作:◆I0wh6UNvl6
森の中を男が歩いている。
彼の体には血が付いているが顔には
とても今さっき人を殺したとは思えない笑みを貼り付けている。
『ちっ、さっきのガキとっとと殺っちまったかのはまずったなぁ、
もうちょっと楽しんでから殺すんだった。
にしても、どいつもこいつも馬鹿みたいに馴れ合いやがって・・・反吐がでるぜまったく。
やっぱカシムの野郎も奴らみたいになってんだろうな、
全く腑抜けたもんだ。』
言葉と共に益々笑みを深くする。
そしてついには目の前にまるで本人がいるかのように呟く。
「とっとと本性現しちまえよ、一緒にゲームを楽しもうぜカシムゥ。」
ふと向かい側の方に人影が見える。
相手が視認する前に茂みの深いところに入って息を潜める。
気配を消しもせずにまるで散歩をしているかのように歩き回っている。
『おめでたい獲物はどこにでもいるもんだな。
次はキチンと楽しまねえとよ!』
先ほど殺した相手から奪い取った銃を
ためらいなく撃つ、距離は10m、弾は相手の体を貫いた筈だった。
だが少年は気にすることもなく歩みを止める気もない
よく見ると相手に残り1m程のところで弾丸は止まっている
『ああん?どういうことだ?』
驚きと共に呟く。
危険な予感がガウルンに逃走という選択を薦める。
彼がその予感に従おうとしたとき、向こうから声がした。
「隠れてないでてきたらどうだ?」
敵の目はガウルンをしっかり捉えていた。
銃弾の飛んできた方向から位置を掴んだらしい。
「あらら、ばれてんのかよ…!」
姿を表すと同時に3発放つ、乾いた音と共に凶弾が敵を襲う!
だが先ほどと同じ攻撃が効くはずもない、
同時にガウルンは敵に接近しながら義手の充電を始める。
「ほう…おもしろそうなおもちゃだ。」
その男の姿はごく普通だった、
体にフイットした服には土一つついていない、
見ると彼の歩いてきた場所には道が出来ている、
ぽっかりと開いた空間はどう見ても人為的なもので
その道は少年の1m程前で止まっている。
まるでその位置を境界として2つの世界が存在しているようだった。
そして全ての銃弾はその境界を越えることができず、
全て消滅してしまった。
だがその様を見てなおガウルンは充電をやめない、
敵の常識で計り知れない能力を
ラムダドライバと同タイプのものと判断したのだ。
そしてそのタイプの能力ならその力を超える物理的な力をもってすれば
打ち破れる、そう判断した。
「ああ…俺にはもってこいのおもちゃだぜ!」
強烈な一撃を敵の顔面に向け放つ、
骨すら残るまいとガウルンは確信した。
…だが現実は違った。
彼の義手は敵まであと10cmのところまで迫った、
だがそこで拳は止まり、電撃が周りに迸る。
その電撃が作用して目の前にある不可視の壁をガウルンの目が捉えた。
そして次の瞬間、彼の義手が弾ける。
「ちっ!?」
思わず舌打ちをする、これでガウルンの勝機はなくなった。
「どうした、まさかそんなもので俺を殺せると本気で思っていたのか?」
冷ややかな目で見下ろす敵の雰囲気は普通の少年のそれとは明らかに異なっていた。
「普通思うぜ、まったくよ!」
義手のない手を押さえながら背を向け逃亡を試みる。
だが急に足から力が抜け、その場に崩れ落ちる、
そしてガウルンは見た、目の前に転がる自分の足を。
ガウルンの顔に恐怖はなかった、
ただ苦虫を噛み潰すような表情が広がっていただけだった。
「そんな程度で自惚れていたのか?お山の大将にもほどがある。」
「…猿と同じ扱いとはひどいんじゃないかい?」
ガウルンは強がりを見せた。
対し少年はフン、と鼻を鳴らす。
「まあこれ以上生かしておいても意味はなさそうだ、
貴様は始末することにした。」
少年から出た言葉は絶対的な死刑宣告だった。
「ん?どうした?祈る時間ぐらいはくれてやるぞ?」
ガウルンは観念した、敵は見逃すつもりはないようだ。
「ああ、そんじゃあ《哀れな聖者に殺戮の加護を》とでも言っておくかな、
クックック。」
ガウルンは笑い始めた、少年が右手を振りかぶる。
『どうやらここで終わりみたいだな、愛してるぜカシムゥ、続きは地獄で…』
彼の思考が途切れた。
「まあそこそこに楽しめたな…
さて、俺と対等なものは一体どこにいるんだ?」
歩いていく彼の後ろには左腕と右足、そして首のない死体が一つ、
赤い花のように咲いていた
(A-5/1日目/4:45)
【死者】ガウルン
【残り人数】96人
【フォルテッシモ】
【状態】やや不機嫌気味。
【道具】ラジオ
【装備】荷物一式(食料は回復する。)
【思考】 強者を倒しつつユージンを探す、一般人に手を加える気はない。
2005/05/09 全面的に校正、ガウルンにぽさを。