ここに語られるは、世紀末を戦い抜いた戦士達の詩。
偉大なる来栖川と、剛毅なる神岸の詩。
騒動の裏に潜む真実の詩。
今、その物語を語ろう・・・。
1997年、来栖川グループ会長は有る者達を呼び寄せた・・・
会長室・・・
「お呼びですか、旦那様。」
「他でもない。源三郎が北関東を平定した。」
「まことでございますか!? これで、関東は我ら来栖川の・・・」
「いや、まだ南関東の西部が残っている。」
「ですが、あのようなとこには大した敵も・・・」
「あるのだ。実は藤田がそこにいる。」
「!! 藤田が!? あの、救世主の・・・」
「ところが問題がある。奴は町田市にいることが分かったが、
そこにはあそこ一帯で最強の豪族、神岸家が根を張っている。」
「ほほう、なるほどそういうわけですか。では早速幹部を集めます。」
「うむ、頼むぞ。」
来栖川グループは関東一円を支配する最強の財閥である。
強大な軍事力で諸家を滅ばし今や天下人の勢いである。
「旦那様、集まりました。」
この男、長瀬源四郎は来栖川の親衛隊、黒母衣衆の指揮官である。
また、暗殺一族、長瀬一族の者であり恐ろしい武術を持つ。
先頃も彼の一族が、大地主の月島家の若当主を暗殺した。
さらについさっき、隆山の大豪族、柏木家を滅ぼした。
鬼をてなづけて、一族を皆殺しにしたらしい。
「よし、入れ。」
入ってきた者達は・・・
孫娘の芹香と綾香、マッドサイエンティスト長瀬源五郎、そしてその父源四郎である。
「で、何なの御爺様?」
綾香が口火を切った。
「藤田が町田にいる。神岸家の保護下にいるらしい。」
「!」
一同に緊張が走った。
「そこで・・・と思ったのだが、他の将軍達はどうした?」
「いずれも北関東におられます。」
会長は一瞬、しまったという顔をしたが、
「ああ・・・そうか。だが、時間がない。お前達でなんとかしてくれ。」といった。
「・・・・・・」
「ああ、安心していいぞ、芹香。兵は好きなだけ持っていけ。」
「で、敵の状況はわかっているの? 情報が無くちゃ、連れてく数も決められないわよ。」
会長は不敵な笑みを浮かべ、
「ふふふ、儂がそのような手抜かりをおかすとでもおもうたか。
KSS(来栖川シークレットサービス)の部隊が潜入、陣地構築を開始している。」
「なるほどね。現地の生の情報が手にはいるってわけ。
どうなの? 敵の軍隊って?」
「これがなかなか強力だ。少豪族も手を組んで、小競り合いはしているが、
ほぼ神岸の属国だろう。」
「しかし・・・」
長瀬源五郎が口を開いた。
「主力が北関東に出払っている以上、ここにいる兵だけで神岸に勝てるのですか?」
「そこで・・・だ。源五郎、そなたに新型兵器HMシリーズの部隊の指揮権を与える。
既に陣地ができているから、そこに留め置け。」
「ははっ! ありがたき幸せでございます。」
「よいか! この戦いは我が家の明暗を分ける戦いだ! 心してかかれ!
・・・では、芹香にこの軍団の総指揮権を与える。参謀に源四郎を付けるから頼むぞ。」
「・・・・・・」
「綾香は最前線の指揮を執れ。敵の懐柔も忘れるな。」
「はい、御爺様」
「では、発て! 勝つまで帰ってくるな!」
かくして、来栖川は壮絶な進撃を開始した。
一方、そのころ町田市の神岸城では・・・
「なに? 東部に怪しい集団がいるだと?」
「はい、豪邸と研究所を建造中です。」
「で、何者だ?」
「それはまだ・・・」
「ちっ、役たたずめ。とっとと調べて・・・」
「お頭! 連中の正体が分かりました! 来栖川の連中です!」
「なにい!? 奴らめ、ついにここまで来たか・・・、おおかた浩之がねらいだろう。
よ〜し、丁重にもてなせ!」
「その任務、僕に!」
「よし、雅史。お前の部下で一発かましてこい!」
「はい!」
来栖川家豪邸・・・
「敵に気づかれたようね・・・。まあ、これだけ派手にやれば当然かもしれないけど。」
綾香が窓を見てつぶやく。
「・・・・・・」
「え? 敵の勢力ですか?」
芹香の問いにKSS兵が答える。
「神岸家の首領は熊の異名を持つあかりです。従属勢力には、
南部の豪族長岡家、隣国の佐藤家があります。
他の豪族は、多くは町田の九龍城の異名を持つ東鳩高校に籠もっています。」
「お嬢様! 敵の来襲です!」
そこに、セバスチャンが駆け込んできた。
「なかなか早いじゃないの。姉さん、連中は私に任せて。
長瀬! HM部隊を出して! KSS第一、第二部隊もついてきなさい!」
「全員、戦闘配備!」
町田市東部県道・・・
佐藤軍本隊5000と、姫川の支隊2000が展開した。
たいする来栖川勢は、綾香直属部隊1500と、KSS1000、HM−13部隊2000。
「結構多いわね・・・まだ全軍が到着してないんだから仕方ないけどね。」
「お嬢様、支隊の姫川琴音は超能力を使えるそうです。」
「え? 意外ね・・・姉さんと同じ様なことが出来るなんて。
いいわ、HM−13で姫川隊をつぶしなさい!」
「来ないで下さい・・・」
姫川隊にHM−13部隊が突撃を仕掛けてきた。
「目標指揮官、攻撃開始。」
隊長機セリオが全機に命令した。
「念波!」
琴音ちゃんは敵の精神を支配しようとした。
だが、HM−13は全く動じない。
「! この人達・・・人間じゃない!?」
だが、健気な琴音ちゃんはそれでも冷静だった。
「サイコキネシス!」
衝撃波がHM−13を数体吹き飛ばした。
だが、それでもHM−13は起きあがって攻撃してきた。
姫川家の兵士も応戦していたが、実力の差は歴然としてきた。
「佐藤さん! なんとかしてください!」
「ああ! 琴音ちゃん!」
雅史は意外な琴音ちゃんのピンチに動揺した。
「3000を割いて応援に向かわせろ!」
「え? しかし、それでは我が隊が手薄に・・・」
「構うものか!」
「ふふふ・・・佐藤隊が手薄になったわね。連中、HMの実力をまだ分かってないみたいね。
本隊とKSS全軍で敵本隊を攻めるわよ!」
「うわあ、敵だあ!」
佐藤隊は突然の本隊のお出ましに動揺した。
「敵大将の首を取るのよ!」
「私にお任せを!」
側近の一人が前に進んだ。
「殿! 敵が突進してきます!」
「受け止めろ! お頭におこられちまうだろうが!」
そのとき、先ほどの側近が現れ、
「佐藤雅史! 覚悟!」
「そうはいかないよ。」
雅史は鉄球を取り出した。
「ドライブシュート!」
ズグッ!
「くっ、やりますな・・・」
側近はうめいて倒れた。
「よし、覚悟するんだ・・・」
その時、
「殿! 全軍総崩れ! 直ちに撤退を!」
「ええ!? そんな・・・せっかくこれからと・・・」
「早く! 姫川隊も潰走しました!」
「! 僕をおいていくなんて・・・」
佐藤隊も後を追って潰走したが、彼がどんなことになったかはあえて語らない。
「取り逃がしたわね・・・、まあ、いいわ。戦いはこれからよ!」
そして、物語が始まった・・・