用語としては知っている。実感としてもまったくわからないワケではない。だが、いざサーキットを走ると、忘れてしまう。なるべくスピードは落としたくない、少しでも速くアクセルは開けなければ、そう気持ちが急いて意識は加速にばかり集中し、肝心な曲がるという行為がおろそかにされていたということだ。
そして、このクリッピングポイントというものは、最大に減速する点であるという性質上、言ってみればブレ-キングの目標地点でもある。それを設定せずに走っている以上、ブレーキングに「どの地点までに」「どの程度」減速するという目的がないのだから、減速が大きすぎたり小さすぎたりして、結果、切れ込んだり膨らんだりというオマケまでつくばかりか、コーナリング中に補正の加速・減速まで行うこととなり、非常に不安定な走りになるのは必然と考えられる。

※後日、本やネットを見ていたら、クリッピングポイントというのは正確には「コーナーの内側にもっとも近づく点」のことだそうだ。したがって、ここで俺がクリッピングポイントと呼んでいるのは「最大に失速する点」なので、本来の意味とは異なる。この失速点が本来の意味のクリッピングポイントとは別の位置にある、ということと、それらを区間でなく名の通り「点」で捉えるということが肝なのかな、と思った。

結局、こう考えれば明らかなのは、いかに俺が頭を使わずに走っていたかということだ。
もちろん、いままでだって多少の試行錯誤はしている。が、すぐにそれを忘れたりするのは、結局それを軽んじているからである。
気合でなんとかなると思っていたところがあった。そしてそれは、「技術はそこそこある筈だ」という慢心の現れでもある。
同じコーナーで3度も転ぶ、思うようにタイムが伸びない、ということはすべて自分の技術と認識の甘さを示唆していた筈なのに、サスがへたってるから、パワーがないから、久しぶりだから調子が悪い、と原因を自分以外に求めていた節があるのは否めない。
そういう流れで考えると、ハイパワーでピーキーなマシンに乗り換えて再び転倒するのは当然の帰結だった。

さて、とすると、俺がまず心がけるべき点ははっきりして来た。
まず、どこをどう走りたいか?レコードラインを見極めるというようなたいそうな話ではない。少なくとも自分がどのラインをどう走るつもりかを意識しながら走ることが必要だ。
そして、コーナリング時の姿勢。鬼の形相でタンクにへばり付いてても仕方がない。顔をあげて先を見て、重心をもっと効率よく移動させなければいけない。そして、前後の荷重を意識する必要がある。すべてを同時に行うのは難しいが、とりあえずいまはあまりに前荷重過ぎなので、もっと後輪に荷重を掛ける・・・その為にも体を起こすことから始めるのがよさそうだ。

正直、こういう荷重がどうの、重心がどうのって話を俺は馬鹿にしていた。大事なのはわかるが、「本当に乗っててそんなのわかるのかよ?」って感じで。しかし、俺はわかろうとしていないからわからなかったのだろう。
問題は見えて来た。早く修理を済ませて、実践に移したいものだ。

君子は豹変す、という言葉がありますね。考えることの重要さは実感したけど、考えただけでは技術は身につかないのも事実。だがしかし、まずは何より意識を変えねば・・・・ここで変えられなければ、三下止まり。そうはならん。(TOPへ