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楽しい職場みんなのF2

2005.10.20開設5周年記念

労働時間に加え労働内容も虚偽の内容で申請
  こんにちわ。MLTです。富士通四国システムズ損害
  賠償事件(平成16年(ワ)11732号)。今日、
  10月19日、第六回弁論準備が行われました。
 
  ■今日の流れ
 
  順を追って説明します。
  まずは、書面の確認。それから弁論です。
 
  ▼被告(準備書面より)
 
  原告の症状とされるものは、すべて原告自身の申告の
  みに依存している。仮に、原告が「うつ状態」もしく
  は「うつ病」であったとしても、短絡的に過剰労働と
  結びつけることには同意しがたい。原告についての資
  料を加えた上で、第三者の専門家の知見を求める予定
  である。
 
  ▼原告(準備書面より)
 
  長期にわたって原告の長時間労働が発覚しなかった最
  大の要因は、労働時間に加え労働内容も虚偽の内容で
  申請をさせるという、訴外会社の組織的な行為である
  と原告は認識している。真実を明らかにするため、原
  告が訴外会社で使用していたパソコンそのもののハー
  ドディスク内の情報を調をべたい。
 
  ▼被告
  パソコンのハードディスクの開示は、きっぱりお断り
  します。パソコンのハードディスクの中身と原告の症
  状には因果関係がない。裁判はあくまで長時間労働に
  ついて議論しているんでしょう?それなら、労働時間
  のみが焦点ですよ。
 
  ▼原告
  情報を隠すことなく開示していただけると期待をして
  いたのですが…。残念ですね。/最終的な結論は労災
  (申請)の結果がどうなるかですね。被告さんの主張
  だと、症状は人によって違うので、原告はうつ病でな
  いと、別途調べるということですね。
 
  ▼被告
  ええ。
 
  ▼原告
  原告は他の人よりも特別だと。特別にうつ病になりや
  すかったということですね。
 
  ▼被告
  そういうことです。
 
  ▼原告
  本来なら、そろそろ(労災申請の)結果が出ても良い
  頃なんですが、JRの件と、それからアスベストの件
  で労基署が手一杯になっているらしく遅れているみた
  いですので、本件は労災の判断待ち状態です。次回期
  日はすこし伸ばしましょう。
 
  ▼裁判所
  では今年12月14日(水)15:30〜はどうでし
  ょう?
 
  ▼原告・被告
  かまいません。
 
  ■まとめ
 
  ハードディスクの開示を拒否するということは、被告
  にとって不利な情報が記録されている可能性を示すも
  のです。原告はこれを重く受け止めています。もちろ
  ん、あらゆる手段で追及します。つかんだシッポは離
  しませんよ!
 
  議論は10分程度で終わりました。
  次回期日は12月14日です。
 
  以下は資料です。
  双方の準備書面です。
  被告の作文が非常によくできていています。
 
  -------- 資料 --------
 
  ■原告 準備書面
 
  1.
  本件の争点のひとつは、原告が訴外会社からどれだけ
  の時間働かされたかという「労働時間」の点にある。
  これについては、被告は、被告自身の持つ情報を隠す
  つもりはなく、原告に対して、その開示には応ずる、
  と述べている。そして、現に、これまでの期日の間
  に、訴訟外で「仕事票」のコピーを被告から原告は受
  け取った。しかし、これらはプリントされたものであ
  り、元々の「情報」ではない。その意味では不十分で
  ある。原告としては原告が訴外会社で使用していたパ
  ソコンそのもののハードディスク内の情報の開示をぜ
  ひお願いしたい。
 
  2.
  原告が会社で使用していたパソコンについて被告代理
  人あるいは担当者の立ち会いのもとで原告がパソコン
  を操作し、記録を抽出する機会を設けることを求め
  る。抽出する記録と、その理由は以下のとおりであ
  る。
 
  1)メールの文章の記録について
 
  既に原告は、実労働時間とタイムカードが一致しない
  ことを、大阪中央労働基準監督署および訴外会社の立
  ち会いのもとで確認し、訴外会社の労働時間の管理方
  法に問題があったことを明らかにした。くわえて原告
  は、仕事票に記載のある労働内容と、実際の労働内容
  が一致しないと認識している。労基署の調査があるま
  で、長期にわたって原告の長時間労働が発覚しなかっ
  た最大の要因は、労働時間に加え労働内容も虚偽の内
  容で申請をさせるという、訴外会社の組織的な行為で
  あると原告は認識している。その一連の証拠となりう
  るメールの文書(作業した覚えのない労働内容を仕事
  票に記載するよう原告に指示する内容)が、パソコン
  に記録されていると、原告は認識している。(※労働
  内容の不一致箇所については省略)
 
  2)すべてのファイルのタイムスタンプ(作成・更
  新・アクセス)の記録について
 
  メール送信記録は、パソコンでメールが送信されたと
  きのみ残る。タイムスタンプは、パソコンで何らかの
  操作が行われたときに残る。よって、すべてのファイ
  ルのタイムスタンプを調べることにより、原告の労働
  時間をより正確に算出することができる。原告の労働
  時間を、より正確に算出することは、今後訴訟をすす
  めるうえで重要である。
 
  以上
 
  ■被告 準備書面
 
  第1 原告の症状について
 
  1
  原告の症状については、担当医である××医師作成の
  カルテ(乙1号証、同和訳7号証)およびそれと一体
  として編纂された編綴された診断書(平成16年4月
  6日、同年9月18日)、通院医療費公費負担の診断
  書(平成16年4月20日)、傷病手当金請求書(平
  成16年5月から平成17年までの毎月1回)、大阪
  中央労働基準監督署長からの意見書提出依頼(平成1
  7年2月10日)に対する回答書の下書き(?)と思
  われるもの等々に記載がなされている。
 
  2
  これらの状況を整理すると次のとおりである。
  (a)現場での過度の緊張(強い緊張、職場の緊張)
  (b)息苦しさ(仕事中息ができないような苦しさ、
  呼吸が吸いっぱなし、はきっぱなし)(c)手の汗、
  冷や汗(手足の汗、手掌の発汗)(d)排尿障害(尿
  もれ、尿意頻回)(e)不眠(入眠困難、夜も眠りに
  くい)、日中の眠気(f)制止(思考制止)、おっく
  う感、意欲の低下(入浴もおっくう、人との会話が乏
  しく、外出もおっくうで、メールのやりとりもおっく
  う、やる気が出ない、何かやりたいと思うが持続しな
  い、思い通りに外出したり生活を楽しむことが出来な
  い)(g)うつ症状、うつ病状態、抑うつ気分、抑う
  つ状態(h)不安、焦燥、おちつきのなさ(少しイラ
  イラして、イライラして落ちつかないことが多い)
  (i)激えつ的(人に対して攻撃的、衝動的にものを
  買う)
  これらの症状は、いずれも原告が担当医に申し述べ、
  担当医がそのままを記述したものと思料される。言い
  換えれば、これらの諸症状は原告の申告がすべてであ
  り、これに依存していることになる。
 
  第2 病名について
 
  1
  前記症状の中で、16年4月20日の診断書C欄や、
  16年5月21日付の傷病手当金請求書、「傷病の主
  症状及び経過の概要」欄に「自律神経症状」との記載
  がある。従って、各症状の中でも(a)緊張、(b)
  呼吸の不調整、(c)手足の汗や冷や汗、(d)尿も
  れ(頻回)は、病名としてのうつ状態、うつ病とは区
  別されなければならない。
 
  2
  (f)おっくう感、意欲の低下などのうち、ひどい落
  ち込みに相当する抑うつ気分は、病名のうつ状態、う
  つ病に関するものである。そして、(e)不眠はうつ
  症状に固有のものではない。(i)の激えつ的につい
  ては薬の副作用とも考えられる(乙1号証カルテの1
  6年5月25日の記載「パキシルによる攻撃性の亢進
  と思われるので変更した」)。(g)のうつ症状、う
  つ病状態、抑うつ気分、抑うつ状態は、症状の抽象的
  な説明であると共に、病名の記述といえる。
 
  3
  ××医師は、初診の平成16年3月16日にカルテ2
  頁の傷病名を「うつ状態」と特定している。そして、
  同年4月6日の診断書も病名「うつ状態」としてい
  る。また、同年5月21日以降毎月1回作成している
  傷病手当金請求書の傷病名も「うつ状態」となってい
  る。甲1号証も「うつ状態」であり、同日付のカルテ
  に編綴された診断書、診療情報提供書も同様である。
 
  4
  その一方で、同年4月20日の通院医療費公費負担用
  の診断書の「@精神疾患の病名」欄は「うつ病」とな
  っている。また、平成17年2月10日前記労基署長
  からの提出を求められた意見書の負傷の部位及び傷病
  名欄は「うつ病」となっている。評価の対象となった
  症状は同一であり、それに対する対象の評価が、一方
  では「うつ状態」であり、他方では「うつ病」となっ
  ている。両者を同一のものとする見解は理解できな
  い。
 
  5
  乙4号証の中川晶医師の講演によると「今までは、精
  神科の判断基準というのはメチャクチャなところがあ
  って」「診断基準をいくつか設けて、大項目と小項目
  に分け、割り振りしていくという、非常にプラグマテ
  ィックな診断基準の本をつくったわけです。」と述べ
  「DSM−V」を紹介している。また、前記労基署長
  の問合わせ項目の中には、「3.診断傷病名について
  (疾患名及びその根拠、ICD−10の該当する項
  目)」を挙げるように求めている。乙2号証の「IC
  D−10」臨床記述と診断ガイドラインに「F32 
  うつ病エピソード」が列記されている(129ページ
  以下)。「患者は通常、抑うつ気分、興味と喜びの喪
  失および活力の減退による易疲労感の増大や活動性の
  減少に悩まされる。」「他の一般的な症状には以下の
  ものがある。」として(a)から(g)の7症状を挙
  げている。更に、身体症状の中には明らかな精神運動
  の制止あるいは焦燥が客観的に認められること(他人
  から気づかれたりすること)が挙げられている(13
  0頁、下から15行目以下)。
 
  6
  原告の症状とされるものは、すべて原告自身の申告の
  みに依存している。客観性の確保のためには、原告の
  発症後の日常の行動を通じての心理的、精神的、身体
  的、知的な状況が可能な限り明らかにされ、それをも
  加えた総合的な専門的所見が必要とされる思料する。
  ICD−10の「F32」の頁には、うつ病の固有の
  症状として、「自己評価と自身の低下」「罪悪感と無
  価値感」「自傷あるいは自殺の観念や行為」が挙げら
  れている。原告の発症後の並々ならぬ強い自己主張は
  これらと結びつかない。
 
  7
  ××医師の前記労基署長への意見書(カルテ添付)の
  下書きと思われる記載では「重症のうつ病エピソード
   F32.3」となっている。尤も、原本では「中等
  症うつ病」と記載し、また「F33.11」(判読不
  分明)との記載を複数の横線で抹消している。そして
  下欄に「重症」、「F32.3」と書き直してある。
  「F32.3」は乙2号証の133頁によれば「上記
  のF32.3の診断基準を満たす重症うつ病エピソー
  ドであり、妄想、幻覚あるいはうつ病性昏迷が存在す
  る。妄想は通常、罪業、貧困、切迫した災難、患者が
  引き受けた責任に関するものである。幻覚や幻臭は通
  常、中傷や非難の声、腐った汚物や腐敗した肉の臭い
  のようなものである。」とされている。原告の症状に
  ついての、これまでの記述の中で、このような症状は
  見当たらない。
 
  第3 原告の発症と被告会社の職場環境
 
  1
  原告は過剰労働が直ちに原告の症状を起因せしめたと
  する(請求原因「3.原告の過剰労働と発病(4)原
  告は従前健康な若者であり、本件発症は訴外会社のも
  とでの過剰労働から発症したものである。」)
 
  2
  仮に、原告が「うつ状態」もしくは「うつ病」であっ
  たとしても、短絡的に過剰労働と結びつけることには
  同意しがたい。乙3号証の513頁の上段の「原因」
  における記述は、「精神分裂病と同じく、素質が重視
  されますが、これと発病との関係はかならずしも一定
  しません。ある統計によると発病者のおよそ八〇%に
  遺伝関係がみられるといいますが、この関係の認めら
  れない患者もあり、やはり発病にはいくつかの因子が
  絡んでいると思われます。」「一般的に発病前から外
  向的、もしくは人づきあいのいい、性格のめだつ人が
  多いようです。ひどく楽天的な一面、一方、何かに執
  着的な性格の人に発病することも多いといいかえるこ
  ともできましょう。誘因(きっかけ)としては感動、
  恐怖、心身の疲労、病気、妊娠、出産、月経などがあ
  げられています。素質のある人がこうしたきっかけか
  ら、発病することが多いようです。普通二〇才前後に
  発病することが多いものですが、中には中年を過ぎて
  から始まることもあり、女性では更年期障害にひき続
  き、現れることが少なくないようです。」と述べられ
  ている。
 
  3
  被告の職場における労働環境は、原告のみが例外とい
  うのではなく、他の従業員も類似の状況下にあった。
  しかし、発症したのは原告只一人であり、それ以前も
  それ以降もない。発病率は原告を除けば「0」であ
  る。そして、原告発症後のこれまでの1年半の間にお
  ける罹病率(初回エピソードを生じる危険性のある集
  団の構成人数に対する、ある期間中の新たに診断され
  たケースの割合である。乙5号証5頁「うつ病の疫
  学」)もゼロである。このことは、職場環境と「うつ
  病」の関連を困難視する証左である。
 
  4
  同書18頁「うつ病の危険因子」では、性別、年齢、
  民族/人種と文化、精神化既往歴、遺伝と精神科家族
  暦、社会経済状態、都市、身体疾患などの個人的要因
  への分析や、地域におけるストレッサーという環境に
  由来し、あるいは制御不能な出来事との関連の研究も
  されている。
 
  5
  ××医師は、平成16年5月から平成17年2月まで
  の傷病手当金請求書の保険医の意見欄の「発病・負傷
  の原因」について「不明」と診断し続けている。この
  相当因果関係の主張立証は原告の訴訟法上の責任であ
  る。被告は、××医師の証言を踏まえて、乙1号証の
  他に、原告についての資料を加えた上で、第三者の専
  門家の知見を求める予定である。
 
  以上