作:◆h8QB1rxvpA
「だれがこんなの登れって言ったんだっけなぁ?なぁ!?」
「私です。それが何か不都合でも?」
「ああ不都合だ!それもかなりな!!」
あれから数十分……2人は延々と石段を登り続けていた。
だが異様に長いそれは、登り続けても終わりが見えない。疲れる。
実際その石段はC-5の南端から北の端まで一直線にある故に、恐ろしく長いのだ。
本人達はそれを知る由も無いが……。
「それでも1/3は登りました。弱音を吐かないように」
「吐きたくもなるっつーの!元々俺はこんなの登る気無かったんだ!」
オーフェンが喚き、座り込む。疲労を感じたらしい。
それを見て、女性もその数段上で座った。
「まぁ貴方の意志の弱さに脱帽した機会に、休みましょう。
そして貴方のその体力に合わせる為にも暫くはゆっくり登ります。いいですね?」
「もうどんな嫌味なコメントしても良いからそうしてくれ……」
大きな溜息をついてそう言ったオーフェンは、夜空に流れる黒い雲を眺めた。
人並み以上の体力はあるはずだったけどなぁ…と遠い目をする。
そうだ…こんな状況に放り出されたが故に、頭が体に着いていけていないのだ。
本人もわかっていた。指輪は取られるわ相手の押しが強いわ手下にされるわ…まぁ普通は気が滅入る。
というかここまで今考えたのだが、この女は本当に強いのか?なんか怪しくなってきた……。
ただ押しが強いだけの傲慢な人間なのかもしれないな………。
「おい、ちょっと試させてくれ」
「何をですか?」
「アンタが本当に強いのか、だ」
立ち上がり、女性の方を向いてオーフェンは言った。
女性は真顔で立ち上がり、そして言う。
「私は銃を使う戦法を得意とし、それで生きていきました。
ですから銃がないと私の100%は見せられません。非常に残念です」
「でも……それがあるだろ?」
「それ……ああ、これの事ですね」
オーフェンは女性の袋を指差して言った。
そう、それは相手の支給品であるパチンコだ。
指輪を預けた(強奪された)時に見えたのだ。
「今から俺がこの小石を真上に投げる。それをもう一つの小石で当ててくれ。勿論パチンコでだ」
「良いでしょう、簡単ですね。それで私がこれを完遂したら、どういうメリットが起こるのですか?
どうやら貴方は今、あの指輪以上の値打ちのある物は持っていないようですが」
「……俺が、アンタの実力を認めて、ついでにアンタを信頼する」
「…………タダ働きは嫌いですが、まぁいいでしょう。いつでもどうぞ」
返事を聞くと、オーフェンは早速真上に小石を投げた。
それを女性は真剣に狙う。パチンコを構える。
オーフェンはそんな姿の彼女を、特にその目を見た。
獲物を狙う鷹の様な……確実に他人に「強い」と言わせるその目だ。
と、急に何かを弾く音がした。石同士が当たった音だ、間違いない。
そしてそのまま小石が一つ、オーフェンの頭に当たった。
思わず声を上げてしまった。
「いって〜〜〜〜〜〜〜〜……」
「どうですか?」
「アンタ…わざと狙っただろ」
「誤解です」
女性はまた真顔で答えて、座った。
オーフェンも座った。そしてまた流れる雲を見つめた。
そしてそのままの体勢を保ったまま、言った。
「まぁ良い。アンタの力は認めるよ」
「そうですか。ではこれでやっと私の助言を聞くのですね」
「助言って、最初のアレはもうその域じゃねぇだろ…」
「夜空が奇麗ですね、オーフェン」
アンタの腹の色も、そんな感じなんだろ?と心の中で呟いた。
だがそれは心の中だけで置いておく。実際に口に出したら殺されそうだ。
反論が流されたついでにまた遠い目をし、呟く。
「………なんか良いトコないな、俺……」
因みに、なんだかんだ言って女性も少し疲れていた。
それを顔には出さずああいう事をオーフェンに言い放ったのだが……。
そういう所に気づいて反論する等の行動が出来ない限り、
この青年に弁論での勝ち目は無いだろう、確実に。
【C-5/長い石段/1日目・0:50】
『逆関白(キノの師匠 (若いころver)/オーフェン』
【キノの師匠 (若いころver)(020)】
[状態]:正常(多少の疲労?)
[装備]:パチンコ
[道具]:デイバッグ(至急品入り) ダイヤの指輪
[思考]:長い石段を登る
【オーフェン(111)】
[状態]:疲労
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品入り)
[思考]:女性(キノの師匠)についていく
【残り98人】