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楽しい職場みんなのF2

会社に頼らず生きるための書籍一挙公開

働きすぎの時代 森岡孝二2005.8.19発行780円 岩波新書
 いたるところから働きすぎの悲鳴が上がっている。労働時間が1日10時間を越えるほどに長ければ、疲労とストレスがたまり、最悪の場合は死に至ることになる。本書では、グローバリゼーション、情報技術、消費社会、規制緩和などに着目して今日の過重労働の原因に迫る。まとうな働き方ができる社会を作っていくために、いま何が必要なのか。労働者がなすべきこととして次のことを上げる。
1.自分と家族の時間を大切にし、仕事以外にも生き甲斐を持つ。
2.家事労働は分担し、近所付き合いや地域のボランティア活動にも参加する。
3.年休はめいっぱい取得し、年に一度は一、二週間の連続休暇をとる。
4.残業はできるだけせず、労働が過重な場合は労働組合や会社に是正を求める。
5.職場の労働基準法違反行為が是正されないときは労働基準監督署に申告する。
6.心身の不調を覚えたときは、直ちに医師の診察を受け、指示に従う。
7.仕事に殺されそうな状態が続くときは転職するなどした自己防衛を図る。
8.情報ツールによる仕事のボーダレス化を阻止し、時間帯によっては受信を拒否する。
9.サービスや利便性を売り物にする消費のあり方を働き方から見直す。
10.流通・サービス部門で働く人は営業時間と労働時間の明確な区別を求める。
11.働きすぎと浪費の悪循環から抜け出して、スローライフに転換する。

経営者を格付けする 有森隆2005.8.5発行1500円 草思社
 日本の経営者45人を5つの指標、合計100点満点で採点し格付けした、この企画で30点で最下位にランキングされのが、富士通の秋草会長です。その採点とは...
[状況判断力10点]ソフト化路線を突っ走ってネットバブルを読み誤る。
[目標設定力5点]付け焼き刃的な成果主義が致命的なミスとなる。
[決断力5点]ソフト部門へのシフトでハード部門が失速。事業の柱を失う。
[遂行力5点]大規模なリストラ断行が株価の大幅下落を招く。
[後継者育成力5点]業績が悪化する中、権力基盤を露骨に強化。
 わずか6ページながら彼の軌跡を十分にたどることができる好評です。

ここが変だよ日本の管理職 宋文洲2005.7.7発行1500円 東洋経済新報社
 なぜ、残業がなくならないのでしょうか。著者であるソフトブレーン社の宋会長によるとこうです。
 日本の管理職たちが仕事の成果を測る科学的な手段を持っていないから。つまり、マネジメントに問題があるからなのです。日本の経営者と管理職を見ていると、彼らが部下を評価する唯一のものさしは、"頑張って"いるかどうか、つまり自分の時間を犠牲にして仕事をしているかです。その一つの基準が、どれだけ多く残業しているかなのです。本来は、部下の仕事の中身をよく見極めて、どれが本当にお客さんのためになる仕事で、どれが勝手に作り出された仕事かという仕分けが必要です。これが科学的なマネジメントの基本です。にもかかわらず、部下がどのくらい長い時間オフィスにいたのかとか、どれくらい必死の形相で"頑張り"を見せていたかなど、目に見えることでしか判断しようとしない。長い間、日本の会社の特徴として「年功序列」があると言われてきましたが、実は"残業序列""根性序列"がまかり通っていたのです。
 な〜んだ、富士通だけじゃないのか。

<育てる経営>の戦略 ポスト成果主義への道 高橋伸夫2005.4.10発行1500円 講談社
 数ある成果主義 の本の中で、「そうそう」「これってあるよねー」「爆笑!」といった具合に共感を持って読める、という点ではピカイチの本です。著者が紹介する事例をひとつ挙げると・・・
 それにつけても、責任を取って謝ってくる。たったそれだけのこともしない上司がいかに多いことか。特に、成果主義の会社では。何しろ、社長自らが、会社の業績低迷を、「従業員が働かないからいけない」などと従業員のせいにしてしまうくらいなのだから。成果主義の会社では、あなたはきっとこう言われるはずだ。「これは君の責任だ。君が行って謝ってこい。評価は覚悟しておくんだな」。だから、客観性を装い、部下に責任を押し付けて逃げ回ることばかりを考えている小人物も、成果主義であれば生き残ることができる可能性が出てくる。それがまた成果主義に対する不信感を募らせる。

成果主義神話の崩壊 斎藤貴男・東京管理職ユニオン2005.3.10発行1300円 旬報社
 成果主義がうまくいくためにはトップの資質が大きく問われます。トップが一番いいかげんで、部下だけに大変なことを強いるのではそもそも成立しません。ところが、このもっともあってはいけないケースが富士通でした。秋草直之さんはもともと電電公社(現NTT)総裁の息子さんで、そんな人が電電ファミリーの会社に入る、このこと自体がもうどうかしています。常識で考えて、電電公社総裁の息子が富士通に入ってきたら決して厳しくはしない。絶対傷つかないところで大切に育てられ、なにかその部署でうまくいったら、すべて手柄にしてあげる。その上司は覚えめでたくするし、彼はそうやって社長になりました。社長が、ボンクラでも社員は優秀ですから、富士通は業績が悪いといっても破綻はしません。それがまた、成果主義の問題点を見えづらくしているのです。−というのが、かつて関澤社長(成果主義導入の責任者)にインタビュー取材をした斎藤氏による「外側から見た富士通・成果主義」です。

「IT汚染」、吉田文和、岩波新書、2001年7月
 IT産業に対する警鐘の書です。カバーのキャッチコピーを転載します。

 すでに生活の一部になったIT機器。その製造のかげでは、流産やガンを引き起こす恐るべき環境汚染が進行している。毎日大量に廃棄される携帯電話やパソコンのゴミ問題も深刻だ。アメリカや日本、そして半導体生産が急成長しているアジア諸国の実態を報告し、環境に負荷を与えないハイテクIT産業のあり方、リサイクルのしくみを考える。

序章  シリコンバレーふたたび
第1章 IT生産と環境問題
第2章 アジアに広がるIT汚染
第3章 日本のIT汚染
第4章 あふれ出る使用済みコンピューター
終章  IT汚染をなくすために

 私は2年ほど前に読んだのですが、特に、中国、韓国、東南アジアの状況は、ますます悪化しているようです。本書が教えてくれるのは、「廃棄物処理や環境インフラが十分整備できていない地域への立地は、短期的には投資コストを引き下げはするが、長期的には処理できない有害廃棄物を工場構内に抱え、大きなリスクとなる。」ということです。富士通の海外工場は大丈夫でしょうか。汚染の事実を隠してはいないでしょうね。

「ウンコに学べ!」、有田正光/石村多門、ちくま新書
 笑ってしまうタイトルの本の紹介です。頭痛のするような議論ばかりしていないで、たまには、こんな本を読んではいかがでしょうか。とにかくおもしろい!(笑)カバーのキャッチコピーを転載します。
 環境問題がさかんに叫ばれている。だが近代人は、ウンコからは遠ざかろうとしてきたのではなかろうか。そして目をそむけ、鼻をつまむように、語ることが忌避されている。しかし、それは身近なものであるがゆえ、やはりその行方が気になる。本書では、誰もが正面から見据えようとしないウンコを通して、現代科学から倫理までを語る。ヒステリックなエコロジーの書ではなく、抱腹絶倒なのに役に立つ、おもしろ科学読本。
第1章 あなたのウンコはどこへ行くのか   
第2章 水田 − 土と水とウンコのバラード   
第3章 ウンコの黄金時代と糞まみれの経済   
第4章 ウンコをしない自立とする連帯
第5章 ウンコに学ぶ環境倫理
ご一読をお奨めします。

楽して、儲ける! 山田昭男2004.3.24発行1400円 中経出版
松下もかなわない電設資材のカリスマ・カンパニー。

 電設資材などという、超ローテク中小製造業はとっくに中国に生産移動し、息も絶え絶えになっているのではないかと思っているアナタ、認識不足ですよ。型破りな経営論で社員のやる気を高め、経常利益率15%以上をキープし続けているのが”未来工業”です。その創業社長が語る驚異の経営方針とは...
[ホウレンソウなんてくそ食らえ]
 現場のことは現場が一番わかっている。会議で時間を費やしている間に現場が判断して進めていけばいいはずだ。もちろんその報告が直属の社員にきちんと伝わりそれぞれの部署で管理されていることが必要だけれども。「ホウレンソウ」なんてポパイが食っていればいい。
[制服・作業服がない]
 日本の製造業(工場)で制服・作業服がないは珍しい。しかし社員にとっては制服・作業服は強制されて着ているという意識しかない。強制されていては社員はやる気を起こさない。
[タイムカードがない]
 サービス残業天国と思いきや、労働時間は7時間15分。午後4時45分終業で、55分にはみんないなくなる。社員は労働時間が短ければうれしいと喜んで、不満がなくなりやる気を起こす。休みが長いと、またまたうれしいといってそれがやる気につながるだろう。
[ノルマなんていらない]
 日本の企業では、社員にこれだけがんばったらエサをやるという発想が圧倒的に強い。ノルマ主義もその典型だ。成果を上げたらエサをやるという理屈は、会社が社員を信用していないからだ。逆に社員も会社を信頼していない。
[わたしはどケチだ]
 空調代を節約するために、会社で自分の部屋にいるときは夏ならランニングシャツにパンツ姿だ。会社のロビーや廊下は暗い。本社内にコピー機は1台しかない。そもそもコピー機がたくさんあっても無駄なコピーをとるだけだ。会社支給の携帯電話はないし、会社から外出中の社員の携帯電話に電話するのも禁止だ。営業部への顧客からの電話は、女性社員が13人いる部屋に入るようになっていて、男性の担当がいなくても新製品や他社製品まで何でも知っている彼女らが対応してくれる。
[労基法立法の趣旨によれば...]
 機械の稼働率向上のために養老工場で、1日6時間勤務4交代のローテーションを組んだ。ところが総務部長は6時間を越える残業代を出さないことにした。なぜなら、労働基準法では8時間を超えた分について残業手当を出さなければならないと書いてあるから、8時間までの2時間分は残業手当を出さなくてよいというだ。社員からの不満を聞きつけ、社長は総務部長を呼び説教を始めた。「立法の趣旨によれば...大体社員は、勤務時間が終わった後は残業だという既得権を持っている。それを蹴飛ばすようなことをすれば、当然、不満を持つ。実にお前は無能な総務部長だな。」

社長は親になれ! 原邦生2004.1.20発行1500円 日本実業出版社
グローバルスタンダードで経営などできない!!−成果主義完全否定のIT経営

 無借金経営、5期連続増収増益を続けるメリーチョコレートカムパニーの原社長が明かす驚異の経営哲学です。原社長は、「成果主義でこそ会社は生き残るという考え方ももちろんあっていい。だが、父が絶対に守れと言い遺した「家族的経営」を貫くことなくしては、当社のもつ強みは、決して生まれなかった。家族的経営だからこそ、社員も会社や仕事に誇りと愛着を持ち、企業人として成長していくのである。それだけは声を大にして申し上げておきたい。」と述べています。その経営の極意は次のような点に現れています。
・1971年、資本金が2700万円ほどの時に3000万円を投資して、三菱電機のコンピュータを導入し、販売管理システムをスタートさせた。
・「リストラクチャリング」「アウトソーシング」「サプライチェーンマネジメント」などアメリカ流の経営手法がオンパレードだが、何でもアメリカのものが優れているとはまったく感じない。
・アメリカ型の株主重視経営では将来をにらんだ長期的な設備投資や社員に対する気長な教育やケアを施すのは難しいのではないか。
・リストラと称して目先の損得勘定で多数の社員を整理する経営者は重大な使命を放棄している。経営者には働く人の可能性を引き出し能力をフルに発揮できる場を提供する務めがある。
・成果主義に関しては、個人の業績だけをベースにすべての報酬を決定するのは弊害がありすぎる。個人プレーを助長し、極論すると会社は社員の頭数分以上に業績が上がらないということになるだろう。
・生活を支える基本給は毎年昇給していくが、個人のがんばりに応じた成績比例部分がある。たとえば営業部門では40項目もの目標項目の達成度を上司と合意して毎月測った結果を賞与の算定基準としている。
・全社員の報酬をオープンにし、パスワードを入れれば社員はだれでも閲覧できる。これは社長を含めた役員報酬も例外ではない。
・経常黒字でも期初数値が未達成であった場合には賞与をカットしたことがあったが、社長50%、役員40%、部長30%、課長10%、一般社員5%と全社員で痛みを分かち合った。

虚妄の成果主義−日本型年功制復活のススメ 高橋伸夫2004.1.19発行1600円 日経BP社
日経BPが贈る”成果主義完全粉砕”の理論書

 成果主義とは、1.できるだけ客観的にこれまでの成果を測ろうと努め、2.成果のようなものに連動した賃金体系で動機づけを測ろうとするすべての考え方で、1か2のどちらか一方を満たせば成果主義と定義しています。そして、著者は、うまくいかない成果主義に対して「それは本当の成果主義ではない。」などという言い訳は許さず、「成果主義」はみなダメと断定しています。
 著者は成果主義的な考え方が人材を育てず、自社製品に触れたこともない「手配師型技術者」を出現させたといいます。手配師型技術者の事例として、自分の大学での大型サーバ発注の時の経験談を挙げています。この商談で敗退したB社は、昨今調子が悪そうだが、日本を代表する「先進的な」大手電機メーカーですでに成果主義を導入していました。B社の提案書は、一見して、大学の出した仕様を満たしていないばかりか、大学の仕様書のミスを直さず、間違ったままにしていました。しかもB社の担当者はそれがミスであることが理解できませんでした。その担当者が言うには「・・・今回はB社がまず関連会社のC社に投げて、さらにC社は商社のD社に応札提案書・見積書の作成を依頼したわけです。」とのことでした。著者は、”いくらドル・ベースでこれだけ高額の給料を払っているからといって「手配師」としてだけ仕事をさせるなどというのはおかしいのである。これは人事制度以前の人材に対する考え方、思想の問題なのだ。このような思想だからこそ、先陣を切って成果主義が躊躇なく導入できたのだ”と解説しています。
日経新聞6/9記事全文はこちら
夕刊フジ4/10
http://www.zakzak.co.jp/top/2004_04/t2004041041.html
日刊ゲンダイ4/29
http://www.gendai.net/contents.asp?c=051&id=1328
毎日新聞3/21http://www.mainichi-msn.co.jp/geinou/wadai/archive/news/2004/03/20040321ddm015070125000c.html
朝日新聞2/1http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=5172

二極化時代の新・サラリーマン幸福術 森永卓郎・横田濱夫2003.12.24発行1300円 経済界
年収1億円でも不幸な人生、年収300万円でも楽しい人生・・・

 トップは本当に現場のことがわかっているのでしょうか。森永氏はこの対談の中で2つの事例を挙げています。
[小泉純一郎さんの場合]
東京・大田区には、廃業したり、明日の資金繰りにも困るような中小企業がたくさんあります。そんな中でも「勝ち組企業」がいくつかあります。小泉さんはそんなところを選んで視察に行きます。彼は、去年(2002年)の暮れも一流レストランを予約したら満員だったということで「あ、日本は景気がいいぞ」と認識したとか。
[ダイエーの中内さんの場合]
中内さんは、阪神大震災の直後、”ローソンは十分な商品を被災地に供給する”という指令を出しました。ところが、店舗の現場では道路が分断され商品が入ってきません。指令を受けた社員がやったことは、店を閉めて住民に買い物をさせず、中内さんが来たとたん店をオープンしたということです。
 黒川さん、F2の現場は本当に大丈夫ですかね?

巨大企業が民主主義を滅ぼす ノリーナ・ハーツ2003.8.31発行2000円 早川書房
「企業の論理」が世界を動かす時代に、警告!

 いまや国際的巨大企業のパワーは、中小国家を凌ぐほどに強大化している。世界は資本主義とグローバル化を謳歌し、それなりの発展を遂げたように見えるが、私たちの投票よりも「企業の論理」が影響力を発揮する現代、私たちの生活は本当に豊かになったのか?
・この10年、世界の最富裕層の収入は15%も伸びたが、最貧困層では1%も伸びていない。
・企業はWTOを利用して、安全性の疑わしい食品さえも他国が「公平に」輸入するよう圧力をかけている。
・冷戦時代のスパイ技術は現代、英米企業が他国の企業秘密を入手するために用いられている。
・メディアのスポンサー企業のスキャンダルは歪曲されて伝えられるか、揉み消されている。
一方この強大な力に対抗して、市民の間では新たな政治参加の形も見られるようになっている。
・ウェブ上では、社会・環境への配慮を基準に、どの企業の商品をボイコットすべきか情報が交わされる。
・消費者団体などが企業の株式を取得し、株主の権限を利用して企業の行き過ぎを抑制している。
・ソロスなどの大投資家が、慈善目的で大金を寄付している。

英国気鋭の政治経済学者が、資本主義とグローバリゼーションの行き過ぎが引き起こす民主主義の衰退に警鐘を鳴らすと同時に、政治・企業・市民の新たな関わり方を提唱した、欧米で話題の衝撃作。(ブックカバー解説より)

窒息するオフィス ジル・A・フレイザー2003.5.28発行2300円 岩波書店
仕事に脅迫されるアメリカ人

 山本名誉会長は「ホワイトカラー、特に研究職は、どれだけ働いても法律的にOKとするのです」(週刊朝日2003.7.4)、と言い、岡田常務は、「EXEMPT=例外(労働時間管理等の適用除外の意)の働き方が重要である。」(2003年総合労働条件改善闘争交渉速報No.3)と述べていますが、こんなワークスタイルを先取りしているアメリカのホワイトカラーの事例を生々しく描いた好著です。この本によれば「楽しい職場みんなのF2」のIBM版「IBMの年金クラブ」やインテル版「FACEIntel」というWebサイトがあるそうです。以下は帯紙の解説より。
 本書は2001年に出版されて大きな話題となったアメリカのホワイトカラーの過酷な働き方を描いた衝撃のレポートである。著者は、さまざまな大企業のなかで仕事に押し潰されている多数の男女に4年にわたりインタビューをしてきた。そして、M&Aとレイオフが連動した株価第一主義の猛烈経営が、いかにアメリカのホワイトカラーをスウェットショップ(搾取工場)状態に追いやってきたかをリアルに描きだした。ここに語られているのは、IBM、AT&T、シティバンク、インテルなど、誰もが知っているアメリカの大企業の、日本ではよく知られていない近年の変貌の有様であり、そのオフィスで働く人々の悲痛なうめきと怒りである。 「訳者あとがき」より

別冊宝島「私ひとりでも会社と闘える!」2003.5.23発行952円 宝島社
構図をしっかりと理解しておかないと、ナキをみますし、ヘタを打ちまっせ!−青木雄二氏

・サラリーマン受難の時代、会社のドライな仕打ちに負けない!
・「労基署」「個人加入組合」「裁判」等の活用術から、「内部告発」の心得まで
・会社は敵!と覚悟して、自分の身は自分で守ること。土壇場の切り札として、会社の弱みを握っておくこと。
・サービス残業、過剰ノルマ、苛酷な出向・転籍命令、擬似昇進による実質的な賃金カット、対象勧奨(リストラ)・・・。知っているだけで、会社人生が変わる。
 ちなみに、私も大会社と闘った者の一人です。大会社相手に闘うにはコツがあります。正義と、自分の主張を通すために、最後まで闘うべきです。

正社員ルネサンス 中公新書 久本憲夫2003.4.15発行740円 中央公論新社
多様な雇用から多様な正社員へ

 派遣社員や有期雇用社員、パートタイマーが増加していますが、統計的に見ると雇用者の大部分が「正社員」なのです。そして、これからも「正社員」を重要視しなければならないと著者は言います。企業の発展にとっても中核的な人材を安定的に確保しておかなければならないからです。しかし、従来の「正社員像」は働く人々にとってあまりに重苦しいものとなっていることも事実です。会社の言われるがままに転勤し、長時間残業に没頭、家庭を省みる暇もない、というような。そこで、雇用形態の多様化ではなく、多様な正社員という存在を認めていかなければなりません。たとえば、勤務地限定とか、短時間勤務だとかがそれに当てはまります。
 この論説で興味深いのは、"残業割り増し"が実は"割引労働"になっているという主張です。なぜなら、残業割り増しの基準となる賃金には、賞与や各種手当、社会保険料の企業負担分等々が入っていないからです。総人件費の観点から見ると法定の25%割増を行っても、会社にとっては「お得」になるというのです。著者の試算では71%の割り増しまでは会社にとって負担増にはならないということです。なるほど、F2が無制限に近い残業を社員にさせる理由がよくわかりました。

年収300万円時代を生き抜く経済学 森永卓郎2003.3.1発行1400円 光文社
会社のいう成果主義は単なるお題目なのさ

 ついにベストセラーに名を連ねました。小泉構造改革・デフレ政策により、日本に新たな階級社会が生まれるといいます。圧倒的多数のサラリーマンは年収300〜400万円、それどころかそんなに稼ぐのも困難になり、100万円台が続出します。「成果主義」もその仕掛けのひとつです。様々なアンケートによると、成果主義への期待はまだまだ多いようですが、これはお題目に過ぎません。経営者が本当にやろうとしていることは、特定のエリートだけの分け前を増やし、その他大勢の待遇をどんどん引き下げようということです。成果主義の実施されている企業では、コネ、ゴマスリ、同期の足を引っ張るのがうまい奴ばかりが幅をきかせています。そして著者は富士通を名指しして、「成果主義を見直そうという企業がいくつか出てきているが、それが成果主義の人事が公平でないという何よりの証拠ではないか」と断言しています。君は、金持ちのためのメードやボーイになって年収100万で暮らしたいか?

内部告発マニュアル 太田さとし2002.12.25発行1300円 ビジネス社
告発者は相手の組織を上回る別組織や世論を味方につけよ。

 内部告発を始めるには、どんな心構えが必要だろうか。
1.始めた以上はトップのクビをとる!
 既存の組織や権威は変革を嫌うものです。内部告発で痛い目にあった幹部が反省し悪事を行わなくなることはありません。関係者、関係組織を根こそぎ追放しなければなりません。もし組織全体に害悪が蔓延していたらその組織が消滅し、自分が職を失ってもしかたないと考えなければなりません。
2.告発者は英雄ではない!
 告発は表に立たず、深く静かに行わなければなりません。英雄気取りで得意になっていると不幸な結果を招いたり、逆襲を受けたりします。ささいなことまであげつらったパフォーマンスも禁物です。鈴木宗男氏の疑惑を追及した辻本清美元議員は「あなたは疑惑のデパートといわれているが、疑惑の総合商社だ」とか「鈴木先生のお母さんは私の名前と同じキヨミというそうですが、お母さんに話すときのように正直に・・・」というように本質と関係のないパフォーマンス優先の発言を繰り返していました。告発はいたずらに表現を誇張せず理路整然と行うことです。
3.告発者は隙があってはならない
 辻本清美元議員は最後には自分が秘書給与疑惑で辞任するはめになりました。告発相手に逆襲の材料を与えるようなことをしてはなりません。違法な行為はなくても、相手は不倫をしているとか、子供の素行が悪いといった私生活まで暴露してくる場合もあります。とにかくつけいる隙を与えてはいけません。
 さあ、ここまで読んでも、内部告発に踏み切るなら、ということでこの本では日常の行動から違法行為の防ぎ方までこと細かく指南してくれます。

組織愛 中山幹夫2002.12.2発行1200円 株式会社アルファポリス
秋草社長に愛はあるか?原巨人軍の優勝に学べ!

 長年会社の発展に尽くしてきた経験豊かな中高年をいとも簡単に切り捨てる企業。利益追求のために効率化し、ITも導入しコストを削減しよう。終身雇用はなくし、社員数は最低限にし、給料はなるべく払わず、できるだけ多く働いてもらおう。かといって、欧米のようにみんながクールになって定時にさっさと帰るようでは困る。やはり日本人らしく会社に忠誠心をもってもらわねば。社員はこんな会社の姿勢に対応して、自分だけが勝ち組になろうとする個人主義に傾斜していく・・・と昨今よく見かける風景ですが、こんな愛のない組織は滅びると筆者は言います。組織愛−それは「忠誠心」や「滅私奉公」といった組織への”のめりこみ”とは異なり、甘えることなく互いに責任を負った関係を持ち、相手を尊重し対等で自立した緊張関係を前提にするものです。さらに著者は愛なき大物として「働かない従業員が悪い」と発言した秋草社長へ言及します。「悪いのは社員ではありません。私が悪いのです。」と泣いた山一證券の野澤社長と対比させて。「IT時代の歩き方」でもっぱら個人の考え方や心構えの変革を強調した著者ですが、一転、個人を超える組織のあり方に鋭く切り込んだ好著です。

星逢ひ 荒牧瑞枝2002.10.18発行2000円 花伝社
「お父さんの残業が少なくなりますように」と短冊に願いを

 女優である著者の一人芝居の脚本が5つ収められています。「星逢ひ」はそのひとつで、残業続きの夫の帰宅を待ちながら子供と「お父さんの残業が少なくなりますように」と七夕の短冊に願い事を託したという過労死犠牲者の家族の手記に触発された作品です。主人公の夫は5年前、子供が生まれたころから、リストラで人が減らされ、5月の連休も土日なし、熱があっても出勤という毎日を続けていました。そしての七夕の日、微熱のまま夫を「今日は仕事を早く切り上げてね」と言い送り出しました。午後11時に会社から電話があり、病院に駆けつけると長い廊下の突き当たりのろうそくのともされた部屋に連れて行かれます。そこには夫が冷たく横たわっていました。会社は残された家族に配慮するようなことを一度は口にしますが、結局社宅から追い出し、労災申請を妨害するかのような振る舞い。彼女はあの日出勤を止めなかった自分を責めたりします。それでも子供と二人生きていこうと思いを固め、そしてまた七夕の夜、夫が帰ってきたような...

IT時代の歩き方 中山幹夫2002.7.10発行1200円 株式会社アルファポリス
「勝ち組」「負け組」論争は不毛だ。今はみんなが勝てる時代!

 横並びで競争し、リストラし、一握りの勝者と大多数の敗者からなるIT社会に未来はない。他人や他社にできない個性を生かした個人の行動・企業活動により、「みんなが勝てる時代」になる、と著者は説きます。こんな前向きで明るい著作ですが、ちょっと疑問も感じます。佐高信氏が指摘するように「どぶさらいをせずに、きれいごとばかり並べている。」のではないかと。「みんなが勝てる時代」を実現するためには、それを妨げる悪臭を放つどぶの泥(会社や社会の仕組み)を徹底的にやっつける必要があるのではないでしょうか。一人一人が変わるだけでなく外側の世界が変わるよう働きかける行動がどうしても必要です。また、著者は成果主義・目標管理を一路、肯定的・前向きにとらえています。しかし、F2ではこれらの制度の崇高な理念に関わらず、ノルマ押し付けや上司のお気に入り社員の出世という現実になっています。制度そのものに欠陥があるのか、ただ運用方法が良くないのか。この著書では、ほんの入り口しか解明していません。更なる前向きな研究成果が期待されます。

会社の仕打ちに泣き寝入りしない100の方法」(デー タハウス刊)
会社の横暴と闘うための推薦図書

 これを読んで、まずは自分の身に振りかかる会社の圧力や嫌がらせに対処しましょう。

会社人間が会社をつぶす パク・ジョアン・スックチャ2002.7.25発行1100円 朝日新聞社
社員の私生活を大事にすれば企業の業績が上がるという逆説的・革命的ビジネス戦略

 この本はまるで、F2のフレックスタイム制を始めとする従業員政策に強力な警鐘をならしているようです。カバー記載の紹介文は以下のとおりです。

 私生活が会社を救う?仕事優先、家庭二の次の時代は終わった。アメリカの勝ち組企業では、大切な資源=人材確保のために、福利厚生としてではなく、ビジネス戦略としてワーク・ライフ・バランスを取り入れている。自分の生活、家族、生きる目的を大切にしている社員ほど、業績に貢献しているという統計があるからだ。日本のあなたはこのままでいいのか?20年後のあなたは幸せですか?企業よ、このままでいいのか?リストラは最終目的ではない。次にすべきことはこれだ!

泣くより怒れ 佐高信 2002.4.30発行 1500円 毎日新聞社
特攻で死んだ若者の遺影を見て、泣くべきではない、死なせたものに対する怒りをあらわにすべきだ

 著者の筆刀直評日記2001年1月11日には、テレビ朝日・BS座談会収録に参加した時のことが書かれていました。田原総一朗氏の仕切りで著者と堺屋太一氏、討論参加者として、政治化志望の目立ちたがり屋の若者達が参加していました。特に松下政経塾にはバカ者がそろっていたといいます。彼らは「批判ばかりしていてはダメで、ビジョンを語りたい」と主張していました。著者はこれに対して、ドブさらいをやらないで、きれいごとを語りたいだけなのだと切って捨て、こう挑発しました。「そんなに批判が簡単だと思うなら、やってみろ。ヘンな手紙や電話が来て、大変なことがわかるだろう」

日本を撃つ 講談社文庫 佐高信 2002.4.15発行 495円 (株)講談社
いまこそ「会社教」の呪縛から抜け出し、社畜をやめよう。

 ボーナスは「賞与」と書き、月給以上に社員を支配し、コントロールする武器となっています。かつてはそのありがたみを十二分に浸透させようと上司から手渡しが行われました。こうした欺瞞を排したのが住友の傑物と言われた小畑忠良です。彼は戦前の住友本社の商工課長であったころ、それまでボーナスは課長が訓示と共に手渡ししていたのに、逆に自ら課員の席に出向き、「ボーナスを会社の恩恵だと思ったら大間違いだぞ。これは君たちが働きすぎたからもらえるので当然の報酬だ」と言いながら配りました。今は、給与・賞与は銀行振込になっていますが、その精神において小畑と同じ気持ちの幹部社員は果たしているのでしょうか。など、多数のエピソードを通じて著者は会社国家・日本の罪と罰を次々と挙げていきます。

非情銀行 江上剛 2002.3.15発行 1700円 新潮社
「君たちはコストだ。」合併を目前に傲然と言い放ち、リストラを進める銀行の論理。

 大栄銀行の佐々木哲夫は入社ニ十数年になりますが、役職はありません。入行して配属された支店で営業に出ましたが、理屈っぽくお客を怒らせてばかりいました。困り果てた支店長が人事と相談して、異動したのがシステム部門です。彼はそこでシステム設計能力を発揮し、なくてはならない存在になります。しかし、一匹狼的行動と性格から出世に縁がなく、上司から敬遠される変人でした。そんな彼が、審査部の竹内徹らの「クーデター」に加わることのなります。竹内の親友であった岡村幸男は、エリートコースを歩んでいたが、中村健一常務の設立した「人材能力開発室=リストラ部屋」に送られ、事故か自殺か判別しがたい死に方をしました。竹内は親友の敵討ちをし、銀行の不正を正そうというわけです。仲間は佐々木、竹内、進藤栄一、早川ユリの4人。彼らは、東光銀行との合併を進める中村常務と、闇の世界の人物「九鬼大善」との癒着、銀行マネーの私的還流の証拠をつかみますが、九鬼の脅迫でそれを手放さざるをえなくなります。しかし、4人は元副頭取・加納隆の仲介で頭取の山本信介に会うことができました。彼らは中村常務の不正を話します。失われたはずの証拠でしたが、進藤は支店の友人から送られた金の流れを示す通帳のコピーを持っていました。意外にも山本は、中村常務主導の合併を快く思っておらず、この問題を先送りしないと語ります。彼は、新聞記者に資料を渡し、合併発表記者会見の席で記者の質問に答える形で不正を明かにします。佐々木らの行動は、銀行浄化の一歩として実ったわけです。

サラリーマン「痛み」に勝つ十か条 小学館文庫 森永卓郎 2001.11.1発行 476円 (株)小学館
サービス残業を禁止し、労働時間を短縮するワークシェアリングを実現しよう。

 構造改革により、生産性が向上したら、その成果を労働時間短縮に振り向けワークシェアリングを実現すべきだと著者は主張します。リストラで人員が減らされ、職場に残った社員は夜遅くまで働かないと業務がこなせなくなっています。その結果、終電間際はラッシュになり、夜遅く帰る夫が妻の安眠を妨害しないために寝室を別にするという事態まで起こっているといいます。このような異常事態を解決するためには、サービス残業をなくし、有給休暇を完全取得すればよいのです。そうすれば、会社は必然的に人を増やさざるをえないし、失業の解消にも役立ちます。サービス残業はそもそも違法であり、それをなくすには法律の改正も労使合意も必要ありません。労働基準監督署を総動員して、サービス残業を強要している経営者を片っ端から検挙してしまえばいいだけです。そんなことをしたら、企業のコスト増になり、立ち行かなくなるではないかという人もいるかもしれません。しかし国内では、すべての企業がコスト増になるから、競争条件は同じ。国際的には不当な競争でしか生き残れない企業は淘汰されても仕方ないのです。なんせ過労死や過労自殺するまで社員を働かせているのは日本だけなのですから。

成果主義と人事評価 講談社現代新書 内田研二 2001.10.20発行 660円 (株)講談社
これはまるでF2のケーススタディのようです。

 株主優先の経営や市場の強大な圧力によって、日本企業の経営者はかつてないほど、自分の存在が抹殺されるのではないかという不安と恐れにおののいています。不安で孤独な経営者は、社員のやる気を高める便利な自動システムを欲しています。社員の業績と行動様式を入力すると公正な評価が表示されるシステム、人件費総額と個人評価を入力すると最大限のやる気を引き出すような処遇配分を出力してくれるシステムです。これが成果主義です。成果主義の目的はやる気を引き出し、業績を向上させることですが、制度の企画側と現場には壁があり、運用段階でマイルドに修正されやる気も業績も向上しません。業績が向上しなければ経営者はリストラに傾き、成果主義は減点評価と社員を脅す手段になります。この本の著者は証券会社人事部の課長さんですが、まるでF2の社内事例を研究して書いたようです。

ブランドなんか、いらない ナオミ・クライン 2001.5.31発行 3400円 (株)はまの出版
企業が主役の文化創造がブランド戦略なのです。 

 米国の大企業のブランド戦略は、イベントに協賛したり、アーティストやスポーツ選手が商品の宣伝をするといった段階にとどまらず、文化の担い手として企業自身が主役になっているといいます。代表的なのはスポーツ用品メーカーのナイキです。ナイキは「世界最高のスポーツとフィットネスの会社」になろうとして次のような計画を立てました。第一は、スポーツ選手をスーパースターに仕立て上げ、ナイキの主張する「スポーツ精神の化身」にします。第ニはナイキの「ピュア・スポーツ」とそのスポーツ選手をエリート主義、ルール至上主義、腐敗などに侵された現在のスポーツ世界の対極に位置付けます。最後にブランドを必要以上に押し出します。1998年の長野オリンピックでナイキはケニヤのクロスカントリースキー選手を養成しました。スポーツ精神の化身であるケニヤの陸上競技選手は得意競技や慣れた気候から離れ、外国の寒い山で強さや忍耐力を発揮しました。この生まれ、育ち、国、スポーツの官僚主義を乗り越える勝利はナイキによってもたらされるのです。ナイキはケニヤの選手に練習費とユニフォーム、給料を支給し養成しました。長野オリンピック大会当日、ナイキは大会本部で記者会見を開き、ケニヤ料理とビールを記者に振る舞い、ケニヤ人の練習や悪戦苦闘のビデオを披露しました。選手は「いまでは雪が大好きです。雪がなければこのスポーツはできませんでしたから。」と言いました。こうしてナイキは、ユニフォームで参加するだけではなく競技自体に参加しだしました。ナイキが選手とともに参加すると客は熱狂的なスポーツ・ファンと化しました。こんなわけでF2のブランド戦略の2枚も3枚も上手をいっていますね〜。

「日本晴れ」の経済学 森永卓郎 2001.5.31発行 1400円 (株)徳間書店
「21世紀のビジネスノウハウ」悪女型マーケティングはトップダウンからは生まれない 

 森永氏の雑誌記事を読みそこなった人には朗報です。単行本が出ました。今回紹介したいのはIT革命もリストラも切って捨てる「21世紀のビジネスノウハウ」という話題です。それは悪女型ビジネスとも言うべき次の3つの特徴があります。第1、「ナンバーワンよりオンリーワン」です。同じような商品の中でトップシェアを獲得するのではなく、他社にマネできない商品を開発し、高利益を上げるのです。第2、「ブラックホール型のマーケティング」です。ふと足を踏み入れたら抜け出すことができなくなってしまう、あり地獄状態にすることです。もちろんお客さんは巨額な広告費で大量に集められた層ではなく、とりこになったリピータです。第3、「オイシイとこだけ競争原理」です。売り手としてはオンリーワンで競争を排除しますが、仕入れには複数の業者を競争させ高いもの、悪いものを納入してきた業者はすぐ替えてしまいます。そして、このオンリーワン戦略はトップダウンの「全社一丸」方式では決してできません。トップは口出し無用、社員に好きなように仕事をやらせて成功報酬を支払うくらいの覚悟が経営者に必要なのです。プロジェクトA-Xの行方は見えたようなものですね。その他、エリートサラリーマンは幸せではない、反リストラ宣言、オランダ型労働時間短縮とワークシェアリングなど持論満載。

怒りおさまらず 渡辺一雄 2001.4.19発行 1500円 東洋経済新報社
リストラで弱いサラリーマンをいじめるな 

 著者は、百貨店・大丸の元社員です。彼の家に大丸ではない大手デパートの外商部主任で50歳位の雪下史郎氏が尋ねてきました。買いたい物はなかったので断ると、買ってくれなくても伺いたいという。彼は寝たきりの老母と病気がちの妻との3人暮らしだが、会社には辞めろと言わんばかりの仕打ちを受けているという。とうとう会社の勧める希望退職に応じ、会社が20万円の費用を払って付けてくれた再就職斡旋会社の指導の下、就職活動を始めました。ペン習字をやれと言われ自費で教材を買いました。別の人は肥満ではいかんとアスレチックジム通いを勧められ自費で通っているといいます。紹介してくれたのは、契約通り2社。ところが、1社はあまりに条件が悪く、もう1社は先方から断られました。やがて筆者は「雪下」という家族の悲劇を新聞で知ります。夫の蒸発を苦に病気がちの妻が寝たきりの姑を道連れに無理心中。著者自身は、大丸時代に労務担当常務の下、労働組合の左派潰しの急先鋒で大成果を上げ委員長にもなりました。しかし、若手社員の事故死の労災問題を機に委員長を退き、労務担当常務の庇護から抜け出します。その後、彼を襲ったのは、降格と仕事取り上げの連続でした。ついに定年を待たずに退職してしまいますが、自分も雪下氏もリストラの犠牲者、その手口を告発していくことになります。

はみ出し銀行マンの「そんな会社、辞めてしまえ!」横田濱夫2001.3.22発行1300円 (株)講談社
自分の思いや考えを自由に述べて、そうそう簡単には辞めないさ... 

 早期退職や転職をして、新しい人生を開始し幸せをつかむ。と思いつつなかなか踏み切れないのがサラリーマン。そんな時、自分に対する「後押し」が欲しいものです。横田氏の採用した自分の自分への「後押し」はあらゆる場で自分の意見を率直に言い、人事評価を気にして押し黙ることはしないというものでした。これがなんと効果絶大、自分がどんどん変わったといいます。何を言ったかというと

(1)彼の勤めていた銀行では巨額の不良債権を隠すために「返済が滞っている先にも金利返済分を追加融資してそれを回収する」方針が出ました。彼は会議の場で「そんなのはただの自作自演じゃないですか。正直に不良債権額を報告して、正規の損失処理をすべきでしょうが。」と突然発言した結果、上司や次長は激しい剣幕でわめきまくり、支店長はあっけにとられ口をぽかんと開けていました。

(2)サービス残業をさせられている同僚がいれば「1日6〜7時間も飯も食わずに残業しているのに2時間を上限にカットされなきゃいけないんですか。やったものをやっただけ付けるのは労働者としての当たり前の権利でしょう」言う。

(3)同じ支店内で結婚した女子行員が強制的に転勤させられそうになった時、「良く働き、収益に貢献している女子行員の方を転勤させるのは支店の利益に反します。決まりなら、その決まりの方を変更すればよい。人事部にもそう事情を説明すべきです。」と主張。

 考えてみれば、世界で一番議論下手なのは日本のサラリーマンです。正面切って正論をぶつけられると黙ってしまう。上司も本部のお偉いさんも。その結果、自分の周囲は多少変わったが、銀行全体は変わらない。特に本部の連中は落ちこぼれのたわごととして無視。彼はついに暴露本の出版により、「外からの声」で銀行をかきまわそうと試みる。「問答無用の正論には沈黙してしまう」なんてF2もそっくりですね。社員の皆さ〜ん、自分の言いたいことを言うのは自己実現です。辞める気はなくてもどんどん発言し続けましょう。暴露本を出版するのは苦労しますが、インターネットなら簡単に「外の声」として広められますよ。

社長のモラル 日本企業の罪と罰 佐高信2000.12.15発行467円 (株)講談社
1円入札事件、IBM産業スパイ事件、F2の社長サン会長サンは懲りない人達なのね

 故池田敏雄常務は、「日本的経営」の会社では生きていけないような破天荒な社員でしたが、彼がF2をIBMに並ぶ企業に育て上げたといいます。しかし彼の死後、個性を殺す経営が復活し、その象徴が1990年の「1円入札事件」だったと佐高氏は指摘します。この事件では、広島市水道局等のコンピュータシステム設計をF2は1円で入札し、国内のみならずアメリカからも批判を浴びました。著者はこのF2の行動を「取引先との関係を最優先し、ひとつひとつのビジネスで正当な報酬を得ることを忘れた日本的、封建的な振る舞いで日本企業が国際化していない証拠」と批判しました。当時の山本卓真社長は、謝罪の記者会見を開き落札を辞退しましたが、5ヶ月後には「道義的に問題があるか今も疑問」と謝罪を否定するかのような発言をしています。1982年の「IBM産業スパイ事件」の際、小林大祐会長は、同年9月号の「文藝春秋」での田原総一朗氏のインタビューに答え、この事件は仕事がなく失業状態の米国IBM社の社内弁護士が仕掛けたという趣旨の発言をしています。こんな社長サン、会長サンに仕えてきた幹部社員の皆さん本当にお疲れ様。今の秋草サンはどぉ?他日立、松下など各社の”事件”の話題満載。

機会不平等 斎藤貴男 2000.11.30発行1619円 (株)文藝春秋
人事勤労部岡田恭彦部長、佐藤彰彦氏、成果主義を大いに語る。F2社員必読!

 F2の成果主義を中心とする人事・賃金制度の導入のきっかけになったのは、1994年に人材開発部が、現地調査結果をまとめた「米国ハイテク企業労働時間の実態」という報告書でした。その中には「自分の成果は自分の責任」「スキルを磨き良い仕事をもらうのは、本人の責任」「レイオフされるかどうか、レイオフ後仕事を見つけられるかどうか共に本人の責任」という当時の米国の雇用事情が書かれていました。これを読んだ関沢義社長は「アメリカ人は働かないなどと言ったのは誰だ。」と大いに驚き、先進的な人事制度を導入することになりました。その制度は次のポイントからなります。第1は、社員個人が期首に設定した目標の達成度を上司と面談し、決定した評価で賃金を算定する「目標管理評価制度」。第2は、等級別の評価によって決められる「年俸制」。第3は、各社員を等級定義し、定義書を基準に評価を行う「等級制度」。第4は、出退勤時間を管理しない裁量労働性の「SPIRIT」。これらにより岡田部長は「労働組合は不要になるかもしれない。」と語ります。その他、この本では今日各企業に広がる派遣労働についての話題が満載されています。「派遣OLがセクハラを拒否できない事情」派遣スタッフは商品扱いで頼まれたらなんでもしろと指導される。」「派遣会社の営業は正社員ではなく派遣スタッフなみの不安定な身分。売り込む先の企業の人事部門社員もいつリストラに遭い、派遣スタッフにとって変わられるか恐れおののいている。正社員が派遣社員を、人事が正社員を、派遣会社が自社の営業をと弱いものいじめの連鎖の構図」など。そういえばF2本社では派遣社員を頼む際に、事務用品と同じく「購入依頼書」を書いていましたが、今でもそうですか?

突破者流・勝ち残りの鉄則 宮崎学 2000.11.9発行1400円 ダイヤモンド社
この本は会社と一緒に沈んでいくことを望む社員は決して手にしないように

 リストラされて「自分はこんなに会社のために尽くしたのに」と言っても始まらない。会社はそんなことは微塵も思っていないのですから。会社と社員の関係に”道徳律”を持ちこんではいけないと筆者は説く。会社というものは1000億の利益が上がれば次は2000億の利益を目指す。そのためにはゼロから1000億にたどり着くよりもさらに過酷なリストラを実行します。増殖し続けなればならないのが会社組織の宿命であり、好調な会社もリストラするのが当たり前。これが資本主義(自由主義経済)なのです。資本主義の下悲しい思いをしないためには個人として強くならなければいけません。手本となるのがアメリカのサラリーマンです。彼らは解雇のとき会社側に少しでもミスがないかじっと見守ります。ミスがあったら裁判を起こし、一生食っていけるだけの賠償金をせしめようと虎視眈々と狙っています。彼らは解雇されると、その理由を必ず聞きます。その答えが訴訟のネタになるかもしれないからです。日本人は出向や退職の説得に対して「わかりました」と言って泣き寝入りしてしまいます。事実を家族に告げることもできず、毎日会社に行くふりをして同じ時刻に出て行きます。アメリカ人の個人の強さを学ぼう。これは解雇の場面ばかりではありません。F2社員のみなさん、上司の指示には納得ゆくまで「なぜ?」を繰り返し、変なところがないか確認しましょう。

企業と人間−労働組合、そしてアフリカへ 佐高信・小倉寛太郎2000.10.20発行440円岩波ブックレットNo521
労働組合は外からの風を入れる役割を果たそう

 山崎豊子さんの小説「沈まぬ太陽」の主人公のモデルとされる小倉寛太郎氏と会社社会に対する辛口の評論家佐高信氏の対談を収録したブックレットです。山崎さんが小倉氏に取材を始めた時、彼は「自分は何も珍しいことをしてはいない。普通のことを普通にしたまでで、それが小説になるはずはない。もしそれが珍しいことなら珍しがる社会のほうがおかしい。」と小説化を固辞したそうです。山崎さんはそれに対し「そのとおり社会の方がおかしく、そのおかしさを私は描きます。」と説得しました。おかしな社会の労働組合の役割は何でしょうか。労働組合の第一の役割は組合員の生活向上と権利の擁護、第二はいいかげんな経営、安全を無視した経営への監視の役割です。現在のおかしな日本ではこの第二の役割をもっと注目しなければなりません。最近破綻した大企業の中には「労使癒着」で有名なところがあります。腐敗した経営に労働組合が自ら入っていったわけです。労使は常に緊張関係になければならないのです。経営者が優秀で会社運営は万全、組合はもっぱら賃上げや待遇改善を言っていればよいというわけではありません。まったくおかしな社会ですね。F2労組は経営提言に熱心ですが、社長の顔が引きつるような「緊張関係」を持った対話をしていますか。

はみ出し銀行マンの資産倍増論 横田濱夫 2000.10.15発行 514円 (株)講談社
インターネット組合が会社を救う?

 労働組合の多額の資金が政党の活動資金となったり、一部幹部の遊興費に流用されるといった不祥事が表面化している。また労働組合が経営者と癒着し、チェック機能を失ってしまったために*印や△自動車の欠陥商品事故が発生したのではないか。他方会社の株主、とりわけ大株主は企業統治や危機管理に甘い経営者に厳しい目を向け、もの言う存在に変わりつつある。企業の現場の不正や問題を告発する組合を作り株主に情報提供する活動をしたらどうか、その場をインターネットの世界としたらどうか。従来型の組合とインターネット組合の競争を筆者は説く。そして、政党やネクタイの柄を選ぶ自由があるように組合の選択の自由もあるべきだと主張する。そうです!NTTとKDDIがあるようにF2労組とF2e労組があるべきですねー。

ナニワ革命道 青木雄二/竹内義和 2000.7.31発行 1300円 (株)徳間書店
政治・宗教・マスコミ・少年犯罪 革命せんと何も変わらんで

 今の世の中は欲望を満たしてくれる物はたくさんあるけれども、お金がなければ手に入れることができない。テレビを見ればこれ買えあれ買えとコマーシャルが流れているし、ご近所が買ったといえば自分も買わないといけないような気になる。金をかせぐために労働時間がどんどん長くなり、共働きが拡大していく。どんどんお金を使わせそのお金で庶民がますますしばられていくのが今の金権資本主義である。こう断定するのが、「ナニワ金融道」でゼニと人間を描いてきた作者である。氏によれば政治腐敗もあやしげな宗教がはびこるのも凶悪な少年犯罪も資本主義に問題があり「革命」に進むしかないという。でもアオキさんあなた自身は資本主義のおかげで大金持ちになったんですよ。

はみ出し銀行マンの社内犯罪ファイル 横田濱夫 2000.7.25発行 562円 祥伝社
楽しい職場が金融業界にも!みんなの銀行ブルーライト銀行

 某銀行の岸本代理は銀行の営業車の給油するガソリンスタンドでマイカーにガソリンを入れた。店の社長は当たり前のようにその代金を銀行へのつけにまわした。岸本代理はびっくりしたがどの銀行員も同じことをやっているという。それからは毎回同じ手で給油を繰り返した。ところが、行員のリストラを狙う銀行の人事部がこれに目をつけガソリンスタンドに圧力をかけ−協力しないと融資を引き上げる−この不正を摘発した。代理は依願退職のはめに。など10話。会社はどこに罠をしかけるかわかりません。悪いことはしないようにしましょう。

カルト資本主義 斎藤貴男 2000.6.10発行 667円 (株)文藝春秋
F2にもオカルトが−バブル期、研究所では永久機関を研究

 日本企業は終身雇用や年功序列といった、これまで社員の心を会社につなぎとめてきたシステムを次々と廃止しています。しかし、会社は社員の「忠誠心」を失って欲しくはないと切に希望しています。自ら考えることをやめてひたすら組織の言うことを信じ、実践する人格を求め続けています。「ポジティブシンキング(積極思考・前向き思考)」や「すべてが必然・ベストという現実100%受け入れ」といった本来個人個人の価値観であるべき考え方を全社員・全社会の普遍的な原理にできたらどんなにすばらしいことでしょうか。また、社員も個人として完全な自立をするのではなく、何か頼ろうとするものを求めています。このような会社の願いにぴったりあてはまるのが「オカルト(超能力、超自然現象)」や「神秘主義」「信仰心による社員パワーの動員」などです。オウム教団に良く似ているといわれるヤマギシ会にいくつもの企業が視察に訪れ、無償で一生懸命働く村民の姿に限りない生産性という企業運営のユートピアを見出しています。ヒトラーに憧れる宗教心厚き京セラの稲盛和夫氏はオカルトや人生を語りながら、実は企業の論理こそ、万人が受け入れるべき絶対的真理だと説いています。ソニーは超能力を科学技術庁はオカルトを大まじめに研究し、アムウェイ商法はアメリカの後押しの下、大手を振るっています。そして、F2も例外ではありませんでした!バブル期のF2には異端の研究に資金を出す「マイウエィ・プロジェクト」制度があり、光コネクト推進部の部員と厚木研究所の所員が「永久機関」の研究をしていました。永久機関とは一度動力を与えれば永久に動きつづけるとされる機械で、エネルギー保存の法則によって完全に否定された非科学的な代物、特許を出願しても門前払いされます。F2の皆さ〜ん。隣の席の同僚社員がオカルトにはまっていませんか?そんな兆候があったら早めに助けてあげましょうね。

リストラと能力主義 講談社現代新書 森永卓郎 2000.2.20発行 640円 (株)講談社
会社優先主義から個人主義へ−まず人事部をリストラだ

 日本の会社の進める「能力主義」(F2の成果主義)は「企業優先主義」と一体化しており、犯罪的な行為である。これは人事部や企画部が中央集権的な仕組みを失いたくないためだと著者は指摘する。では個人優先主義とはどんな会社運営か。この本では架空の南西総合研究所を舞台にシュミレーションを提示する。第1、部長は評価を行わず売上配分は部のメンバーの合議制で行う。第2、人事権を社員に与え毎年働く部やチームは社員が決める。第3、単純に売上の三分のニを給与の原資として社員に支払うようにする。つまり売上が減ったら本社(間接部門)経費負担も自動的に減らす。第4、経営者は経営判断をしなくて良い。現場が個別に経営判断をしてその積み重ねが会社の経営判断になればよい。第5、部長を廃止して3000万円のコストを削減する。従来の部長の職務はコスト200万円で部内市場原理によってなり手を選ぶ。部長や役員の廃止は意志決定を速くし会社を活性化するという副作用を持つ。第6、人事部は独立採算性とし社内営業を行う。従来の人事の機能であった採用・評価・健康管理などは現場が行い人事部は給与計算や税務処理などの事務を行うものとする。現場はこれらのサービスを人事部だけではなくパソナやリクルートからも合い見積もりを取ってベストなところに発注する。最後に社員を個人事業主とする。このことにより自己啓発の投資を自分で行い、稼ぐ年に集中的に研究材料や文献を購入したり売上を2年間に分散させるなどで納税を効率化したりできるようになる。F2の人事制度は先進的だと世間では評価されているようですが、本書の提案に比べるとまだまだ斬新性に欠けるようです。ただし重大な注意点がひとつ。これまで終身雇用制を前提に入社してきた中高年にはこんなことを適用して会社を追い出してはいけないということです。

沈まぬ太陽(一)アフリカ篇・上(ニ)アフリカ篇・下 山崎豊子 
ハードカバー1999.6.25発行(一)1600円(ニ)1700円 文庫2001.12.1発行(一)590円(ニ)667円 新潮社
この会社はなんJAL?みんなのつばさ−国民航空

 1999年のベストセラー小説。日本を代表する航空会社・国民航空の恩地元(おんちはじめ)氏は予算室のエリート社員だった1961年に1年限りとの約束でむりやり労働組合の委員長にさせられた。恩地委員長のもとそれまでの組合とは打って変わって賃金の引き上げと時間不足と人手不足でてんてこ舞いの機体整備部門などの職場環境を変えるために積極的に行動していくようになる。1962年には欧州訪問から帰国の首相フライト機を止める寸前までのストライキを構える。委員長退任後、会社は報復人事を行う。この会社では海外勤務は2年までの内規があるにもかかわらず彼はパキスタンのカラチ、イランのテへラン、ケニアのナイロビと海外の僻地をたらいまわしにされ、1974年に東京都労働委員会が不当労働行為として命令を出すまで、国内の事業所へ戻ることができなかった。海外勤務中、会社にわびを入れて帰国するよう促しがあったが、彼は信念を曲げなかったのである。そんな夫を妻のりつ子は「あなたの誇り、あなたさえ、惨めにならなければ・・・」(テヘラン転勤内示の時)と支えつづける。会社に負けない会社員と家族の理想の姿があるように思えませんか?この本の読者は意外にも20〜30代の女性が多いらしい。JALに乗ったらスチュワーデスに「小説沈まぬ〜をお読みになりましたか」と話し掛けるのもいいかもしれませんね。

沈まぬ太陽(三)御巣鷹山篇 山崎豊子 
ハードカバー1999.7.30発行1700円 文庫2002.1.1発行667円 新潮社
520名の声なき声よ−御巣鷹山に墜落したジャンボ機に何が起きたのか

 恩地元氏は東京都労働委員会の審問会を経て、海外の僻地たらい回しから十数年ぶりに国内に呼び戻されていたが、これといった仕事を与えられない閑離職であった。ある夏の夕方、国民航空123便が群馬県の御巣鷹山に墜落する。彼は救援隊の第一陣として現地に向かう。ところが、事件の”加害者”である国民航空社員は現場に立ち入ることができず、彼らは乗客家族のお世話係という指示を受ける。恩地氏は、バラバラになった肉親の遺体を確認する遺族に付き添い、対話を重ねる。ある夜、遺族に頼まれてクレパスを買いに出た彼は地元の商店主に「人殺し会社へ売るものは、無えよ。」と追い返され、ボイスレコーダーの記録が新聞に掲載されたのに話をしなかった時には「人殺し会社の社員の顔など、金輪際、見とうない。」と怒鳴られ、ネクタイをつかまる。10月、大阪の「ご遺族相談室」の係が倒れ、後任となった恩地氏は、遺族の家庭に謝罪と補償交渉にまわる。ご遺族係は、肩書きは部長となっているが、ほとんどは定年間際や窓際の閑離職であった。彼は、会社の将来を担うエリートたちが遺族の苦しみと、遺族と会社の板ばさみになっている補償係の立場を理解してこそ、誠意ある補償と安全に対する心構えができる、と考えていた。しかし、会社が行ったのは遺族の集まりを監視し、情報交換を行わせず示談を急がせることであった。

沈まぬ太陽(四)会長室篇・上(五)会長室篇・下 山崎豊子 新潮社
ハードカバー(四)1999.8.25発行1700円(五)9.10発行1600円 文庫2002.1.1発行(四)667円(五)590円 
この地球上で最も危険で獰猛な動物は人間である。

 御巣鷹山の事故の後、時の総理と財界のバックアップを受けて、国見正之氏が国民航空の会長に就任する。彼は、「空の絶対安全」を掲げ”改革”に乗り出していく。機体整備の現場や航空機のコックピットに赴き、現場の社員と対話を行う。国見会長は客乗組合に対する昇格・昇給差別を是正し、分裂している労働組合を統一の上、労使協調の路線を敷こうと考える。そのため、元国航労組委員長の恩地氏の協力を求め新設の「会長室」の部長に抜擢する。さらに、子会社のホテル買収に関わる財務上の疑惑、生協幹部の業者からのリベート受取、チケットを扱う代理店へのバックマージンからのキックバックの着服などの不正の究明と是正に動き、恩地氏もその役割を担う。ドルの10年先物予約による多額の為替差損の発生は国会でも追及された。しかし、会社幹部・国航労組と対立する新生労組・政治家など、社内外の抵抗勢力は猛烈な反撃を行い、国見会長を辞任に追い込む。ドル先物予約問題は閣議決定で不問に付された。会長室は解散となり、恩地氏は元の「ご遺族相談室」への異動を希望し、退任する国見会長は後任への申し送り事項とした。しかし会社と対立したかつての労組委員長と不満を抱く遺族の結託などという会社の妄想により、彼は再びナイロビ(ケニヤ)に飛ばされることになった。「何一つ遮るもののないサバンナの地平線へ黄金の矢を放つアフリカ大きな夕陽は、荘厳な光に満ちている。それは、不毛の日々に在った人間の心を慈しみ、明日を約束する、沈まぬ太陽であった。(完)」

敗者復活リストラ社員の大逆襲 宮崎学/設楽清嗣 1999.5.10発行 1500円 (株)幻冬舎
 退職届は死んでも書くな、出向は拒否しろ、落ち着いて会社の言い分を聞き、メモをとれ

もし会社があることないこと並べたてていじめたあげく、社員を退職に追い込んだら当人はどうするか。バキュームカーで会社に突っ込んで中身をぶちまけたらどんなに気持ちがすっきりするだろう。しかしそんなことはやってはならない。会社にとってたいした実害はないし自分が犯罪者になるだけだ。相手が一番傷つくのは払いたくない金を払わされることだ。解決金や退職金の減額分をきちんと取る交渉術を教えてくれる本書。しかし、世の中にはひどい会社がたくさんあるものですね。F2も業績が悪化したらどうなることやら。

スーツの下で牙を研げ! 佐高信 1998.7.25発行 495円 (株)集英社
闘う姿勢が自由を獲得する、会社に立ち向かい自分の足で歩こう

評論家佐高信氏の対談・エッセイ・人生相談集。「OL委員会」の清水ちなみ氏との対談ではこんな話題が出ています。清水さんの勤めていた会社でも「みそぎ研修(冷たい水に入る)」がありました。この研修の目的は一度バカになることによって物事に挑むきっかけをつかむことだそうです。そうか!日本のサラリーマンはほんと考えるとばからしくてやっていられないことを毎日たくさんしなければならない。意図的にバカを作る必要があります。いろいろ考える人間はだめなわけで、結局会社のことだけを考える人間をつくらないといけないのです。会社を第一に愛して奥さんなんか愛するなと。だんだん宗教的なノリになってきます。会社ではおじさんが偉くなくてはいけないのです。それは仕事ができるとか、能力があるとかの問題ではありません。偉くなくてはいけませんからおじさんはとことんがんばってしまいます。挙句の果てには「部下を見張るのが自分の仕事だ」と公言したりします。日本の高度成長を支えたという自負がありますからこのようなおじさんは変わりません。これもまた宗教的ですね。おじさんと対照的なOLは天下国家とか会社とかを語るのが苦手ですから、変にだまされない。会社のためになんて言ったてすぐにウソだとわかる。男は会社のためになんて言われるとポーッとなって悪いことでも平気でやってしまう。日本で一番偉い会社を変えるにはまず、おじさんを変えないといけません。F2のOLのみなさんもおじさんを改造してあげてください。

会社との「闘い方」教えます 設楽清嗣 1998.4.1発行 1500円 現代書林
黙って静かに消えたりするな、会社に対してファイティングポーズをとろう

会社内での理不尽ないじめやリストラの中、若手サラリーマンはどんな思いで毎日を過ごしているのでしょうか。30代後半のいわゆる「バブリー世代」は就職の際、蝶よ花よともてはやされ、甘やかされて入社してきました。彼らは今、企業の重荷になってきている。数的に多いし、支払う給料の額も多い。かくして成果主義、賃下げ、配転などリストラが容赦なく襲い掛かります。甘やかされて入社し、バブルの中で仕事を覚えてきただけに不景気という逆風への対処方法がわかりません。あげくの果てにはあっさり退職してしまいます。大変な思いをして社員に働きかけて会社と交渉するくらいならさっさと次の就職先を探す方が得策と考えている節があるのです。しかし、次の就職先はありません。会社の理不尽な仕打ちにあっさり引き下がりつづけていては、「辞めぐせ」がつき自分自身が惨めになるだけです。もちろん会社に勝つことは容易ではありません。相討ちでいいというつもりで「ただじゃ済ませない」というファイティングポーズを取った時に何とか道が開けるものです。なぜなら、会社は世間体を非常に気にするからです。社員に騒がれて社会的イメージが傷つく位なら何とか収めようと妥協策に出てきます。どう騒いでどう打開したか、具体的な事例が本書に掲載されています。

はみ出し銀行マンの勤番日記 横田濱夫1997.7出版1200円オ−エス出版/1995.8出版460円角川書店
銀行のお客様はあ〜ありがたや、インテグレータ冥利につきます 

元エリート銀行マンの作者の出世(を棒に振った)作。銀行各行が第三次オンラインを続々と完成させた頃、勘定系システムはIBMの独壇場ではなく、国産コピュータメーカのものも遜色がなかったが、情報系システムはIBMのものがダントツに良いというのが金融界の常識だった。ところが、横田氏の勤務する「港のみえる丘銀行(またの名をブルーライト銀行)」では情報系も千代通のシステムを使っているというアリガタ〜イ銀行だったのです。しかし、このシステムはだれも使いこなせないほど難しく、担当SEも「ったく、ひでえシステムだな。」といっているほどだった。さらに行員が情報のメンテをしないため顧客宛ての挨拶状に死んだ前社長の名前が印字され怒りを買うこともしばしばだったのです。あげくの果てにこんなシステムの導入を決めたは黒沢システム担当役員が千代通から何かもらっているのではないかという噂まで流れる始末。F2営業の皆さーん。キーマンに食い込んで売り込みを成功させるのもいいけれどエンドユーザのことも忘れないでください。他、友人Tの社畜論や健康回復法など話題満載。

会社をとるか、自分をとるか 井澤次男 1997.6.1発行 1500円 (株)はまの出版
社生族から自生族へ、勇気を持って行動しよう

この本はM物産社員の著者がフランス勤務での経験をきっかけにほぼ30年間毎日定刻に仕事を終え、有給休暇を十分活用したマイウェイ会社生活を送りつづけたという記録です。この会社の人事部の見解では年間の労働時間は最短モデルで1660時間、平均1956時間、最長でも2436時間ということでした。しかし、これは記録に残された数字による説明です。記録に残らない次のようなサービス残業はどの位になるのでしょうか。時間外の勉強会、セミナー、家に持ち帰ってする仕事、取引先での就業時間後の打ち合わせ、夜の接待・上司との夜のつきあい、社内の歓送迎会、有給休暇の取り残しetcこれらをひっくるめると年間1200時間位になるのではと予想されます。これに業務としての残業600時間を加え、会社生活が38年とするとなんと7万時間を余計に会社に費やしていることになります。7万時間あれば4年生大学を20回以上、一冊5時間とすれば14000冊の本が読めます。この時間を会社にではなく自分に捧げたとすれば隠れていた才能が大きく花開くこと間違いなしです。そのための10の考え方を著者は提起します。

1.会社との境界である時間の「ワク」は自分で守り、部外者の侵入を防ぐ。

2.「働きがい」は1800時間の契約労働時間に限り、「生きがい」は私生活に求め両   者を区別する。

3.会社中心の出世第一主義をやめる。

4.社内の同僚との競争意識は捨てて、自分の中の可能性と競争し高める。

5.他人の視線や噂を気にしない。そのためには趣味や習い事に熱中し職場のつきあ   いはほどほどにする。

6.豊富な自由時間で資格取得など実力を蓄える。

7.豊富な自由時間で社外で稼ぐことを試みる。

8.上司の評価は「年間1800時間のワク内だけ」と割り切り、付合や残業はやめる。

9.定年まで会社に勤める考えをやめる。いつやめてもいいと思う。

10.仕事が多いのは会社や上司の責任であると割り切る。

F2社員の皆さん!あしたからの合言葉は「オ・サ・キ・ニ」にしましょう。     

会社の民俗 佐高信編 1996.6.20発行 1550円 小学館
「やはり女性は使えない」老舗大企業の管理職、匿名にて公言

この本は変わりつつある企業社会と会社人間の姿を描くルポ・評論12編から構成されています。その中の「ワーキングウーマン(W・W)の民俗」ではこんな話題が紹介されています。男女雇用機会均等法が施行されて10年、男女格差ならぬW・Wの間の格差が発生してきているといいます。次のような4人の実例が登場します。

金融機関総合職のA子さんは住環境や広さより通勤時間を考慮して選んだマンションにひとり暮らし。朝7時から夜8時、遅い時は終電ぎりぎりまで仕事に費やします。食事はもっぱら食堂とコンビニで家ではお湯を沸かすくらいかしない。読むのは仕事に直結する書類と雑誌だけで本はできるだけ読まない。バーゲンセールやウィンドウショッピングは「時間とエネルギーの無駄」だから行かないという生活を送っています。

メーカ総合職のB子さんは入社して男性社員が仕事をしない、ないしはできない女性をかばうことにびっくりしたクチでしたが、10年たって感じるのは「総合職はキャリアでもなんでもなくて単なるサラリーマンだ」ということだそうです。今では定年までこの会社に勤めるのはあまりに悲しいことなので社会保険労務士の資格を取って40までに退職することを考えています。W・Wの生きる道は会社のみにあらずというわけです。

流通専門職のC子さんは都内の2世帯住宅で夫と両親と暮らしています。娘の幼稚園の送迎を始め、子供の世話は実母にしてもらっているため出産後も以前と変わりなく残業や出張ができる状態にあります。先日急な出張の時、母親が荷物を詰めたトランクをタクシーで運んできてくれました。彼女は昇進も順調ですが、話の中心は両親と娘のことで夫の存在がほとんど感じられません。聞くと朝早く夜遅い典型的な会社人間で存在感が薄いという。W・Wは家族に迷惑をかけないと会社業績に貢献できません。

元金融機関総合職のD子さんは金融機関を退職後、専門誌の出版社を2社転職し出産を機に専業主婦となりました。最初の金融機関では会社の上層部が総合職の活用に戸惑いありありなのを感じ将来への不安から退職しました。次の出版社では2年目に激務から体調を崩し、上司が急に冷たい態度に変わり退職。能力主義といいながら実は使い捨てと痛感しました。3社目では妊娠中に子育てのハードルを越える肉体的・精神的自信がなく退職。「体力のぎりぎりまで自分のエネルギーを仕事のために使うなんて自分にはできない」というのが結論でした。そりゃW・Wだけでなくだけでなくオヤジでもそうでしょ。

結局会社で生き残っていくためには、男性の価値観の一方的押し付けを受け入れ、オヤジ化・社畜化するしかないみたいですね。F2のW・Wの皆さんいかがお過ごしですか?