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さよならSVツーリング レポート by 我意

さて。
そんなワケでSV400Sは手放すことになった。大抵のシチュエーションでストレスなく走れる、飛ばせば結構速いがカッ飛ばすこと強要しない、なかなかいいバイクだったと思う。ただ、その可もなく不可もないバランスが、今の使い方では物足りなくなってしまったということだ。
しかし考えて見れば、比べている相手が悪いので、動力性能にケチをつけることはないと思う。やはり、問題があるのはあの微妙なデザインだろうな。格好いいのか悪いのか・・・とにかくアクがあるデザインだと思う。見慣れれば愛着も湧くんだけど。
ところで、思えば購入直後の伊豆以来、ツーリングらしいツーリングは行ってない。東京から奥多摩や山梨には何度も行ったが、それは他の目的があって交通手段として活用しただけだった。
そんな折、職場の同僚が数人(!)免許を取得したのでツーリングに行こうという話になり、俺もSVでも走り納めとして参加した。
行く先は日光。俺は日光には小学校の修学旅行以来だ。とにかく温泉と滝と寺っていうイメージだが、これは間違いではないだろう。

・・・ところで、俺はカメラ持ってたのに全然写真を撮ってなかった。他の人が持ってたから油断しちまったようだ。誰か写真くれよう。

[集合]
日曜日に、東北自動車道の蓮田SAで待ち合わせる。免許歴そこそこのBandit250V、そして初心者のVOLTYだ。いま思えば、奇遇なことに全部スズキだが、イメージが違うマシンばかりだからか、その時は誰も気づかなかったようだ。あと一人いたのだが、二輪免許の取得が間に合わず、四輪で荷物番として参加した。更には、あと一人いたのだが、そいつはイモを引いた。
ともかくも集合し、久しぶりのマスツーリングだ。Banditが懇切丁寧な計画表を用意してくれたので、あまり考えることもなく楽と言えば楽。しかし、マメな人とは思ってたが・・・実は俺はマスツーリングであっても計画表なんて見たのは初めてだ。正直に言えば、細けえな、と思ったが、なにせ免許取り立てもいるのでそのぐらいの方がいいかと考え直した。
高速道路で栃木まで行き、そこから裏街道を走って日光を目指す。さすがによく調べてあり、空いていて気分のいい道の連続だった。途中、予定していた道(舗装林道)が通行止めだったのは計算外だが、まあご愛嬌だ。戻った距離も少ないし、ハプニングのうちには入らんだろう。

[イロハ坂]
イロハ坂は、よくなかった。有名なワインディングだから、さぞかし気持ちよく攻められるんだろうと思っていたら、舗装がえらいでこぼこの継ぎ接ぎだらけで、普通に走るのにも神経を使う。膝擦りなどもっての他だ。にも関わらず、ワケのわからんシビックが猛然と追いかけて来る。俺をどの程度意識してるかは定かでないが、結構走ってる車を縫うように走る俺の後を四輪のボディでついてくるんだから、普通に走ってるんでないのは間違いない。こんな路面で四輪とは張り合えん、と思いつつ基本的に抜かれるのは嫌いで、増して峠で四輪に抜かれるなど・・・と思い、路面の悪さが致命的にならない範囲でペースを上げてミラーから消す。

[ひるめし]
あまり爽やかでないイロハ坂が終わると、あまり絶景でもない中禅寺湖に着いた。おそらくは、対岸の方にでも周ればいい感じなのだろうが、イロハ坂から上ったあたりは湖岸が開発されていてあまり感動できる景色ではない。
そして何よりいけないのが、派手なジェスチャーで客を呼び込む食堂の店員だ。道路に出て来て、駐車場に入るように手を振っているので、一瞬、通行止めか工事でもあるから迂回しろってことか?とか思ったが、続けてそばをすするジェスチャーをしやがったので、客引きとわかった。阿保か。
で、これまた予め調査済みであった「たびや食堂」という店に入る。ただの小汚い食堂だが、ヒメマス定食とカツ丼がいいらしい。俺は肉が食いたかったのでカツ丼にした。これが凄い量。どんぶりは別に巨大じゃないが、そのどんぶりにまんぱんに入っているのだ。蓋が閉まらない上に、カツ綴じがその閉まってない蓋の内側に密着してドーム型に整形されてしまっている。
朝をろくに食べてなかったので腹はえらく空いていたのだが、後半は非常につらかった。同じものを頼んだVOLTYは残していたくらいだ。だが、俺はこういう場では食い物を残さないようにしている。なぜなら、その土地土地には、それぞれの美味いものがあるからだ。それは別に名物とは限らない。何気なく付け合せられた山菜や切り身、漬物・・・なんにしても、思いがけないところでその食材が「こんな味だったのか!」と驚かされるようなことが、かつてツーリングばかりしていた頃に何度もあったのだ。
まあ、カツ丼ではそういうことは少なそうだが、何せ、何が美味いかわからんのだから、出されたモノは全て食う。
BanditとYRV(四輪)はヒメマス定食を食っていた。ムニエル?のような味付けで、かなり揚げてあり、「頭から尻尾まで全部食べられます」(おばさんはこの料理を出す際には全ての客にそう言っていた)との台詞とともに供される。
YRVは、豪気なところがある漢なので、期待通り、25cmくらいか?の姿揚げを、骨一本残さずに頭から順に尻尾まで食っていた。本当に、一口目で頭を齧り、尻尾を最後に取っておいてポリポリと食っていた辺りが律儀だ。Banditは美食家なところがあるからか、胃袋の容量的な問題か、頭は残していた。俺はこれを貰って頭だけ食べた。・・・頭だけ、ってのがさもしいが、本当にカリカリで、普通に食えてしまった。まあ、山間の観光地の飯としては上等だ。

[華厳の滝]
腹がいっぱいに・・・本当にいっぱいでちょっと気持ち悪いくらいになり、しばらく湖畔で休憩。やはり中禅寺湖は別にいい景色じゃないな、と思い、対岸側の方が面白そうだ、とか思いつつ、今日の余力を考えるとそれ以上奥地には進まない方向に決定。
しかしそのまま帰ってもつまらないし、一応は観光スポットも見ないとということで華厳の滝へ。
15年くらい前の修学旅行の記憶によると、日本で一番高低差のある滝だったような。しかし、その後滝の上部で崩落があり、ウリだった高高度から真っ直ぐに落ちるという美点はややスポイルされたんだったと思う。ついでに言えば、自殺の名所としても有名だったはずだ。

[サル]
本当はその辺の路肩に停めようと思ってたのだが、うっかり入ってしまった有料駐車場にバイクを停め、滝に向かって歩いていると、駐車している車の上にサルが。・・・おお。これが有名な「日光のサル」か。しかし、日光のサルももはやニホンザルではなくてタイワンザルまたはその混血なんだろうか。タイワンザルはニホンザルと非常に近縁で、ちょっと尾が長い種だ。元は1980年代にモンキーパークみたいな施設が移入し、閉園に際して放たれたモノだが、交雑に関してまったく問題がない(F2で交配可能って表現でいいのか?)のでニホンザルと混血し、「純粋なニホンザル」が絶滅の危機にあるとしてその駆除をめぐって問題になっている動物だ。いろいろな意見があるが、俺はやはり、一様な駆除には疑問を感じる。そもそも、遺伝的隔離が非常に小さく交雑に支障がないならば、別の種として認定できるのだろうか?そして、ニホンザルとタイワンザルの遺伝的な違いは日本人と朝鮮人程度だとすれば、日本に人為的に移入されてきたグループであるというだけの理由でタイワンザルは駆除(つまり殺す)するべきと言うのは、朝鮮人は殺せと言うのと同根の民族主義ではないか?遺伝的多様性を持ち出されたとしても、俺は反論する理屈は持っているが、それはこの場では割愛しよう。ツーリングの話をしてるんだから。
さて、サルは激写したかったが、俺のデジカメは高額10倍ズームという素敵なスペックと引換にそのボディはけっしてスマートとは言えず、つまり取り出すの手間取っているうちにサルは森へ帰りました、という残念な結果になった。

[滝]
サル撮影を諦めて滝の展望台に行く。・・・確かに、これはいい眺めだ。絵に描いたような「滝」だ。日光なので欧米人の観光客も多かったが、彼らにはまた違った印象なのだろう。大陸にはああいう細くて真っ直ぐに落ちていく滝は少ないんじゃないかな。日本は、起伏に富んでいる上に、そこらじゅうに溶岩の貫入やら変成やら断層やらがあるから、つまりは地面の堅さが不連続なことが多いからああいう滝が出来やすいのかなあ、と思っている。地質構造は俺の専門ではないが、まあ地学分野の研究を4年ばかしやっていたので、こういう景色を見ると多少は気がつく点もある。ああ、あそこは火成岩だな、ここはレキ岩だ、ということは・・・みたいな。それで景色も漫然と眺めるんでなく、多少は楽しめるというのはいいことだ。4年の研究の見返りとしては小さいが、コレはオマケみたいなもんだからまあいい。

[鳥]
さて、そんな滝をしばらく見ていると、展望台からは少し見下ろす位置になる梢に、鳥発見。そりゃ鳥くらいいるさ、と言えばそうだが、あまりウチの近所じゃ見ないヤツだと直感し、目を凝らす。黒い背中に鮮やかな橙、ところどころに白いアクセント・・・キビタキだ。傍らにいたVOLTYには、その時にジョウビタキと教えたが、名前を間違っていた。キビタキは初めて見た。なんにせよ、見たことのない生物を目撃するのはなんとなくうれしいものだ。
しかも、今回はさらに、木のもっと下の方に違う鳥を発見した。その特徴的な瑠璃色と黒い胸はまさにオオルリではないか。これも見てみたかった鳥だ。俺としては、この一連の滝での観察で、まあ日光まで来た甲斐もあったかと思えた。VOLTYは一緒にいたのでともに目撃したのだが、他のメンバーは既に展望台を去っていたので惜しいことをしたものだ。キビタキとオオルリは、幻クラスというワケではないが、実際にいままでは見たことがなかったしそれぞれ色の奇麗さではトップクラスの小鳥ちゃんなので、見られてよかった。ただ、何かを見て驚くには、それについての知識が必要だ。そうしないと、何が珍しくて何が凄いのか、基準がわからないからだ。しかし、そういう意味では、今回のメンバーで鳥2匹を見て大喜びするのは俺くらいなのか?俺は、過去に3年ほどバードウォッチャーだったことがあるのだ。
自分の懐の深さに頭が下がるばかりだぜ。

[温泉]
面白くないイロハ坂を下り、温泉を目指す。途中で、Banditが前の車を抜いたが、インを刺されて抜き返されていた。まあ流れてはいたが基本的に混んでいて数珠つながりだったから、ここで半端に追い越しをかけるBanditも悪いと思ったが(抜くならどんどん抜いて前に行くべきだ。1台抜いてもしょうもない)、それを抜き返す営業車も大人気ない。運転しながらメガネ野郎が好戦的な表情をしているのを見たらちょっとムッと来てしまった。それで、今度は俺が前のBanditを抜いてその営業車の後ろにつける。
別にバトルとか言うレベルの速度ではない。基本的に、準渋滞だ。だから、その車を俺は抜いたりはしない。ただ、詳細は言わんが、嫌あな感じでプレッシャーをかけ続ける。道が少し空いたところで、メガネが減速して左に寄る。抜けということらしい。・・・キヒヒ、抜かないよ。・・・我ながらなんて地道な嫌がらせだ。いや、ずっと半端なペースで走ってて暇してたんだよね。
なにはともあれ、下山して「やしおの湯」という温泉施設に着く。温泉の描写はいちいちしないが、ツーリングで温泉によると結果は常に同じだ。・・・上がると、ダルダルでもうバイクに乗って帰るのが億劫になる。まあ、この気だるさ、そして気だるさを押して走らねばならないツラさもツーリングの醍醐味だ。
しかし、これもいつものことだが、もう寝てえ、バイクなんて乗るの面倒臭え・・・と思いつつ、駐輪場に行って愛車のエンジンをかけ、その排気音を耳にすると、不思議とテンションが上がってくる。「行くぜ!!(←ドコへ?)」という気分になって来る。こんな時、なんとなく、自分がいわゆる「バイク乗り」なんだなあ、と思う。あー、チャラいバイカーって意味じゃなくてだ。バイクに乗るってことが、何はともあれ自分の精神を高揚させるのは確かなのだ。詩的な意味でなく、本当に少し動悸が走るような感じがある。これが愉しくてバイクに乗っているのだから、操る愉しみがどうの、見知らぬ土地で出会いがどうの、ってな説明的なことを自分がバイクに乗る理由に挙げる必要はないとも思う。さらに言えば、そういうことを思うのは勝手だし、俺だってたまには考えないではないが、事細かに「なぜバイクに乗るか」を説明して、しかもシンパシーを求めるヤツはあまり好きでない。
乗ると面白いからだ。それでいいじゃないかと思う。
こういう、ちょっと疲れた時になると逆にそれを感じることがある。
そこに居合わせた他のメンバーが、同じような感覚を覚えたかどうかはわからないのだが。

[餃子・オブ・宇都宮]
以前から、宇都宮は餃子の街とかって聞いてはいたが、今回、それを初めて食べた。よくスーパーで、その名も「宇都宮餃子」というものが売っている(赤いパッケージのヤツ)ので、俺はそれがつまり宇都宮の味なんだと思っていたのだが、どうやら勘違いだったらしい。
宇都宮の地理に比較的詳しいYRVの案内で「トントン」という店を選んだのだが、これはなかなか美味かった。普通であればジャンボ餃子と名づけてよさそうなサイズのものが皿に5個くらい並んでいて、それだけで晩御飯のオカズとして十分な量があった。YRVは「ジャンボ餃子」を頼んでいて、それは通常であればメガ餃子と名付けてよさそうなサイズだった。
特別に変わった具が入ってる気配も、変わった工夫も感じられず(実際には何か仕込んでいるかも知れないが)、それがよかった。変に強烈にニンニクが効いてたりするのは俺は嫌いだ。肉と野菜がバランス良く入っており、飯が進む。
非常に残念な点がひとつあったとすれば、運転があるのでビールが飲めなかったことだ。今度からツーリングにはノンアルコールビールを持参しようかと思った。
俺は他の宇都宮の餃子は食ったことがないのだが、食べてるメンバーによると、有名な「ミンミン」より美味いとのことだった。
なぜYRVが宇都宮に詳しいのか訝しかったが、実は店の近くに彼女が住んでるらしい。餃子とビールを持ってって泊めてもらいたい気分だったが、まあ俺は分別ある大人ですからね、そういう無茶な要求はしない。

[4号線バイパス]
餃子を食ってから、半端に元気になった我々は高速に乗らずに東京に帰ることに決定。4号線のバイパスをひた走る。
宇都宮を発って間もなくでコンビニに寄り、各自ドーピングをする。俺はリポDとキャベ2を飲んだ。栄養は余ってるが、カフェインで目を覚ましたかったのと、食べ過ぎで胃がつらかったからだ。
しかし、4号線は途中から茫漠とした虚無街道へと変わる。いやそんなことねえか。でも、ちょっと休憩するのに丁度いい場所がなかなかなく、疲れていたがひたすらに走り続けた。初心者のVOLTYを配慮してあまりペースは上げず、俺は最後尾を走る。偉いな。本当は速度2倍のハイテンション走りをしたかったが、我慢した。

[ツーリングってのは?]
最後に、外環に着く間際でファミレスに入りノンアルコールビールだけ頼み打ち上げっぽく休憩した。ここで当然、今日一日を振り返りつつ今後に思いを馳せることとなる。
とにかく疲れたってことと、次回は泊まりがいいってな話になりつつ、「果たして次回があるか」という疑問も検討される。
まー、それぞれに思うところもあろうし、俺も「今日は最高だった!」などと能天気なコメントはできないのだが。
まず、それぞれのバイクに対するスタンスが微妙に違う気がした。もちろん、共通するものも大いにあるのだろうが、俺が一番重視するのは「自分が愉しい走り」だ。つまり、限りなくソロに近いスタンスだ。一緒に行くメンバーも休憩時は仲間だが、走ってる時は知らん、という感じだ。Banditは、たぶんいわゆる「マスツーリング」というスタンスだろう。比較的、共有と共感を大事にしているように見えた。VOLTYは、どうだろう?まだ乗りたて、初めてのツーリング、なにか自分にとっておもしろい点は見出せただろうか?
行く前はフェアリー(可愛いバイク乗りの女)を探すと意気込んでいたが、それは果たせなかったようだけど。当たり前だ。俺はもう15年近くバイクに乗ってるが、ツーリング先でフェアリーに会ったことなど一度もないわ。
それはさておき、実際のところ、ツーリングに行った帰りは俺もいつも疲れてウンザリする。だが、疲れがとれればまた行きたくなる。そういうことを繰り返して来たから、今は疲れそのものも愉しみのうちだ。これは、多くのバイク乗りに共通だと思っているが、そこに到達せずに一度だけ行ったツーリングで疲れたから二度と行かない連中もいるだろう。VOLTYがそうならないことを期待している。
思えば、学生の頃はツーリングサークルに所属していたのだが、これは俺たちの代で潰れてしまった。後輩がまったく入らなかったからだ。勧誘に熱心でなかったのも認めるが、たまに入ってきても、一度ツーリングに行くと二度と来ないのだ。疲れたと言って。
そりゃそうだ。出発前に想像つかないんだろうか?疲れるに決まっている。バイクはそういう乗り物だ。楽をしたけりゃクルマに乗るか家で昼寝してろ。
そんな屁垂れどもの中に当時発売されたばかりのVOLTYに乗っていたやつもいたので、つい気になってしまう。
確かに、当時のメンバーでのツーリングは、ペースはバラバラで、誰かがコケてバイクを壊すと皆で記念撮影をして笑っていた。だが、バイクに乗るからにはオウン・リスクだ。そして漢たるバイク乗りは、誰かが待っていてくれるなどと期待するものではない。自分が追いつくのだ。行き先や経路を巡って口論になったり、はぐれて解散することもあったが、走ってる時はむしろ一人より面白かった。遅いと罵られ、転倒を笑われ、バイクをバカにされても(しても)いちいち凹みはしない間柄は気に入っていた。だが、最近はそういう時勢ではないのかのう・・・。
・・・なんか湿っぽいな。
ま、それでもともかく俺はまた行きたいとは思っている。

こうしてパソコンに向かい、理屈を捏ねればいくらでも捏ねられる。だが、そんなものとは無関係な部分の脳味噌で走れるのがバイクのイカしたところだからだ。

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