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106:脱落者

作:◆gfFjaqvHU

(・・・ん?)
「どうかされました?」

ナース服姿の福沢祐巳が、不安そうな表情でこちらの顔を覗き込んでくる。

「いや、なんでもねぇぜ。お前はそこでまだ寝てな。
あたしはちょっと外を確認してくる。」

祐巳をベッドに寝かしつけると、哀川潤は保健室から廊下へと出た。
目の前に白い何かがふわふわと落ちてくる。

(雪か・・・?)

屋内に雪・・・そんなわけがないと思った瞬間、後から声がかかる。

「4月にだって雪は降ることはある。この世の中、確かなことなんて何もない。
でもそれでもそれは最初からある可能性の一つ。貴女なら解るわよね、哀川・・・潤」
「な、なんだテメェは!」

振り返ると、セーラー服の少女が廊下の先に浮かんでいる。
さっきまでは気配を感じなかった、いや目の前に見える今ですら気配は希薄だ。

「私は貴女と同じ。世界から可能性を剥奪されたもの。
ここにいるのも只の残滓にすぎない。・・・人の意識の狭間にゆれる幻のようなもの」

「テメェがあたしと同じだってぇ・・・?」
「ええ。貴女と私はよく似ているは、お互い世界の運命からは見放された存在。
せいぜい、人の目の前を右往左往しては注意を引くぐらいしかできない。
それは大海に石を投げ込み波を起こそうとするような、虚しい行為だわ・・・物語には届かない」

哀川潤はギリリと奥歯を噛み締めている。普段からきつい目つきがさらに剣呑なものへと変わる。

「でも、貴女にはまだわずかな可能性が残されているのね。他人を触媒に物語の中に自分を刻み付ける。
今は・・・あの子」

謎の少女は、ちらりと保健室を窺う。

「うう・・・」

哀川潤の額から汗が一滴床へと落ちる。

「貴女はいつか私の願いをかなえてくれるかもしれない・・・・・・」

「はっ!」
「どうかされました?」

ナース服姿の福沢祐巳が、不安そうな表情でこちらの顔を覗き込んでくる。

「・・・・・・いや、なんでもない。」
(ま、幻か・・・・・・!)

 【残り 98人】

 【チーム紅と赤】
 【D−2学校一日目、04:35】
 
 【福沢祐巳(060) 】
 [状態]:看護婦
 [装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服
 [道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)、
 [思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ 

 【哀川潤(084)】 
 [状態]:幻(?)を見てやや混乱中
 [装備]:不明
 [道具]:デイパック(支給品入り)、
 [思考]:小笠原祥子の捜索

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