作:◆I0wh6UNvl6
草むらに隠したあともヒースロゥは思案にくれていた。
『人が人を裁くというのは傲慢じゃないか?』
その言葉は影のようについてくる、確かにそのとおりだろう、
どんなものであっても勝手に一人の一存で裁かれていいわけがない。
『俺は間違っているのか…いや、そんなことは初めからわかっている、
しかし、だからといってこのゲームに乗っている者たちを見逃せというのか?』
「答えは出たの?」
気配もなく声がした。
彼の気配を感じる技能は参加者の中でもトップクラスであるにも関わらず、だ。
驚きつつ振り返るとそこに一人の女がいた。
女というよりは少女というべきだろうか、
顔はまだあどけなさを残している。
彼女の服はあの黒帽子がマントの下に着ていたものと同じだった。
『何者だ?敵意は感じないが…』
「あなたの進む道は決まった?」
もう一度彼女は尋ねた、攻撃を仕掛けてくるつもりはやはりないようだ。
「さあ…、普段から物事をあまり考えないほうだからな。
あいつならこんな問題簡単に解決するんだが…。
あんたならどうするんだ?」
普段ならこんなことは聞かないが彼もいきずまっていたし、
彼女の雰囲気も手伝ってこんなことを聞いてしまう。
「わたしの答えはあなたには無意味よ、あなたはわたしと違いすぎるから。」
「違いすぎる?」
「そう、わたしとあなたは対極に位置する、
あなたは世界の王となる人物、わたしは世界の敵になった。」
その言葉には聞き覚えがあった、あの黒帽子にいわれた言葉だ。
「あの黒帽子になら俺も世界の敵と認識された。」
「彼こっちでは調子が悪いのよ、存在が制限されてるみたい。
確信を持っていえるわ、あなたは世界の敵にはなれない。」
このお墨付きがいいものかどうかはヒースロゥには分からなかった。
「あなたがいつも世界に対し正しい行動を取れる人…悲しいことだけど。」
「じゃあさっきまでの俺の行動は正しかったのか?」
「あなたはさっきまでの自分の行動をどう思う?」
ヒースロゥは沈黙する。
今考えれば安易すぎたかもしれない、どこか自分らしくなかった。
「さっきまであなたはあの少年、というよりあの屍の意思にとり憑かれていた。
他のものから与えられた意思を自分の意志と取り違えてしまうのはあなた達の悪いくせよ。」
その言葉をヒースロゥはよく吟味する。
そして疑問を口にした。
「なるほど…だがいかなる場合でも他のものの意思は介入してくるものではないのか?」
「人はいつも意思に流されている…だけどその中で自分の意志を確認することもできる。
あなたはそれをできる、普通と呼ばれる人達と違うから。
普通と呼ばれる人はただ流されるだけ、そういうのは一番危険なの…歯止めがきかないから。」
『俺はあの屍に流されていたのだな。』
それは彼にとって屈辱だった。
彼女は言葉を続ける。
「そう、そして歯止めのきかなくなった人を彼は…世界の敵と呼んでいる。」
「それがさっき俺にあいつが攻撃してきた理由か。」
「その通りよ、今のあなたには無縁の話だけど…。
本来のあなたはどちらかというて流れがどんなに強くても踏ん張ろうとする人、
だからこそあなたは世界の敵にはなれない。」
言葉を発するとき彼女は僅かだが表情を出した。
何か眩しいものを見るような目、だがヒースロゥはその表情に気づかなかった。
「さあ、これからあなたはどうするつもり?」
彼女は最後に尋ねた。
「とりあえずは友を探すとしよう、あいつは危険だからな、
ほっとくとどこで何をするのかわからん。」
微笑みながらヒースロゥは言った、
面倒をかける子供に対するような、それでいてやさしい表情だった。
「そのあとは?」
「自分のやりたいようにやるさ。
俺の行動はいつも正しいらしいからな。」
珍しくからかうような口調だった。
だが本当に彼はやりたいようにやるつもりだった。
もう二度と自分を見失わないようにしながら。
「あなたはやはり世界の王よ、あなた以外の誰もがそれを認めてるわ。」
『彼は世界の敵ではないけど、突破できるかもしれない…世界を。』
彼女は微笑んだ、純粋な《笑み》がそこにはあった。
「礼をいう…ところであんたは何者だ?」
「私はイマジネーター…彼に世界の敵と認識され、殺されたものよ。」
そのとき草原に強い風が吹いた。
ヒースロゥが目を開けた場所に彼女はもういなかった。
【D7とC7の間/草原/4:00】
残り95人
【風の騎士(ヒースロゥ・クリストフ)】
【状態】ふっきれた。
【装備】木刀
【道具】荷物一式
【思考】EDを探す、あとは風のゆくままに。
2005/05/07
全面改装、ヒースロゥの性格が。