作:◆xSp2cIn2A
「やっぱ僕はあいつらを追いかけることにする」
零崎がトラップに引っ掛った誰かを見に行ってから、出夢くんが言った。
「次の放送であいつらの名前が呼ばれたら寝覚めが悪いからな」
「えー! 出夢くん行っちゃうの?」
ドクロちゃんが残念そうに出夢くんの手を引っ張る。
「もっとボクと○×△やろうよ〜」
「あんな僕が一方的に不利になるゲームなんて二度とやりたかねーよ」
苦笑しながらいう出夢くん。○×△とは、マルバツ(3×3のマスに交互に○と×を書いていき、
同じマークを縦・横・斜めに三つそろえた方が勝ちというあれだ)の改造版で、
○の人はさらに△を書き入れられるというものだ。ちなみに、△は○として扱われる。もちろんドクロちゃんが○だ。
「出夢くん、本当に行くのかい?」
「まぁな、ぎゃはははは!心配してくれるのかい?おにーさん」
出夢くんは、殺し屋とは思えないような笑顔を浮かべて言う。
僕は凪ちゃんに訊く。
「凪ちゃん。君の意見は?」
「出夢の意見ならそうしたらいいと思うぞ、オレは。確かにオレもさっきの奴らは心配だからな」
木の幹に身体を預けていた凪ちゃんは、こちらに歩いてきながらさらに続ける。
「ただし、もし二人を説得できるのならここにもう一度戻ってきてくれ。脱出するにも大人数の方が有利だ」
「ぎゃははは!わかったよ、二人を説得してみる……さて、零崎がかえって来る前に行くとするか。
やっぱり、あいつは好きになれそうにねーや。じゃぁな、炎の魔女におにーさん。それと三塚井、
妹が戻ってきたみたいで楽しかったぜ……あばよっ!」
出夢くんはそう言うと、二人が居なくなった方向に歩いていく。
「あぁそれと。これ、僕は使わないからやるよ」
出夢くんはデイパックの中から細長い何かを取り出すと僕たちのほうに放り投げ、今度は本当に行ってしまった。
「出夢くんって本当に面倒見がいよな………殺し屋だけど」
ぼくはしばらく出夢くんの去った方向を見ていたが、
「あ!エスカリボルグ!」
ドクロちゃんの声に、視線を出夢くんが放り投げたものに移す。
それは、いかにも凶器といった感じの釘バットだった。しかも普通の釘バットではない。たいてい釘バットというものは、
木でできたバットに鉄の釘を打ち込んだものなのだが、ソレはなんと金属バットから釘が生えていたのだ。
よく見ると打ち込まれているのではなく、元からバットに釘が付いた状態で作られたのがわかる。なんて禍禍しい凶器だろう。
「あれ?これエスカリボルグじゃない」
まだ足が治っていないドクロちゃんが、木の幹に背を預けながら左手で釘バットを振り回しながら言った。
そうなのだ、これは後から零崎に聞いた話なのだが、その釘バットの名前は『愚神礼賛』(シームレスパイアス)零崎一賊の殺人鬼
零崎軋識の愛凶器なのだそうだ。
しかしドクロちゃん…まだ右手が治ってないからって左手でそんなに重そうな凶器を軽々と振り回さないでよ。
ぼくは、左足の腱が切れているはずなのに、杖を使えばもう歩けるまでに回復した謎の天使にむかって、心の中で突っ込みをいれた。
しばらく木と木を飛び移りながら、超人的な速さで足跡を追っていた出夢だったが、森を抜けたところで足跡が一つ減っているのに気付く。
「はっ!味な真似をしてくれるぜ」
出夢は言うと、地面に降りて足跡をよく観察する。森の中に少し戻っていったところで片方の足跡――小さいので長門であるということが分かる―
が一つだけ深くなっていることに気付く。まるで二度踏んだかのように。
出夢はそこから少し先の茂みを掻き分けて進むと、やがて一人分の足跡が唐突に始まっているのを見つけた。
「さて、どっちを追うべきか……」
出夢は腕を組み、思考する。
【戯言ポップぴぴるぴ〜】
(いーちゃん/零崎人識/霧間凪/三塚井ドクロ)
【F−4/森の中/1日目・07:00】
【いーちゃん】
[状態]: 健康
[装備]: サバイバルナイフ
[道具]: なし
[思考]:ここで休憩しつつ、トラップにかかった者に協力を仰ぐ
【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:上に同じ
【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部の傷は軽症に。左足腱は、杖を使えばなんとか歩けるまでに 回復。
右手はまだ使えません。
[装備]: 愚神礼賛(シームレスパイアス)
[道具]: 無し
[思考]: このおにーさんたちについていかなくちゃ
※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。