作:◆1UKGMaw/Nc
カイルロッドは、やばい奴を見つけたと思った。
しかも目が合ってしまった。
最初の灯台で、思わず少し仮眠を取ってしまったのがまずかったかと、カイルロッドは思う。
行動が遅れたためにこんなのと遭遇したのかと思うと、数時間前の自分を呪いたくなるが、
実際すぐに探索を開始していたとしても結末は同じだっただろう。
なにせ、その男はゲーム開始時からずっとここで素振りを続けていたのだから。
カイルロッドを見るその男――オフレッサーの口元が、ニィッと釣り上がる。
何時間も素振りをしていたその身体からは、汗が陽炎のように立ち昇っている。
月の光に照らされた夜の砂浜で、その姿は異様な迫力を醸し出していた。
反射的に回れ右。
傍らの犬も同時に回れ右。
「逃げるぞ!」
「そうしましょう」
全速力で来た道を駆け戻る。
背後から「待ぁてぇ〜い!」という声が聞こえるがもちろん無視。
「なんなんでしょう、あの男は」
「俺が知るか! っていうか、あの剣《語らぬもの》が俺にくれた剣じゃないか!?」
「元々あなたの持ち物なのですか? では何とかして取り返したいものですね」
「どうやって!?」
「……さぁ?」
とにかく逃げる。
武器もない現状ではそれしか手立てがなかった。
結局、最初の灯台までたどり着く。
そのまま駆け抜けようとするカイルロッドを陸が呼び止めた。
「待ってください、カイルロッド。ここは灯台の中に逃げ込みましょう」
「なんだって?」
カイルロッドは耳を疑う。
この灯台には出入り口は一つしかないはずだ。
先ほど陸と一緒に確認したのだから間違いない。
ここに入ったら、自分から袋小路に逃げ込むようなものだ。
「いいから、私に考えがあります」
「ふはは、追い詰めたぞ!! この俺の剣の錆となるがいい!!」
灯台に入るなりオフレッサーはそうのたまい、勢い良く螺旋階段を駆け上がっていった。
――その裏側で体育座りしていたカイルロッドと陸には気づかずに。
「うぬ、まだ上か! 逃げるばかりの臆病者が。正々堂々俺と戦……」
だんだん声が遠ざかっていく。
カイルロッドがぽつりと呟いた。
「……馬鹿でよかった」
時間的余裕はできたが、最上階まで行ったらさらにバーサークして戻ってくるはずだ。
灯台を出たカイルロッドと陸は、手短に今後の方針を話し合う。
「この灯台はもう使えないな、危険すぎる」
「ええ、移動することにしましょう。海沿いは他の者たちに発見される確率が高そうですから、内陸を進みましょうか」
今、その前例が灯台を駆け上がっている最中だ。
地図を広げたカイルロッドは陸の言葉に頷くと、
「そうだな。とりあえず、この湖に沿って南下しよう」
当面の行動を決定した。
【残り98人】
【卵王子とお供】
【A-7/灯台前/1日目・05:00】
【カイルロッド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパック(支給品一式) 陸(カイルロッドと行動します)
[思考]:陸と共にシズという男を捜す/イルダーナフ・アリュセ・リリアと合流する
[備考]:A-7 → B-7へと移動します。
【A-7/灯台内/1日目・05:00】
【オフレッサー】
[状態]:平常
[装備]:水晶の剣
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:皆殺し